2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

バーナンキの政策を巡る経済学者の4つの見解

についてデロングがProject Syndicateでまとめている(H/T Economist's View)。 バーナンキ自身は、基本的には何も間違っていなかった、と考えているようだ。ただ、一時的な貯蓄過剰により、積極的な金融拡張策が完全な景気回復をもたらす時間を長引かせた…

量的緩和が設備投資を損なった

ケビン・ウォーシュ(Kevin Warsh)とマイケル・スペンス(Michael Spence)が書いた表題の主旨のWSJ論説記事が波紋を呼んでいる。 以下は各人の反応の抜粋。 ●クルーグマン In the eyes of critics, QE is the anti-Veg-O-Matic: it does everything bad, s…

財政再建のためのインフレ率引き上げ

前回エントリで一部を引用したクルーグマンのブログエントリでは、冒頭近くに以下のようなことが書かれている。 It’s a bit self-centered, but I find it useful to approach this subject by asking how I would change what I said in my 1998 paper on t…

アベノミクスと脱出速度

昨日エントリで紹介したデロングの考察において対象となったクルーグマンのブログ記事の一節を引用してみる。 Back in 1998, when I tried to think through the logic of the liquidity trap, I used a strategic simplification: I envisaged an economy i…

クルーグマンの世界からファーマーの世界へ

24日エントリで触れたクルーグマンのブログエントリについて、デロングが以下のように述べている。 In many ways, things are even worse than Paul says. Paul Krugman’s original argument assuming that the economy would eventually head towards a lon…

共和分と単位根に関する出版された結果のほとんどが虚偽である理由

共和分を批判した表題の論文を読んで、Dave Gilesが激おこぷんぷん丸になっている。論文の原題は「Why Most Published Results on Unit Root and Cointegration are False」で、著者はアルゴマ大のHari S. LuitelとGerry J. Mahar。 以下は論文の要旨。 The …

ウィンターズ・ボーンの貧困、ハンガー・ゲームの分断

グローバル化によるアジアへの職の移転や中国からの安価な財の輸入によって米国南部の貧困問題が深刻化しているが、米国のエリート層はそれに関心を払っていないか、あるいは気付いてさえいない、と報告したポール・セロー(Paul Theroux)のNYT論説記事*1を…

財政政策か、ヘリコプターマネーか、それともマネタイズか?

クルーグマンが「日本再考(Rethinking Japan)」というブログ記事を書いたが、その主旨をTony Yatesが以下のように簡潔にまとめている(Economist's View経由のロジャー・ファーマー経由)。 Here PK recommends, working through – pretty uncontroversial…

気候変動の不確実性をモデル化する:複数モデルの比較

というNBER論文をノードハウスらが書いている。原題は「Modeling Uncertainty in Climate Change: A Multi-Model Comparison」で、著者はKenneth Gillingham(イェール大、現在CEAシニアエコノミスト)、William D. Nordhaus(イェール大)、David Anthoff(…

いじめの経済学

「Bullying among Adolescents: The Role of Cognitive and Non-Cognitive Skills」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はMiguel Sarzosa(パデュー大)、Sergio Urzúa(メリーランド大)。 以下はその要旨。 Bullying is a behavioral phenome…

シェール革命と電力市場

今日は、14、15日エントリと同様、シェール革命ネタのNBER論文を紹介してみる。以下は、「Natural Gas Prices and Coal Displacement: Evidence from Electricity Markets」(ungated版)の要旨。著者はChristopher R. Knittel(MIT)、Konstantinos Metaxog…

ドラゴンへの道

13日エントリ、18日エントリで触れたタイラー・コーエンとルイジ・ジンガレスの対談から、また別の箇所を引用してみる。 COWEN: Here’s an article from Quartz. Let me read you the headline. Maybe you saw it from a few months ago. “The most common s…

今に残る自由都市の遺産

昨日エントリの脚注で触れたジンガレスの共著論文「Long-term Persistence」の要旨を紹介してみる。論文の著者はLuigi Guiso(エイナウディ経済金融研究所*1)、Paola Sapienza(ノースウエスタン大)、Luigi Zingales(シカゴ大)。 We study whether cultu…

イタリアの地域差は消滅しつつある――ただし悪い方向に

13日エントリで触れたタイラー・コーエンとの対談の中で、ルイジ・ジンガレスがそう語っている。 First of all, the distinction that Putnam makes and a lot of people make about the North and the South. I think, in some sense, it’s disappearing in…

歴史上最も金持ちの経済学者は?

デビッド・リカードであった、とNY連銀ブログでAmy Farberが書いている(H/T Economist's View)。ソースは5年前のこちらの記事との由。以下はそのことについてのFarberの考察。 When he died, his estate was worth more than $100 million, in today’s dol…

米国の平均寿命が短いのは太り過ぎのせい

という主旨のエントリをマンキューが上げている。 Critics of the U.S. health care system often say things like, "The United States spends more money than anyone else on health care but some other nations have better life expectancy." The next…

八州廻りのシェール革命の損得勘定

昨日紹介した論文と同様、シェール革命の経済効果について分析したNBER論文が上がっている(ungated版)。論文のタイトルは「Oil and Gas Revenue Allocation to Local Governments in Eight States」で、著者はデューク大学のDaniel RaimiとRichard G. Newe…

シェール革命の経済効果

シェール革命を自然実験として捉えたNBER論文が上がっている(ungated版)。論文のタイトルは「Geographic Dispersion of Economic Shocks: Evidence from the Fracking Revolution」で、著者はダートマス大のJames Feyrer、Erin T. Mansur、Bruce Sacerdote…

ミニミニ大作戦

1年前に「Diagnosing the Italian Disease」というWPをルイジ・ジンガレスがUCLAのBruno Pellegrinoと共著している(Mostly Economics経由の「Mercatus Center/Conversations with Tyler」経由)。 以下はその要旨。 We try to explain why twenty years ag…

ドイツ経済学の3つの神話

前回エントリで触れたMichael Burdaフンボルト大学ベルリン教授のVoxEU記事では、エコノミストやFT、クルーグマンやサイモン・レン−ルイス*1といった米英のメディアや経済学者によるドイツ経済学者へのバッシングへの反論を試みており、特に以下の3つの論点…

ドイツの経済学者が本当に考えていること

WirtschaftsWunderというサイトが、今年の4月28日から5月27日に掛けて、ドイツの経済学会(社会政策学会)と共同でドイツ人経済学者に対してアンケート調査を実施し、会員のおよそ1/3の1002人から回答を得たという。その集計結果によると、ヴォルフガング・…

バーナンキ「5年前に俺の政策貶したショイブレさん息してる?」

思い切り2ch風のタイトルにしてしまったが、バーナンキが「いかにFRBが経済を救ったか(How the Fed saved the economy)」という10/4付けWSJ論説記事で以下のように書いている(H/T Mostly Economics)。 It is instructive to compare recent U.S. economi…

金融政策の銀行利益率への影響

政策金利引き上げは銀行を潤す、という自身の最近の“発見”を裏付ける材料として、クルーグマンが、表題のBIS論文(原題は「The influence of monetary policy on bank profitability」で、著者はClaudio Borio、Leonardo Gambacorta、Boris Hofmann)を得意…

「非常に真面目な人々」の意味するところ

1日エントリで紹介したピーター・ゴルヴィッチ(Peter Gourevitch)が、クルーグマンの反応を受け、WaPo論説で改めて自分の意図を説明している。ゴルヴィッチは、FRBは正しい理論や正しいデータ解釈が制する学界のセミナーではなく、各集団の利害関係のせめ…

ブランシャールの闘い

引き続きブランシャールWaPo記事から、今日はIMFの官僚組織との闘いを描いた個所を引用してみる。 What Blanchard learned was that to prevail in a large, entrenched bureaucracy such as the IMF, being the best economist, presenting the best argume…

職人としてのブランシャール

引き続きブランシャールについてのWaPo記事から、彼の仕事観を取り上げた個所を引用してみる。 In a profession in which reputations are made by mastering subjects that have become increasingly narrow and technical, the variety of topics Blanchar…

ブランシャールの貢献

一昨日と昨日のエントリで紹介したSteven PearlsteinによるWaPo記事では、「IMFが完全に新規の一連の考えに門戸を開く上で、オリビエは重要な役割を果たした(“Olivier’s played an important role in opening up the Fund to a whole new set of ideas.”)…

ブランシャールの逆襲

昨日引用したWaPo記事では、アイルランドの債務問題についてIMFがECBに押し切られる様子が描写されていた。同じ記事で、ギリシャの債務問題ではIMFが反攻に転じた様子が描写されている。ただし当初は、アイルランドの時と同じく、IMFはECBに押され気味だった…

ブランシャールの遠すぎた橋

今月初めにIMFを退任したオリビエ・ブランシャールをWaPoが長文の記事で取り上げている(H/T マンキュー。なお、記事は「The smartest economist you’ve never heard of(あなたが名前を耳にしたことのない最も賢い経済学者)」と題されているが、マンキュー…

自国市場アドバンテージをもたらすものは?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「What Drives Home Market Advantage?」で、著者はA. Kerem Cosar(ストックホルム商科大学)、Paul L. E. Grieco(ペンシルベニア州立大学)、Shengyu Li(ダラム大学)、Felix Tintelnot(シカゴ大学…