2010-01-01から1年間の記事一覧

クロアチアとラトビア

ラトビアと言えば、ユーロペッグ通貨政策とそれに伴うデフレ政策がクルーグマンの格好の標的になっており、最近でも12/17ブログエントリや12/21ブログエントリで(その緊縮政策を賞賛する人々共々)反面教師として取り上げられている。また、拙ブログでもこ…

アイスランド=荒川区?

クルーグマンがアイルランドとネバダ州を比較している。それによると、両者の共通点は 人口は似たようなもの*1 住宅バブルはその極端さにおいて両者でほぼ同等だった 失業率は共に約14% 一方の相違点は 同一通貨圏内の別の地域への移転が安全弁として機能す…

ケインズにヴェルサイユ条約を批判する資格は無かった?

今年の10月3日、ドイツが第一次世界大戦の賠償金を完済したというニュースが流れた。2007年にノーベル経済学賞を受賞したゲーム理論家のロジャー・マイヤーソンが、最近ゲストブロガーとなったCheap Talkという共同ブログで、このニュースに関するNYT記事を…

名目GDP先物の循環問題と期末取引集中問題

12/24のエントリにerickqchan氏からコメントを頂いたが、そこで氏が以前に訳されたサムナーの名目GDP先物の解説を紹介いただいた。その解説のFAQでは、名目GDP先物の問題になり得る点として、循環問題と、取引が最後まで行なわれない、という2つの点が挙げら…

スクルージは福祉国家主義者だった?

今年のクリスマスの時期には、ディケンズのクリスマス・キャロルのスクルージが各所で言及されていたが、その中で個人的に面白かったのは、Econlogのデビッド・ヘンダーソンのクルーグマン批判であった。 ヘンダーソンの批判の対象となったのはクルーグマン…

貨幣数量説の一解釈

WCIブログのNick Roweが貨幣数量説に関して面白い解釈を提示している。それによると、交換方程式 MV=PY において、 M=暖房のために燃やした灯油 V=外界温度 P=室内温度 と解釈すべきだと言う。 もしサーモスタットが正常に機能していれば、消費燃…

ブログは研究と呼べるか?

少し前にWCIブログのFrances Woolleyがそう疑問を投げ掛けていた。以下はその拙訳。 学者ブロガーは誰しもある疑問に秘かに心を悩ませている:これは研究の名に値するのか? Glen Ellisonの新しい論文(ungatedバージョンはこちら)は、トップクラスの学者の…

名目GDP先物と日本の信用取引

最近、名目GDP先物を取り上げたBill Woolseyの12/16エントリのコメント欄で、彼と少しばかりやり取りをするということがあった。その際、そういえば現在の日本の個別株の信用取引制度が今のような形になったのはGHQのせいだ、という話を瀬川美能留氏の「私の…

減衰する真実

というニューヨーカー記事がアンドリュー・ゲルマンのブログで紹介されていた(原題は「The Truth Wears Off」;日本語ブログではこちらのブログで紹介されている)。記事では、以前の実証研究では確かに存在すると思われた効果が、その後に再度同じ実証研究…

国際通貨基金がインターナショナルを歌う日?

A Fistful of Eurosに面白いエントリが上がっていた(Economist's View経由)。内容は、IMFのMichael KumhofとRomain Ranciéreによる最近のワーキングペーパーの紹介。その概略は以下の通り。 論文の著者たちは、以下の要因を盛り込んだDSGEモデルを提示した…

永遠の23歳

はてなキーワードの永遠の17歳のようなタイトルになってしまったが、それがアビナッシュ・ディキシットの研究術だという。 Of all the lessons I have learnt during a quarter-century of research,” writes Dixit, “the one I have found most valuable is…

慈善事業への寄付の税控除もいらない

昨日のエントリの最後で、マンキューが個人的には慈善事業への寄付の税控除を支持していることを紹介したが、折りよくリチャード・セイラーがそれをテーマにした論説をNYTに書いた。そこでセイラーは、 First, some basics. If there is one thing that most…

税控除なんかいらない

今日は、税控除に関する保守派経済学者の見解として、昨日のエントリの最後で触れた2つの論説を抄録で紹介してみる。まずは、マンキューブログ7/20エントリで引用されたフェルドシュタインWSJ論説。 When it comes to spending cuts, Congress is looking in…

税制改正批判への素朴な疑問

官庁エコノミストのブログやwrong, rogue and booklogで取り上げられているが、ニッセイ基礎研究所が今回の税制改正の家計への影響をシミュレートしたレポートを出している。そこでは3つのケースについてシミュレーションを行い、いずれのケースでも2010年か…

サマーズ「国同士の競争は企業同士の競争から学ぶべきだ」

何だかクルーグマンの有名な論説に真っ向から反しているような気もするが、サマーズがEconomic Policy Instituteでの「離任演説」でそう述べている。以下はTIME誌の政治ブログSwamplandに掲載されたトランスクリプトから、需要刺激策の限界について触れた部…

失業者の就労が増えているのは需要不足説と整合的なのか?

とDavid Andolfattoがブログで問い掛けた。 そこで彼は、以下の2つの図を示している。最初の図は、失業と就労の間を遷移した労働者の数である*1。就労状態から失業状態に移行した人数(赤線)が景気後退期に増えているのは、経済が需要不足に陥っているとい…

今日の循環的失業者が明日の構造的失業者になる?

という主旨の記事が12/2のEconomixに上がっていた(原題は「Will Today’s Unemployed Become Tomorrow’s Unemployable?」)。そこでは、シカゴ大のRobert Shimerの2008年の論文「The Probability of Finding a Job」から以下の図が引用されている。これは失…

成功した金融政策とはどんな感じかな?

アトランタ連銀のDavid Altigがmacroblogの12/2エントリをそう題している(原題は「What might monetary policy success look like?」)。そのエントリではAltigは、8/27のバーナンキのジャクソンホール講演以降ディスインフレ傾向は後退した、というロック…

「ザ・クオンツ」著者インタビュー

The Big Pictureのバリー・リソルツが、以下の本の著者であるスコット・パタースンをインタビューし、それを2回に分けてブログに掲載している(ここ、ここ)。ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち作者: スコット・パタースン,永峯 涼出版社/メーカー: …

MIT、ELT、BLT

少し前にロドリックのモーリシャスの経済発展への礼賛を簡単に紹介したことがあったが、そのモーリシャスの中央銀行総裁Rundheersing Bheenick*1が、先月27日の首都ポートルイスでのスピーチで、自国の成功について数字を示して説明すると同時に、現在同国が…

テイラー「FRBの目標は一つで良い」

ロイターの日本語記事でも取り上げられているが*1、先月末にジョン・テイラーが、ポール・ライアン共和党下院議員と共同で、FRBの使命を物価安定一本に絞るよう訴える論説を書いている(ジョン・テイラーの12/1ブログエントリ経由)。以下はその概略。 ワシ…

フェルプス「問題は需要不足では無い」

今年の8月にエドムンド・フェルプスが景気回復に関するNYT論説を書いている(ジョン・テイラーの11/21ブログエントリ経由)。以下はその概略。 政府の景気対策は誤った前提に基づいている。彼らは現状を需要不足と診断しているが、実際には、デフレや流動性…

研究していることと信じていること

と題したブログエントリをRoweが書いている(原題は「What we research, and what we believe」)。 以下はその拙訳。 あなたが理論Xを信じているものとしよう。あなたは理論Xの研究をしたいと考えている。ところが、理論Xに関する興味深いアイディアはすべ…

魚は自分の泳ぐ水を感じない

とRoweが書いている(原文は「Fish don't feel the water they swim in.」*1)。これはクルーグマンのマネタリスト批判を受けて書かれたもので、クルーグマンはマネタリズムをk%ルールとしてのみ捉えているが、それはあまりにも狭い捉え方である、と反論して…

ケインズはケインジアンだったのか?

4日と5日に紹介したinterfluidityエントリのコメント欄で、デビッド・コランダー(David Colander)*1の「Was Keynes a Keynesian or a Lernerian?」という1984年の短いが興味深い論文が紹介されていた。 以下はその簡単なまとめ。 最近、アラン・メルツァー…

イノベーションなんかいらない

12/2エントリでUmair Haqueという人のハーバード・ビジネス・レビュー・ブログエントリを紹介したが、そのエントリでは彼の過去のエントリへのリンクが張られていた。そちらのエントリで、構造改革派御用達のイノベーションという概念をくさしていたのが少し…

ハングオーバー理論と道徳劇

昨日紹介したワルドマンのブログエントリ「Hangover theory and morality plays」の主眼は、カール・スミスの過剰消費説批判への反論であり、昨日の紹介部分(=繁栄の測定手段に関する議論)は実はその前振りに過ぎない。ワルドマンは、このエントリを、以…

繁栄の測定尺度

昨日紹介したデロングの記事は、スティーブ・ワルドマンの直近ブログ記事でリンクしていたものだが、そのエントリでワルドマンは興味深いことを書いている。なお、これはModeled Behaviorのカール・スミスのエントリを受けて書かれたものである。 Smith is v…

フィナンシャルタイムズが読めるようになるためのマクロ経済学課程

今のマクロ経済学の教科書を読んだりマクロ経済学の課程を履修しても、現下の不況についてフィナンシャルタイムズが報道している記事や、その紙面上で交わされている議論を理解することはできない、と先月12日にデロングが書いている(H/T Interfluidity)。…

銀行が消えた日

Once upon a time, there was a country where bankers disappeared. The bankers, fed up with regulation, dissatisfaction, and downright hostility, decided to unleash the planet-destroying superweapon in their arsenal: they went on strike, not…