科学

人工知能導入の最適速度に危害に関する学習はどのように影響するか?

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「How Learning About Harms Impacts the Optimal Rate of Artificial Intelligence Adoption」で、著者はJoshua S. Gans(トロント大)。 以下はその要旨。 This paper examines recent proposals …

人工知能の規制

というNBER論文が上がっている(H/T Mostly Economics;ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Regulating Artificial Intelligence」で、著者はJoao Guerreiro(UCLA)、Sergio Rebelo(ノースウエスタン大)、Pedro Teles(ポルトガル銀…

信頼性革命はどの程度信頼できるのだろうか?

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「How Credible is the Credibility Revolution?」で、著者はKevin Lang(ボストン大)。 以下は本文からの引用。 Suppose you test a null hypothesis, and the t turns out to be 1.96. As…

月ロケットの打ち上げ:公共の研究開発と成長

前回エントリの注で転換的技術の成長が加速された例として米ソの宇宙開発競争を挙げたが、まさにその点を扱った表題のNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Moonshot: Public R&D and Growth」で、著者はShawn K…

受賞に安住? ノーベル生理学・医学賞受賞者の研究の生産性

というNBER論文が上がっている。原題は「Resting on Their Laureates? Research Productivity Among Winners of the Nobel Prize in Physiology or Medicine」で、著者はJay Bhattacharya(スタンフォード大)、Paul Bollyky(同)、Jeremy D. Goldhaber-Fie…

経済学的観点からのAI規制を妨げているもの

日本人は生成AIに知性を幻視しがちだが、欧米人は道具として割り切っている、という主旨のはてな匿名ダイアリーが話題になったが、そもそもそうした幻想はAI業界の黎明期に端を発しており、その幻想が経済学的視点からのAIの規制を妨げている、という趣旨の…

ボルテージ効果の簡単な合理的期待モデル

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「A Simple Rational Expectations Model of the Voltage Effect」で、著者はOmar Al-Ubaydli(ジョージメイソン大)、Chien-Yu Lai(シカゴ大)、John A. List(同)。 以下はその要旨。 The “voltage ef…

経済学者と疫学者の暗闘

こちらで関連ツイートをブクマしたように、疫学者と経済学者のコロナ対策に関する考え方の違いが大きくなっているようである。簡単に言うと、経済学者が政策介入の無い経済活動を重視し、オミクロン株のインフルエンザ並みの軽症化に鑑みてコロナへの特措法…

機械学習のモデル化

というNBER論文が上がっている。原題は「Modeling Machine Learning」で、著者はAndrew Caplin(NYU)、Daniel J. Martin(ノースウエスタン大)、Philip Marx(ルイジアナ州立大)。 以下はその要旨。 What do machines learn, and why? To answer these qu…

スマート技術の規模拡大の人為的危難:フィールド実験の実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Human Perils of Scaling Smart Technologies: Evidence from Field Experiments」で、著者はAlec Brandon(ジョンズ・ホプキンス大)、Christopher M. Clapp(シカゴ大)、John A. List(同)、Rob…

場所による科学の生産性とコスト

というNBER論文をサイモン・ジョンソンらが上げている(ungated版)。原題は「Place-Based Productivity and Costs in Science」で、著者はJonathan Gruber(MIT)、Simon Johnson(同)、Enrico Moretti(UCバークレー)。 要旨では、科学者の集積が1割増加…

ビッグデータを使って気候変動対策に情報を提供するソロモン・シャンのプロフィール

と題したエントリ(原題は「Profile*1 of Solomon Hsiang, who uses big data to inform climate change policies..」)でMostly Economicsが、IMFの季刊誌Finance & Development9月号の人物紹介記事の冒頭を引用している。この季刊誌の記事は本ブログでも何…

第二次世界大戦からコロナ禍までの危機のイノベーション政策

というNBER論文が上がっている。原題は「Crisis Innovation Policy from World War II to COVID-19」で、著者はDaniel P. Gross(デューク大)、Bhaven N. Sampat(コロンビア大)。 以下はその要旨。 Innovation policy can be a crucial component of gove…

望月氏のABC理論の証明の何が問題になっているのか?

既にニュースで報じられているように、京都大学の望月新一教授によるabc予想の証明が査読を経てPRIMS特別号電子版に3月4日付で掲載されたが、本ブログの過去のエントリ(ここ、ここ、ここ)で紹介した海外の学者と望月氏との溝はむしろ深まったようである。…

危機のイノベーションの編成:第二次大戦の教訓

というNBER論文が上がっている。原題は「Organizing Crisis Innovation: Lessons from World War II」で、著者はDaniel Gross(デューク大)、Bhaven Sampat(コロンビア大)。 以下はその要旨。 World War II was one of the most acute emergencies in U.S…

科学の掲載論文における中国のディアスポラ研究者の貢献と世界の科学における中国の「大躍進」

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンク)。原題は「The Contribution of Chinese Diaspora Researchers to Scientific Publications and China's "Great Leap Forward" in Global Science」で、著者はQingnan Xie(南京理工大)、Richard B. Fr…

IHMEモデルの何が問題か?

17日エントリの脚注で触れたようにコーエンはIHME(ワシントン大学保健指標評価研究所)モデルへの批判を展開してきたが、「えへん(ahem)」と題したこちらのエントリでは、ほら見たことか、と言わんばかりにこの問題を取り上げたStatNews記事にリンクし、…

感染症学者についてのある視点

前回エントリで紹介したコーエンの感染症モデルに対する指摘は実は彼のブログエントリの前半部分で、後半部分では彼の感染症学者に対する率直な疑問が書き連ねられている。それへの応答がメールであったとのことで、メールの文章をコーエンがMRの別エントリ…

経済学者から見た感染症モデルの問題

タイラー・コーエンがMRブログで経済学者から見た感染症モデルの問題点を挙げている。以下はその概要。 調整の長期的な弾力性が短期的な弾力性より強力であることを十分に理解していない 短期的には人々は社会的隔離を行うが、長期的にはどの社会的隔離の方…

望月氏の「証明」はガラパゴス現象なのか?

1年半ほど前にABC予想に関するピーター・ショルツの見解を紹介したことがあったが、そこでリンクしたPeter Woitのブログで今回の「証明」を機に改めてABC予想に関するエントリが立ち、そちらのコメント欄にショルツが降臨している(H/T math_jinさんツイート…

将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない?

ふと、かつて温暖化対策の行き過ぎを諌めたビョルン・ロンボルグはグレタ・トゥーンベリについて何か言っているのかな、とぐぐってみたところ、9月末にこのような論説を書いていることを知った。以下はその概要。 人間が気候変動の科学を理解して行動しない…

統計学は真実発見の奉仕者ではなく喧嘩の仲裁役

ハモンド・インタビューの昨日エントリで紹介した箇所でフリードマンは、ポパーから大きな影響を受けたことを認めている。しかしその後ポパーは、フリードマンの方法論を道具主義(instrumentalism)としてむしろ批判するようになり、人間的にも寛容さを失っ…

数学の中のマスメディア

引き続きフィールズ賞関連ネタ。5日エントリでリンクしたPeter Woitブログの最新記事では、授賞組織である国際数学者会議のマスコミ対応の拙さを指摘している。 While I was away the big mathematics news was from the ICM. As everyone expected, one of …

分からない数学者が馬鹿なのか、分からせない数学者が悪いのか

5日エントリで2人のフィールズ賞受賞者のコメントを紹介したブログエントリには、もう一人、今年のフィールズ賞受賞者であるAkshay Venkateshもコメントしていた(H/T math_jinさんツイート)。ただ、その内容は「完全同意。(I couldn’t agree more.)」と…

2人のフィールズ賞学者が望月論文に抱いた違和感

今月初めにフィールズ賞を受賞したピーター・ショルツ*1が、京都大学の望月新一教授によるabc予想の証明に問題点を見つけた、という話をこちらのツイート経由で知った。ただ、ショルツのその指摘を望月氏は認めておらず、今年3月に京都で直接顔を合わせた際…

人工知能、経済学、および産業組織

というNBER論文(原題は「Artificial Intelligence, Economics, and Industrial Organization」)をHal Varianが上げている。「The Economics of Artificial Intelligence: An Agenda」というNBERが出版予定の本の一章のようで、こちらで原文が読める。 以下…

ブレークスルー研究への資金提供:「APRA」モデルの展望と課題

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Funding Breakthrough Research: Promises and Challenges of the "ARPA Model"」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Erica Fuchs(カーネギーメロン大)、Anna Goldstein(カーネギー研究所)、Michael …

新発見の統計的有意性のp値の閾値は5%から0.5%に下げよ

と主張する論文が現下の統計学における最もホットなトピック/議論/展開である、としてFrancis Dieboldが紹介している。論文のタイトルはズバリ「統計的有意性の再定義(Redefine Statistical Significance)」で、Nature Human Behaviorに掲載予定との由。…

現代経済を作った50の発明

という下記の本をティム・ハーフォードが来週出すとのことで、スミソニアン誌のインタビューに答えている(H/T タイラー・コーエン)。Fifty Inventions That Shaped the Modern Economy作者: Tim Harford出版社/メーカー: Riverhead Books発売日: 2017/08/2…

機械知能の簡単な経済学

というDigitopolyブログエントリをJoshua GansがAjay AgrawalとAvi Goldfarbと共同で書いている(原題は「The Simple Economics of Machine Intelligence」;H/T Economist's View)。 The year 1995 was heralded as the beginning of the “New Economy.” D…