科学

将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない?

ふと、かつて温暖化対策の行き過ぎを諌めたビョルン・ロンボルグはグレタ・トゥーンベリについて何か言っているのかな、とぐぐってみたところ、9月末にこのような論説を書いていることを知った。以下はその概要。 人間が気候変動の科学を理解して行動しない…

統計学は真実発見の奉仕者ではなく喧嘩の仲裁役

ハモンド・インタビューの昨日エントリで紹介した箇所でフリードマンは、ポパーから大きな影響を受けたことを認めている。しかしその後ポパーは、フリードマンの方法論を道具主義(instrumentalism)としてむしろ批判するようになり、人間的にも寛容さを失っ…

数学の中のマスメディア

引き続きフィールズ賞関連ネタ。5日エントリでリンクしたPeter Woitブログの最新記事では、授賞組織である国際数学者会議のマスコミ対応の拙さを指摘している。 While I was away the big mathematics news was from the ICM. As everyone expected, one of …

分からない数学者が馬鹿なのか、分からせない数学者が悪いのか

5日エントリで2人のフィールズ賞受賞者のコメントを紹介したブログエントリには、もう一人、今年のフィールズ賞受賞者であるAkshay Venkateshもコメントしていた(H/T math_jinさんツイート)。ただ、その内容は「完全同意。(I couldn’t agree more.)」と…

2人のフィールズ賞学者が望月論文に抱いた違和感

今月初めにフィールズ賞を受賞したピーター・ショルツ*1が、京都大学の望月新一教授によるabc予想の証明に問題点を見つけた、という話をこちらのツイート経由で知った。ただ、ショルツのその指摘を望月氏は認めておらず、今年3月に京都で直接顔を合わせた際…

人工知能、経済学、および産業組織

というNBER論文(原題は「Artificial Intelligence, Economics, and Industrial Organization」)をHal Varianが上げている。「The Economics of Artificial Intelligence: An Agenda」というNBERが出版予定の本の一章のようで、こちらで原文が読める。 以下…

ブレークスルー研究への資金提供:「APRA」モデルの展望と課題

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Funding Breakthrough Research: Promises and Challenges of the "ARPA Model"」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Erica Fuchs(カーネギーメロン大)、Anna Goldstein(カーネギー研究所)、Michael …

新発見の統計的有意性のp値の閾値は5%から0.5%に下げよ

と主張する論文が現下の統計学における最もホットなトピック/議論/展開である、としてFrancis Dieboldが紹介している。論文のタイトルはズバリ「統計的有意性の再定義(Redefine Statistical Significance)」で、Nature Human Behaviorに掲載予定との由。…

現代経済を作った50の発明

という下記の本をティム・ハーフォードが来週出すとのことで、スミソニアン誌のインタビューに答えている(H/T タイラー・コーエン)。Fifty Inventions That Shaped the Modern Economy作者: Tim Harford出版社/メーカー: Riverhead Books発売日: 2017/08/2…

機械知能の簡単な経済学

というDigitopolyブログエントリをJoshua GansがAjay AgrawalとAvi Goldfarbと共同で書いている(原題は「The Simple Economics of Machine Intelligence」;H/T Economist's View)。 The year 1995 was heralded as the beginning of the “New Economy.” D…

「すべてのモデルは間違い」の語源

David Glasnerが、ローマーのマクロ経済学批判をとば口に、以下の論陣を張っている。 こうした批判に対する現代マクロ経済学側からのお決まりの反論は、すべてのモデルは間違っている、というものである。その中でも自分たちのモデルはミクロ的基礎付けがな…

インフルエンザ・パンデミック・リスクの総コスト

というNBER論文をサマーズらが書き、サマーズHPで紹介されている(ungated版もアップされている)ほか、こちらのサイトでは皮肉交じりに紹介されている。原題は「The Inclusive Cost of Pandemic Influenza Risk」で、著者はVictoria Y. Fan(ハワイ大)、De…

NYTには数学の分かる編集者が必要

とDigitoplyのJoshua Gansが書いている(H/T Economist's View)。 Gansは「Originals: How Non-conformists Change the World」という新著を出すアダム・グラント・ペンシルベニア大ウォートン校教授*1の「How to Raise a Creative Child」というNYT記事を…

喫煙から肥満への影響

について調べたNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Smoking on Obesity: Evidence from a Randomized Trial」で、著者はジョージア州立大のCharles Courtemanche、Rusty Tchernis、Benjamin Ukert。 以下はその要旨。 This paper aims to identi…

愛と哀しみの果て

「Out of Africa: Human Capital Consequences of In Utero Conditions」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はVictor Lavy(ウォーリック大)、Analia Schlosser(テルアビブ大)、Adi Shany(ヘブライ大)。 以下はその要旨。 This paper inv…

科学は葬式ごとに進歩するのか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Does Science Advance One Funeral at a Time?」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Christian Fons-Rosen(ポンペウ・ファブラ大学)、Joshua S. Graff Zivin(UCサンディエゴ)。 We study the extent …

気候変動の不確実性をモデル化する:複数モデルの比較

というNBER論文をノードハウスらが書いている。原題は「Modeling Uncertainty in Climate Change: A Multi-Model Comparison」で、著者はKenneth Gillingham(イェール大、現在CEAシニアエコノミスト)、William D. Nordhaus(イェール大)、David Anthoff(…

非合理的なのではなく、量子確率的なだけ

前回エントリでリンクした表題のオハイオ州立大学のニュース記事(原題は「You’re not irrational, you’re just quantum probabilistic」)から、同大のコミュニケーション学部准教授でコミュニケーション・心理学研究所(Communication and Psychophysiolog…

量子認識:心理学における新たな理論手法

Economist's ViewのMark Thomaが、どう評価して良いか分からん、としてこちらのEurekAlertのリリースを紹介している。以下はそのリリースの元記事(オハイオ州立大学のニュース記事)でリンクされている表題の論文の要旨。(論文の原題は「Quantum cognition…

p値叩きの反動

についてノアピニオン氏が書いている。p値叩きは一部の心理学の学術誌が有意性検定を禁止するところまで行ったが、こうした動きは行き過ぎであり、これまで長年使われてきた検定がそれほど間違っているはずはない、とノアピニオン氏は言う。以下は氏がそう考…

非科学的な思考様式と機能しない科学的な思考様式

アンドリュー・ゲルマンが、アラン・ソーカルのScientia Salon記事を引用している。 以下は記事の一節。 The bottom line is that science is not merely a bag of clever tricks that turn out to be useful in investigating some arcane questions about …

誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算・おまけ

昨日紹介したブランコ・ミラノヴィッチのエントリに以下のようなコメントを書いた: 良記事です。しかし、ポアンカレ予想を解いたことも偉大な科学的業績の一つとして数えられるのではないかと思います。あと、アレクサンドル・ニコラエヴィチ・ソクーロフと…

ドイツからのユダヤ人亡命者は米国の技術革新を促進したのか?

というテーマについてPetra Moser(スタンフォード大)、Alessandra Voena(シカゴ大)、Fabian Waldinger(ウォーリック大)がNBER論文「German-Jewish Emigres and U.S. Invention」を書き、Moserがケイトー研究所にその紹介記事を書いている(H/T Mostly …

経済学は科学か宗教か?

と物理学者でありコラムニストであるマーク・ブキャナンがブルームバーグコラムで問い掛けている(H/T Economist's View、Mostly Economics)。 以下はその冒頭部。 Is economics a science or a religion? Its practitioners like to think of it as akin t…

なぜ企業は科学的研究を公開するのか?

について調べた論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「What makes companies pursue an open science strategy?」で、著者はスイス連邦工科大学ローザンヌ校のMarkus Simethと世界知的所有権機関のJulio Raffo。以下はその要旨。 Whereas r…

市場は気象学者より優れているか?

という点について研究した論文をEconomic Logicが紹介している。原題は「Can the market forecast the weather better than meteorologists?」で、著者はフンボルト大学ベルリンのMatthias Ritter。 以下はその要旨。 Many companies depend on weather cond…

何がベル研を特別たらしめたのか?

以前ここで紹介したベル研を題材にしたジョン・ガートナー(Jon Gertner)による以下の本を、同研究所に一時期在籍していたというアンドリュー・ゲルマンが書評している(ゲルマンブログ経由)。The Idea Factory: Bell Labs and the Great Age of American …

インターネットが技術革新を阻害している

SF作家のニール・スティーヴンスンがMITでの講演でそう述べたという。ジャスティン・フォックスの報告によると: A hundred years from now, he said, we might look back on the late 20th and early 21st century and say, "It was an actively creative s…

福島第一による原発事故発生確率のベイズ更新

について世上どのような考察がなされているか知りたいとふと思い、ぐぐってみたところ、このパワーポイントに行き当たった*1。書いたのはFrancois LevequeとLina Escobar。著者のうちLevequeはCERNA(Centre d'Economie Industrielle MINES ParisTech=パリ…

ベル研を復活させよ

今やイノベーションの手本と言えばシリコンバレー、というのが通説になった感がある。しかし、敢えてその風潮に異を唱え、かつての独占企業による研究所こそがイノベーションの母体になるのではないか、とThe Deal誌編集長のRobert Teitelmanが書いている(…