2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

戦略的な貨幣と信用の台帳

というNBER論文をブルナーメイヤーらが上げている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Strategic Money and Credit Ledgers」で、著者はMarkus K. Brunnermeier(プリンストン大)、Jonathan Payne(同)。 以下はその要旨。 This pap…

エネルギーショックの制御:財政金融政策

というNBER論文をMatthew Rognlieらが上げている(ungated版、説明スライド)。原題は「Managing an Energy Shock: Fiscal and Monetary Policy」で、著者はAdrien Auclert(スタンフォード大)、Hugo Monnery(ハーバード大)、Matthew Rognlie(ノースウエ…

そこそこのインフレを引き下げる最も簡単な方法

についてクルーグマンがブラックジョーク的な話を連ツイの中で紹介している。 I've been getting some pushback over my dismissal of "contactless" disinflation here, mainly involving tales of nations with very high inflation that brought it down …

サマーズがパウエルのジャクソンホール講演で聞きたかった5つのこと

ジャクソンホールが閉幕したが、金曜のパウエルの講演前にサマーズは以下のようなことをツイートしていた。 Five things I hope to hear from @FederalReserve Chair Powell on Friday at Jackson Hole. Read my @PostOpinions column here: First, I hope P…

ジェイソン・ファーマン「3%インフレ目標に切り替えよ」

ジェイソン・ファーマンが、表題のことを訴えたWSJ論説を解説する連ツイを立てている。 My @WSJopinion argues that the Fed should make a "hawkish pivot" to a higher inflation target. Specifically get inflation A summarizes. 1st: What is the rig…

名目硬直性の重要性と知的分断

「利上げ時のインフレと失業率には因果関係はあるのか? - himaginary’s diary」で紹介したブランシャールとライスの議論について、ブランシャールが以下のように自分の見解をまとめている。 1. Triggered by the exchange with @R2Rsquared @AngelUbide, @G…

コント:ポール君とラリー君――70年代と現在の比較は正しいかの巻

米国のインフレの沈静化を受け、自分の見通しが当たったとしてクルーグマンが活発にツイート活動を行ったのに対し(cf. ここ)、このテーマにおけるクルーグマンの「論敵」のサマーズは、高金利と経済の過熱にはまだ警戒が必要、と自分が出演する動画などに…

長期予想とマクロの変動

というNBER論文をアンドレイ・シュライファーらが上げている(ungated版)*1。原題は「Long Term Expectations and Aggregate Fluctuations」で、著者はPedro Bordalo(オックスフォード大)、Nicola Gennaioli(ボッコーニ大)、Rafael La Porta(ブラウン…

p値ハッキングと出版バイアスの解明

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Unpacking P-Hacking and Publication Bias」で、著者はAbel Brodeur(オタワ大)、Scott E. Carrell(テキサス大オースティン校)、David N. Figlio(ロチェスター大)、Lester R. Lusher(ピッツバー…

先進国の金融政策の枠組みに根本的な改革が必要な理由

かねてから金融緩和策に懐疑的な議論を繰り広げている*1ウィリアム・ホワイト(William White)が表題のINET論文(原題は「Why The Monetary Policy Framework in Advanced Countries Needs Fundamental Reform」)を書いている(H/T Mostly Ecoomics)。 以…

貨幣は必要不可欠か? ある実験的アプローチ

というカナダ銀行論文をMostly Ecoomicsが紹介している。原題は「Is Money Essential? An Experimental Approach」で、著者はJanet Hua Jiang(カナダ銀行)、Peter Norman(ノースカロライナ大)、Daniela Puzzello(インディアナ大)、Bruno Sultanum(リ…

通貨圏、労働市場、および景気循環への地域の反応度

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Currency Areas, Labor Markets, and Regional Cyclical Sensitivity」で、著者はKatheryn Russ(UCデービス)、Jay C. Shambaugh(ジョージ・ワシントン大)、Sanjay R. Singh(サンフランシスコ連銀)…

預金集めのための懸賞金付き預金の利用

というNBER論文が上がっている。原題は「Using Lotteries to Attract Deposits」で、著者はPaul Gertler(UCバークレー)、Sean Higgins(ノースウエスタン大)、Aisling Scott(Indeed.com)、Enrique Seira(ミシガン州立大)。 以下はその要旨。 Despite …

ブートストラップでは十分でない時:極度の貧困下で如何にして需給の相互作用が学習をもたらすか

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)原題は「When Your Bootstraps Are Not Enough: How Demand and Supply Interact to Generate Learning in Settings of Extreme Poverty」で、著者はAlex Eble(コロンビア大)…

利上げ時のインフレと失業率には因果関係はあるのか?

という点についてオリビエ・ブランシャールとリカルド・ライスが議論している。具体的には、利上げでインフレを下げる際に失業率が上昇するのは副作用に過ぎず、失業率上昇という経路を通じてインフレが低下するわけではない、とリカルド・ライスがデビッド…

気温と地域工業の集中

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Temperature and Local Industry Concentration」で、著者はJacopo Ponticelli(ノースウエスタン大)、Qiping Xu(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)、Stefan…

産業政策の新しい経済学

というNBER論文をダニ・ロドリックらが上げている(ungated版)。原題は「The New Economics of Industrial Policy」で、著者はRéka Juhász(ブリティッシュコロンビア大)、Nathan J. Lane(オックスフォード大)、Dani Rodrik(ハーバード大)。 以下はそ…

米金融政策と物価安定への復帰

というNBER論文(原題は「US Monetary Policy and the Return to Price Stability」)を元FRB副議長のリチャード・クラリダ(Richard H. Clarida、現コロンビア大)が上げている。 以下はその要旨。 This paper assesses the proximate causes of the post p…

インフレとクルーグマンのオッカムの剃刀の延長版

10日のCPI公表を受け、クルーグマンが改めて、インフレが失業率の大きな上昇なしに沈静化するという見立てが当たった勝利宣言とでも言うべき連ツイを立て、併せてそれが実現した原因と今後のリスクについて考察している。 Lots of number-crunching out ther…

在宅勤務、労働者の振り分けと展開

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版;cf. 論文を紹介したブルームバーグ記事)。原題は「Working from Home, Worker Sorting and Development」で、著者はDavid Atkin(MIT)、Antoinette Schoar(同)、Sumit Shinde(UCLA)。 以下はその要旨…

情報と企業のインフレ予想形成:イスラエルの企業調査からの実証結果

というNBER論文をYuriy Gorodnichenkoらが上げている(ungated版)。原題は「Information and the Formation of Inflation Expectations by Firms: Evidence from a Survey of Israeli Firms」で、著者はYuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Rafi Melnick…

米国のコロナによる累積死者数にワクチンと行動が及ぼした影響

というNBER論文が上がっている。原題は「The Impact of Vaccines and Behavior on U.S. Cumulative Deaths from COVID-19」で、著者はAndrew Atkeson(UCLA)。 以下はその冒頭。 What impact did the deployment of vaccines together with public and priv…

今回は違うのか? コロナ禍不況へのセーフティネットの対応

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Is This Time Different? The Safety Net Response to the Pandemic Recession」で、著者はErik A. Hembre(イリノイ大学シカゴ校)、Robert A. Moffitt(ジョンズ・ホプキンズ大学)、James P. Ziliak…

2018年から2021年に掛けての189か国における国民勘定統計の集計実務の推移

というIMF論文をMostly Ecoomicsが紹介している。原題は「Evolution of National Accounts Statistics Compilation Practices Over the Period 2018 to 2021 in 189 Economies」で、著者は同基金のAnthony Silungwe。 以下はその要旨。 This paper analyzes …

ブランシャールのタカ派とハト派論

前々回エントリでフィッチの格下げを評価したブランシャールが、自分の財政タカ派的な議論とハト派的な議論を連ツイで整理している。 1. In the world of social media, it is hard not to be pigeonholed as a dove or as a hawk (in this case on fiscal p…

日本における非伝統的金融政策と債務の持続可能性

というのが、前回エントリで紹介したブランシャールのツイートで、確率的債務持続可能性分析(stochastic debt sustainability analysis=SDSA)の好例として取り上げられていたSSRN論文のタイトルである(原題は「Unconventional monetary policy and debt …

フィッチ米国債格下げへの経済学者の反応

については既にブルームバーグやBBCで報道されているが、以下に関連ツイートをまとめておく。 ●サマーズ The United States faces serious long-run fiscal challenges. But the decision of a credit rating agency today, as the economy looks stronger t…

住宅、家計債務、および景気循環:中韓への適用

というNBER論文が上がっている(5月時点のWP)。原題は「Housing, Household Debt, and the Business Cycle: An Application to China and Korea」で、著者はAmir Sufi(シカゴ大)。 以下はその要旨。 China and South Korea both experienced substantial …

まだ知らないことを教えて:低インフレと高インフレ環境での学習

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがあるシカゴ大のページ)。原題は「Tell Me Something I Don’t Already Know: Learning in Low and High-Inflation Settings」で、著者はMichael Weber(シカゴ大)、Bernardo Candia(UCバークレー)、T…

ドルのライバル

というNBER論文(原題は「Dollar Rivals」)をハーバード大のジェフリー・フランケル(Jeffrey A. Frankel)が上げている(ungated版へのリンク)。 以下はその要旨。 Written on the 50th anniversary of floating exchange rates, this paper deals with p…