というNBER論文をローマー夫妻が上げている。原題は「Lessons from History for Successful Disinflation」で、著者はChristina D. Romer、David H. Romer(いずれもUCバークレー)。
以下はその要旨。
Why do some attempts at disinflation lead to substantial reductions in inflation while others do not? We investigate this question in the context of the Federal Reserve’s attempts at disinflation since World War II. Our central finding is that a fundamental determinant of success in reducing inflation was the strength of the Federal Reserve’s commitment to disinflation at the start of its attempts. In episodes where its commitment was high, there were significant declines in inflation that were often long-lasting, while in ones where its commitment was low, falls in inflation were at most small and short-lived. We find that although the extent of the Federal Reserve’s commitment was often clear to the public, there is no evidence that stronger commitment to disinflation directly affected expected inflation. Rather, the main channel through which weak commitment led to unsuccessful disinflation was premature abandonment of the disinflationary policy. We conclude by discussing the implications for the Federal Reserve’s current effort at disinflation.
(拙訳)
インフレ抑制の試みにおいて、インフレの顕著な低下に成功するものと、そうでないものがあるのはなぜか? 我々は、第二次世界大戦以降のFRBのインフレ抑制の試みについて、この問題を調べた。我々の主要な発見は、インフレ低下を成功させる基本的要因は、取り組み当初のFRBのインフレ抑制のコミットメント、ということである。コミットメントが強い事例では、インフレが有意に低下し、それが長続きすることが多かった。一方、コミットメントが弱いと、インフレ低下はせいぜい小幅で、短命であった。FRBのコミットメントの程度は一般の人々にとって明らかな場合が多かったが、強いコミットメントが予想インフレに直接に影響した証拠は無かった。一方、弱いコミットメントがインフレ抑制の失敗につながる主要な経路は、インフレ抑制政策の早過ぎる放棄であった。最後に我々は、現在のFRBのインフレ抑制の努力にとっての意味合いを論じる。
エドワード・コナードのまとめによると、9つの試みにおいて、開始当初に強いコミットメントを掲げて生産の低下を甘受する覚悟で実施した引き締めでは、5年で3%ポイントの低下を達成した半面、非常に弱いコミットメントでは、5年で1/2%ポイントに留まったという。コミットメントの分類は、政策担当者が、幾つかの問題について政策議事録ならびに講演や証言で述べたことを基に行ったとの由。その問題には、どの程度の生産の損失を受け入れるか、も含めたという。
コミットメントが強かったインフレ抑制は1958、1979、1981年の事例で、コミットメントが弱かったのは1968、1974、1978年の事例とのことである。1981年の場合は、1980年春にインフレ抑制策を緩めたのは過ちだったと考え、大幅な生産の損失を覚悟することで最終的な成功に導いたという。1978年の場合は、生産成長の小幅な鈍化しか受け入れず、金融政策だけではインフレを低下できない、と考えていたという。
以下は同まとめからのグラフの孫引き。