雑文

医療と経済学を巡る議論のアナロジカルな共通点

コロナ禍という未知の事態に放り込まれた医学界では、対策の方針や見解を巡って専門家と非専門家が入り混じる形で侃侃諤諤の議論がなされている。これはどこかで見た光景だな、と思ったら、既に過去のものと思われたデフレ不況が日本のみならず先進国世界で…

大いなる眠り

BOEの広報サイトKnowledgebankで、かつてBOE内に墓地があったことが紹介されている(H/T Mostly Economics)。 Why was there a graveyard inside the Bank of England? The Bank of England moved to its current site on Threadneedle Street in 1734. We …

AIIBと英ソ通商協定

アジアインフラ投資銀行(AIIB)にイギリス、ドイツが抜け駆け的に参加し、米国が歯噛みをしている状況を見て、大学時代に世界史で習った一場面を思い出した。以下は、「世界の歴史 14 第一次大戦後の世界」からの該当のエピソードの引用。 異なった体制の下…

バリー・リソリツが3万のブログポストから得た教訓

バリー・リソリツがThe Big Pictureを2003年に立ち上げて以来書いたブログエントリが3万に達したのを機に、そこから学んだことをWaPoにまとめている(H/T Economist's View)。以下はその概要。 書くことは自分がどう考えるかを知る良い方法 書き始めるまで…

アマチュア対プロ

The Big Pictureに音楽評論家のBob Lefsetzが表題のエントリを寄稿している(H/T 本石町日記さんツイート)。 アマチュア アイディアに溢れていて、それらのすべてに興奮を覚えるが、いずれも実現しない。 プロ アイディアに溢れていて、そのうちの一つを取…

合理的政治人としての岸信介

年末年始に何となく手元の岸信介に関する本を幾つか*1眺めていたら、この人は基本的に、一般に思われているような単なる権力志向の右翼政治家ではなく、所与の前提下で最適な政治解決策を求める、という、ある意味非常に学校秀才的な合理的行動を取る人だっ…

グリーン車と普通車の間の均衡問題として考えてみると

昨日二重の意味で炎上騒ぎがあった新幹線のグリーン車の問題を表題の経済学的問題として考えられないかと無い知恵を絞って素人なりに頭を捻ってみたのでメモ。 通常の状態 普通車に比べたグリーン車による効用と、そのための対価が均衡…通常の運行状況を前提…

現代版のビンに詰めた紙幣

今日はデフレに関して最近ふと思いついたことを適当に書いてみる。いつもの口上ではあるが、素人の思いつきなので、あくまでもそのつもりで読んでいただければ幸甚。 構造改革によるデフレ解消について デフレというのは貨幣という商品の魅力が高過ぎてそち…

フィフス・エレメント

貨幣の三大機能と言えば、Wikipediaにあるように、価値尺度(unit of account)、流通手段(medium of exchange)、価値貯蔵(store of value)の3つである。そのほか、繰延支払の標準(standard of deferred payment)を第四の機能としてカウントすることも…

中銀の独立性と財政規律とティンバーゲンの定理

今日は最近の日銀の独立性を巡る議論を巡ってふと思いついたことをメモ的に書き留めておく。素人の思いつきなので、あくまでもそのつもりで読んでいただければ幸甚。 日銀の独立性を崩すことには、以下の2つの功罪がある。 財政ファイナンスを利用してデフレ…

ケインズ理論と相対性理論

少し前のはてぶで呟いたように、非自発的失業について論じる人はケインズ経済学を裏付けとして用いているのを小生は当然視していたのだが、そのはてぶのリンク先ブログエントリに書かれているように、今の世の中ではそれは裏付けのうちに入らないらしい。そ…

デュエリスト

5/2エントリで紹介した話の後日談をジャスティン・フォックスが書いていた(クルーグマン経由)。 フォックスは4/27付けハーバードブログ記事で、技術革新の停滞を憂い、デジタル技術の発達だけでは不十分だと論じたのだが、そのコメント欄では、フォックス…

ブログと学者としての業績

に関する欧米ブロガーの考察については、本ブログでもこれまでここ、ここ、ここ、ここで取り上げてきたが、このクロニクル記事を機にそのテーマがまた少しブロゴスフィアで話題になっている。書いたのは英オープン大学教育工学教授のMartin Weller。 以下は…

かくも長き不在

13日エントリは思いがけないほど多くのはてぶを頂いた。そこではMRブログエントリでのSixoというコメンターのコメントのみ全文紹介したが、もう一人gwernというコメンターが日本についてコメントしている。13日エントリでは末尾で「Japanese companies seem …

各国プログラマーのステレオタイプ的分類

タイラー・コーエンが、なぜソフトウエアでは一物一価の法則が成り立たず、米国や日本企業は自国の高いソフトウエア技術者を使い続けるのか――香港やシンガポールや中国ではもっと安価で雇えるにも関わらず――という一読者の疑問をブログエントリ化した。それ…

論争において嘲笑は悪手

とModeled Behaviorでカール・スミスが書いている。 ...mocking your intellectual opponents is a bad idea because only raises the cost of them changing their mind. if you mock them, your opponent has to admit that he or she is a fool. Its much…

日本はリバタリアンの天国?

研究のため来日中のノアピニオン氏がそう書いている。 曰く、日本ではベンチやゴミ箱や公園や水飲み場といった公共施設が少なく、少し休もうと思ったら喫茶店に入って何がしかの出費を覚悟しなくてはならないし、車に乗ればただで停められる場所はなく、高速…

デフレ脱却と相転移のアナロジー・補足

昨日の貨幣数量方程式(MV=PY)に基づく経済システムの相転移のアナロジーについて、その後思いついたことを補足しておく。 ギブスの自由エネルギーと貨幣超過需要関数のアナロジーについて 昨日のエントリでも参考にしたキッテルでは、ギブスの自由エネルギ…

デフレ脱却と相転移のアナロジー

貨幣数量方程式(MV=PY)に関する日米の各論者の議論を読んでいて、ふと、この式を変形すれば貨幣の超過需要の関数になるのではないか、と考えた。具体的には、 G = PY - MV (1) としてGを定義した場合、右辺第一項は名目GDPであり、貨幣需要が発生する要因…

電力供給問題に関する一愚考

今夏に東日本が直面する電力の供給制約問題に関して、現在計画されているような需要サイドの単純な一律削減策ではなく、価格メカニズムを導入してはどうか、という提言が経済学者よりなされている(cf. ここ)。市場メカニズムの導入という点では確かにいか…

ドナルド・ダックたちの宴

経済政策を巡る論議は、自然科学と違い、実験で決着するわけにはいかないので、ある経済政策を推進する主張と、それに対する懐疑論との応酬が延々と続く、という光景をしばしば目にする。もちろん最近は実験経済学といった手法も出てきてはいるが、それで決…

なぜリバタリアン経済学者はブロガーとなるのか?

というテーマでブライアン・カプランがEconlogにブログ記事を書いていた。 I've heard the question many times: "Why do so many GMU economists blog?" The number and ratio are indeed extraordinary: I count 9 bloggers out of the 28 tenure-line fac…

抑止力とインフレ目標

一昨日のエントリに対し、okemosさんからはてぶで以下のようなコメントを頂いた。 「米国政府はさすがにクリストフ氏よりはまだまともなスタンスを取っている」 まともどうこうはともかく、米国が尖閣諸島の為に中国と武力衝突する事はないというクリストフ…

ゲーム理論とコースの定理とミュンヘン宥和

池田信夫氏が、今回の尖閣諸島での漁船衝突事件で船長を釈放した判断はゲーム理論に鑑みて「合理的」だった、とagoraに書いている。ただし、そこで池田氏が断っているように、それはゲームが1回かぎりの場合のチキン・ゲームの利得マトリックスを考えた場合…

反論ヒエラルキーとOSI参照モデル

mojix氏のZopeジャンキー日記の2008/4/13エントリで、ポール・グレアムが反論ヒエラルキーなるものを提唱していることを知った(9/19エントリ「属性攻撃は説得力を下げる」経由;原文はこちら、邦訳はこちら)。 それによると、ネット上での反論は、そのレベ…

Such a lonely word...

Free Exchangeで引用されていたが、The American Sceneという集団ブログでNoah Millmanという人が面白いことを書いている。 “Intellectually honest” means you make arguments you think are true, as opposed to making the arguments you are “supposed” …

不平等社会日本とイモリ

今日は軽めのネタを2つ。 1.不平等社会日本 不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)作者: 佐藤俊樹出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/06/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 54回この商品を含むブログ (107件) を見る ちきりん氏がこの本の…

魔笛を吹いているのは誰?

昨日に続き今日も小ネタ。 8/27の日経の大機小機コラムがツイッター界の一部で話題になった*1。 本日の大機小機ですか。 @isologue 「誰かの負債は誰かの資産」なのは確かだが、「だから無問題」なんてのはナンセンス。(国はさておき)その論理だと企業も倒…

既視感

I notice he has an undergraduate in maths, then went straight into a PhD in economics. My conjecture: I bet he never took Intro Economics, or anything vaguely similar. I bet he waded straight into the mathematical deep end. And so he never…

良い議論の原則

Econlogのブライアン・カプラン*1が表題のエントリを書いている(原題は「Principles of Good Debating」)。以下に抜粋で紹介してみる。 ...here are my candidate principles of good debating. They're not primarily about winning, but about deserving…