2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ケルトンが見落としているもの

クリス・ディローがステファニー・ケルトンの「The Deficit Myth」の書評をブログに書いている。The Deficit Myth: Modern Monetary Theory and the Birth of the People's Economy (English Edition)作者:Kelton, Stephanie発売日: 2020/06/09メディア: Kin…

パンデミック下の株式市場を理解する

ロバート・シラーが表題のProject Syndicate論説(原題は「Understanding the Pandemic Stock Market」)の末尾で株式市場の最近の3つの局面を以下のように評している(H/T Mostly Economics)。 In all three phases of the COVID-19 stock market, the eff…

30の大恐慌の終焉

サージェントの「The Ends of Four Big Inflations」をもじったと思われる表題のNBER論文が上がっている(5月時点のWP)。原題は「The Ends of 30 Big Depressions」で、著者はMartin Ellison(オックスフォード大)、Sang Seok Lee(ビルケント大)、Kevin …

国際的な友好国と敵対国

というNBER論文が上がっている(ungated版1、ungated版2)。原題は「International Friends and Enemies」で、著者はBenny Kleinman、Ernest Liu、Stephen J. Redding(いずれもプリンストン大)。 以下はその要旨。 We develop sufficient statistics of co…

天災に対応した海外移住:現代欧州で最も破壊的な地震についての実証結果

昨日紹介した論文と天災繋がりになるが、表題のNBER論文が上がっている。原題は「International Migration Responses to Natural Disasters: Evidence from Modern Europe's Deadliest Earthquake」で、著者はYannay Spitzer(ヘブライ大)、Gaspare Tortori…

天災と選択的医療サービス:回復の大きさはどの程度か?

というNBER論文が上がっている。原題は「Natural Disasters and Elective Medical Services: How Big is the Bounce-Back?」で、著者はTatyana Deryugina(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)、Jonathan Gruber(MIT)、Adrienne Sabety(NBER)。 以下…

テレワークとCovid-19の供給面への影響

というNBER論文が上がっている(VoxEU記事)。原題は「Working Remotely and the Supply-side Impact of Covid-19」で、著者はDimitris Papanikolaou(ノースウエスタン大)、Lawrence D.W. Schmidt(MIT)。 以下はその要旨。 We analyze the supply-side d…

米国の金融政策と財政政策の戦略的な相互作用

というNBER論文が上がっている(2年前のWP)。原題は「Strategic Interactions in U.S. Monetary and Fiscal Policies」で、著者はXiaoshan Chen(ダーラム大)、Eric M. Leeper(バージニア大)、Campbell B. Leith(グラスゴー大)。 以下はその要旨。 We …

中国の専制政治が長続きしたメカニズム

というSSRN論文にタイラー・コーエンがリンクしている。論文の原題は「A Longevity Mechanism of Chinese Absolutism」で、著者はYasheng Huang(MIT)、Clair Yang(ワシントン大)。 以下はその要旨。 A counterpart of what is known as “European except…

問題の先送り:欧州銀行部門への政府の介入

というNBER論文が上がっている(2018年時点のWP*1)。原題は「Kicking the Can Down the Road: Government Interventions in the European Banking Sector」で、著者はViral V. Acharya(NYU)、Lea Borchert(マンハイム大)、Maximilian Jager(同)、Sasc…

ランダム化比較試験主義者が(引き続き)支配すべきか?

というNBER論文が上がっている(2018時点のWP)。原題は「Should the Randomistas (Continue to) Rule?」で、著者はジョージタウン大のMartin Ravallion。 以下はその要旨。 The rising popularity of randomized controlled trials (RCTs) in development a…

企業、破綻、および変動:サプライチェーン混乱のマクロ経済学

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「Firms, Failures, and Fluctuations: The Macroeconomics of Supply Chain Disruptions」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Alireza Tahbaz-Salehi(ノースウエスタン大)。 以下はその要旨…

個人の予防策と公的な制限:COVID-19時代に社会的距離と業界の来客数を決めるのは何か?

というNBER論文が上がっている。原題は「Private Precaution and Public Restrictions: What Drives Social Distancing and Industry Foot Traffic in the COVID-19 Era?」で、著者はノートルダム大のChristopher J. CroninとWilliam N. Evans。 以下はその…

インドでのCOVID-19予防メッセージが2500万人の受信者の症状報告と予防行動順守を高め、共同体の非受信者にも同様の効果をもたらした件

バナジー=デュフロ夫妻らが表題の長いタイトルのNBER論文を上げている(関連BBC記事)。原題は「Messages on COVID-19 Prevention in India Increased Symptoms Reporting and Adherence to Preventive Behaviors Among 25 Million Recipients with Similar…

トランプ大統領のタルサ集会はCOVID-19を再燃させたか? インドアのイベントとそれを相殺する共同体効果

6/25エントリやそこでリンクしたエントリで紹介した論文でCOVID-19感染について精力的に実証研究を行っている研究者たちが、今度はトランプのタルサ選挙集会の感染への影響を表題のNBER論文で取り上げている。論文の原題は「Did President Trump's Tulsa Ral…

なぜグローバリゼーションはポピュリズムを煽るのか? 経済学、文化、そして右派ポピュリズムの勃興

というNBER論文をダニ・ロドリックが上げている(ハーバード大のungated版へのリンク)。原題は「Why Does Globalization Fuel Populism? Economics, Culture, and the Rise of Right-wing Populism」。 以下はその要旨。 There is compelling evidence that…

ゼロ金利下限下の財政金融安定化策:限定先見性の帰結

というNBER論文をウッドフォードらが上げている(昨年5月のAEA論文へのリンク1[8月までアクセス制限を外したAEAサイト]、リンク2[著者の一人のサイト])。原題は「Fiscal and Monetary Stabilization Policy at the Zero Lower Bound: Consequences of L…

COVID-19は移動と共にどれだけ増加するのだろうか? ニューヨークと米国の他の4都市からの実証結果

というNBER論文をエドワード・グレイザーらが上げている。原題は「How Much does COVID-19 Increase with Mobility? Evidence from New York and Four Other U.S. Cities」で、著者はEdward L. Glaeser(ハーバード大)、Caitlin S. Gorback(NBER)、Stephe…

アイスランドの検査データを用いた未検出のCOVID-19症例の識別と推計

というNBER論文をジェームズ・ストックらが上げている。原題は「Identification and Estimation of Undetected COVID-19 Cases Using Testing Data from Iceland」で、著者はKarl M. Aspelund(MIT)、Michael C. Droste(ハーバード大)、James H. Stock(…

環大西洋の技術:米欧の生産性成長率の推移におけるICTの役割

ロバート・ゴードンらがここで紹介した論文の続編とも言うべき表題のNBER論文を上げている。原題は「Transatlantic Technologies: The Role of ICT in the Evolution of U.S. and European Productivity Growth」で、著者は著者はRobert J. Gordon(ノースウ…

スペイン風邪の時の企業活動

Mostly Economicsも取り上げているが、表題のNBER論文が上がっている。原題は「Business in a Time of Spanish Influenza」で、著者はクレムソン大のHoward Bodenhorn。 以下はその要旨。 Mandated shutdowns of nonessential businesses during the COVID-1…

パンデミックにおける集団検査:頻繁な検査、相関するリスク、および機械学習の果たす役割

MRブログでアレックス・タバロックが「重要な新たな論文」として紹介しているが、表題のNBER論文が上がっている。原題は「Group Testing in a Pandemic: The Role of Frequent Testing, Correlated Risk, and Machine Learning」で、著者はNed Augenblick、J…

Covid-19危機中の財政・金融政策の決定要因

というNBER論文が上がっている。原題は「The Determinants of Fiscal and Monetary Policies During the Covid-19 Crisis」で、著者はEfraim Benmelech(ノースウエスタン大)、Nitzan Tzur-Ilan(同)。 以下はその要旨。 As countries around the world gr…

良い信用バブル、悪い信用バブル

「Credit Booms, Financial Crises and Macroprudential Policy」というNBER論文を清滝信宏氏とガートラーらが書いている(ungated版(4月時点のWP)、日本経済国際共同研究センターの昨年8/22のマクロ経済学ワークショップでのスライド、ペンシルベニア大の…

検査が逆効果になる時

「Testing, Voluntary Social Distancing and the Spread of an Infection」というNBER論文をアセモグルらが上げている。著者はDaron Acemoglu(MIT)、Ali Makhdoumi(デューク大)、Azarakhsh Malekian(トロント大)、Asuman Ozdaglar(MIT)。 以下はそ…

災害対処:2世紀に亘る国際公的融資

というNBER論文をカーメン・ラインハートらが上げている(ungated版、VoxEU記事)。原題は「Coping with Disasters: Two Centuries of International Official Lending」で、著者はSebastian Horn(ミュンヘン大)、Carmen Reinhart(ハーバード大)、Christ…

長期予測回帰のバイアス

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Biases in Long-Horizon Predictive Regressions」で、著者はJacob Boudoukh(IDC ヘルツェリア大)、Ronen Israel(AQR Capital)、Matthew P. Richardson(NYU)。 以下はその要旨。 Analogou…

サルター=スワン小国開放経済モデルの再興

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Reviving the Salter-Swan Small Open Economy Model」で、著者はコロンビア大のStephanie Schmitt-GrohéとMartín Uribe。 以下はその要旨。 This paper provides microfoundations to the Salter-Swan …

ランダム性を伴う動学的不均衡理論に向けて

というNBER論文をスティグリッツらが上げている。原題は「Towards a Dynamic Disequilibrium Theory with Randomness」で、著者はMartin M. Guzman(コロンビア大)、Joseph E. Stiglitz(同)。 以下はその要旨。 Most macroeconomic crises, such as the 2…

通勤網における最適なロックダウン

というNBER論文が上がっている。原題は「Optimal Lockdown in a Commuting Network」で、著者はPablo Fajgelbaum(UCLA)、Amit Khandelwal(コロンビア大)、Wookun Kim(南メソジスト大)、Cristiano Mantovani(ポンペウ・ファブラ大)、Edouard Schaal(…