2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

五大誌の呪い

というジェームズ・ヘックマン主催のセッションが今年初めのASSA大会で開かれたことをロジャー・ファーマーが紹介している。パネルディスカッションにはヘックマンのほか、ジョージ・アカロフ、アンガス・ディートン、ドリュー・フューデンバーグ、ラース・…

サマーズはトランプ政権の税制改革案に全般的には反対だよ

ここで紹介したサマーズの論説を基に本石町日記さんが、以下のようにツイートされた。 https://twitter.com/hongokucho/status/924532749653782528:twitter 即ち、サマーズはトランプ政権の税制改革案に全般的には賛成、とのことだが、これはもちろんサマー…

マクロ経済思想の進化におけるフリードマンの会長講演

マンキューがリカルド・ライスとともに、50年前のミルトン・フリードマンのAEA会長講演がマクロ経済学思想史において占める意義について論じた表題の小論を書いている(H/T マンキューブログ、原題は「Friedman’s Presidential Address in the Evolution of …

税制改革の10の嘘

トランプ減税の売り込みに当たって吐かれた10の嘘をクルーグマンが挙げている。 米国は世界で最も税金の高い国である トランプは自らの力を誇示するためか何回もこの嘘を繰り返すが(直近はここ)、実際にはGDPに対する税金の比率はOECD平均が34.3%に対し米…

税制改革の5つのポイント

トランプ減税案のハセットCEA委員長による売り込みに手厳しい批判を繰り広げたサマーズが、ではどのような税制改革なら支持するのか、と訊かれ、1986年の税制改革をモデルケースとして挙げている。サマーズによれば、その改革によって経済成長が促進され、経…

動学的ファーマン比率・デロング版

昨日計算した動学的ファーマン比率の生産関数にコブ=ダグラス関数f(k)=kαを当てはめると、ファーマンやコクランが計算したのをマンキューが紹介しているように、その式は dw/dx = (1-α) / (1- α - t) となる。これに一般的な値としてα=t=1/3を当てはめる…

動学的ファーマン比率

22日エントリの追記で紹介したマンキューの「計算間違い」についてのデロングの指摘を巡り、経済学者の間で意見が割れている。クルーグマンはツイッターやブログでデロングを支持し、マンキューの間違いをラインハート=ロゴフのExcelの間違いになぞらえた。…

ダウ36000ドルと賃金増9000ドルの間

昨日紹介した自ブログ記事でサマーズはマンキューの法人減税モデルを批判していたが、元々サマーズが批判していたのはケビン・ハセットCEA委員長の議論であった。その議論とは、法人税率を35%から20%に引き下げれば平均的米国人家族の賃金が4000〜9000ドル上…

法人減税とサマーズとマンキュー

昨日紹介したマンキューのブログエントリに、サマーズも反応している。 As a device for motivating students to learn how to manipulate oversimplified academic models, Mankiw’s blog is terrific as one would expect from an outstanding economist a…

コント:ポール君とグレッグ君(2017年第2弾)

1月の国境税調整を巡る話では大筋で意見が一致していたクルーグマンとマンキューが、トランプ減税を巡って相反する見解を示した。 グレッグ君 世界金利が外生的な開放経済で資本税を減税すると、減税分と賃金増加分の比率は幾らになるか、という現下の話題と…

シャドウバンキングと伝統的な金融仲介機能の4つの柱

というNBER論文をジャン・ティロールらが書いている(原題は「Shadow Banking and the Four Pillars of Traditional Financial Intermediation」)。著者はEmmanuel Farhi(ハーバード大)、Jean Tirole(トゥールーズ・スクール・オブ・エコノミクス)。 以…

コンピュータ化と移民

自動化に関するNBER論文をもう一丁。以下はGaetano Basso(イタリア銀行)、Giovanni Peri(UCデービス)、Ahmed Rahman(米海軍兵学校)の「Computerization and Immigration: Theory and Evidence from the United States」の要旨(ungated版*1)。 The ch…

AIと経済成長

「Artificial Intelligence and Economic Growth」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はPhilippe Aghion(コレージュ・ド・フランス)、Benjamin F. Jones(ノースウエスタン大)、Charles I. Jones(スタンフォード大)。 以下はその要旨。 T…

経済政策と謙虚さの必要性

ECBのイブ・メルシュ(Yves Mersch)理事が表題の講演を9日にボッコーニ大で行っている(原題は「Economic Policy and the Need for Humility」、H/T Mostly Economics)。 以下はその結論部。 If it did nothing else, the financial crisis served to remi…

なぜ違う時があるのか:マクロ経済政策と金融危機の後遺症

ローマー夫妻が2年半前に紹介した論文*1の続編と思しき表題のNBER論文を上げている(原題は「Why Some Times Are Different: Macroeconomic Policy and the Aftermath of Financial Crises」、ungated版)。 以下はその要旨。 Analysis based on a new measu…

中銀がコミュニケーションを密にすると市場を惑わす?

「Does Central Bank Transparency and Communication Affect Financial and Macroeconomic Forecasts?」というスイス国立銀行のワーキングペーパーが出ている(H/T Mostly Economics)。著者はThomas LustenbergerとEnzo Rossi。 以下は結論部からの引用。 …

インフレ目標と物価水準目標のハイブリッドは新たな標準となり得るか?

昨日紹介したバーナンキ論文「Monetary Policy in a New Era」に関するパネル討論にFRBのブレイナード理事も参加し、事前に用意したコメントで「バーナンキ論文は、この新たな環境の中で金融政策を行うFRBの努力に関して優れた概観を提供し、興味深い新提案…

バーナンキ「僕が引き起こしたテーパー・タントラムは量的緩和のシグナリング効果の証左」

前回エントリで紹介したシンポジウムに、バーナンキも論文を出している。以下はその中で量的緩和について論じた節の冒頭。 Probably the most controversial form of unconventional policy adopted in recent years was what the Federal Reserve called la…

安定化政策再考

ピーターソン国際経済研究所で「マクロ経済政策再考(Rethinking Macroeconomic Policy)」というシンポジウムが開かれた(H/T Economist's View)。主催者のブランシャールとサマーズが「Rethinking Stabilization Policy. Back to the Future」というオー…

ボラティリティの記憶

「The Memory of Volatility」という論文をFrancis Dieboldが紹介している。著者はライプニッツ大学ハノーファーのKai Wenger、Christian Leschinski、Philipp Sibbertsen。 以下はその要旨。 The focus of the volatility literature on forecasting and th…

合理性とウサギの巣穴

クルーグマンがリチャード・セイラーのノーベル賞受賞に事寄せて経済学における合理性について考察している。 ...here you have a division between two camps. One says that imperfect rationality changes everything; the other that the assumption of …

マクロ経済学における特定

マンキューが、お気に入りの研究者であり、かつての門下生でもある、として、Emi NakamuraとJon Steinssonの表題の論文(原題は「Identification in Macroeconomics」)にリンクしている*1。 以下はその要旨。 This paper discusses empirical approaches ma…

右派のトンデモ経済学が勢力を得る理由

7日エントリで紹介した税負担の問題について、ケビン・ハセットCEA委員長がTax Policy Centerで講演したのに対し、クルーグマンがトンデモ経済学だと批判している。その上で、危機後にそうしたトンデモ経済学が生み出された過程を以下のように説明している。…

中銀の独立性はそれでも必要?

イングランド銀行の独立性獲得20周年記念コンファレンスにサマーズがコメントを寄せ*1、祝辞を述べつつも、中銀が独立的であるべき理由は以前より弱まっている、と指摘した。それに対しTony Yatesが逐一反論している。以下はその概要(主項がサマーズの見解…

資本の移転と税負担

クルーグマンが、ムニューシン財務長官の最近のドタバタ*1をとば口に、法人税の負担について考察している。 ...this whole literature goes back to Harberger, who envisaged a closed economy with a fixed stock of capital. He showed that in such an e…

パレート効率的な税と支出:分配前と再分配

スティグリッツのNBER論文をもう一丁。以下はスティグリッツの表題の単著論文(ungated版、原題は「Pareto Efficient Taxation and Expenditures: Pre- and Re-distribution」)の要旨*1。 This paper shows that there is a presumption that Pareto effici…

経済発展のための実質為替相場政策

というNBER論文をスティグリッツらが書いている(ungated版)。原題は「Real Exchange Rate Policies for Economic Development」で、著者はMartin Guzman、Jose Antonio Ocampo、Joseph E. Stiglitz(いずれもコロンビア大)。 以下はその要旨。 This paper…

汚染は企業価値を最大化するのか? デュポンの場合

というNBER論文をジンガレスらが上げている(ungated版、関連ProMarket記事)。原題は「Is Pollution Value-Maximizing? The DuPont Case」で、著者はRoy Shapira(IDCヘルズリヤ)、Luigi Zingales(シカゴ大)。 以下はその要旨。 DuPont, one of the most…

東アジアの金融および経済の発展

「East Asian Financial and Economic Development」というNBER論文が上がっている。著者はRandall Morck(アルバータ大)、Bernard Yeung(シンガポール国立大)。 以下はその要旨。 Japan, an isolated, backward country in the 1860s, industrialized ra…

生産性の伸びの鈍化と労働分配率の低下:新古典派的探究

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Productivity Slowdown and the Declining Labor Share: A Neoclassical Exploration」で、著者はGene M. Grossman(プリンストン大)、Elhanan Helpman(ハーバード大)、Ezra Oberfield(プリンス…