2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

今後の米国のインフレ率は4〜5%になる

ピーターソン国際経済研究所のSamuel Reynardが、貨幣の数量方程式に基づく分析から、現在の米国は1990年代の日本よりは2000年代のアルゼンチンに近い、という結論を導き出している(Mostly Economics経由)。 The analysis presented in this paper shows t…

合理的期待はデウス・エクス・マキナか、それともモデル整合性確保の手法か?

クルーグマンとWilliamsonの論争を取り上げたDavid Glasnerのエントリで、Glanerとサムナーが議論になった。ただ、議論のテーマは本論とでも言うべきマクロ経済学の現状についてではなく、合理的期待に関するものであった。 まず、エントリ本文でGlasnerが合…

やはり病気は経済発展の負担

少し前に地理的条件と経済成長の関係に関するアセモグル=ロビンソンとジェフリー・サックスの論争を紹介したが、サックス側に有利となるような研究をEurekAlert経由でEconomist's Viewが紹介している。 以下はそこで紹介されている27日に出版されたばかりの…

フィッシャー式を逆さに見る理由

以前小生がフィッシャー式逆さ眼鏡派と呼んだ人たちが、どうして低金利からデフレへの因果関係を導き出してしまうかについて、デロングブログのコメントでロバート・ワルドマンが以下のように解説している(デロングはここやここでそのコメントを改めてハイ…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第11弾)

マンキューがクルーグマンの矛盾を指摘している。 グレッグ君 僕とポール君は良く意見が食い違うが、大抵は彼の言うことを理解できる。しかしこのところ、彼の債券市場への見方が分からなくなった。最近のエントリで彼は、オバマ大統領は長期的な財政の不均…

制度の質のデータベース

以下はUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第10位の論文の図。 この論文(タイトルは「Institutional Quality Database」で、著者はキール世界経済研究所のAljaz Kuncic;上図をリンクしたUDADISIの5/2付け元エントリはこちら)では、制度の質に関する指…

誰を学校に通わせるか?

思いつきエントリで一日間が空いたが、今日はUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第9位の論文を紹介してみる(論文のタイトルは「Child Ability and Household Human Capital Investment Decisions in Burkina Faso」で、著者はRichard Akresh[イリノイ…

現代版のビンに詰めた紙幣

今日はデフレに関して最近ふと思いついたことを適当に書いてみる。いつもの口上ではあるが、素人の思いつきなので、あくまでもそのつもりで読んでいただければ幸甚。 構造改革によるデフレ解消について デフレというのは貨幣という商品の魅力が高過ぎてそち…

NGOの監視および評価への民族誌学の原理の組み込み

昨日はUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第5位の論文を紹介したが、今日は第8位の論文を紹介してみる*1。(論文のタイトルは「Integrating Ethnographic Principles In Ngo Monitoring And Impact Evaluation」で、著者は豪州ニューサウスウェールズ大…

組織犯罪の経済的コスト:南イタリアにおける実証結果

UDADISIの2012年経済学論文ランキングから今日は(順番に従って)第5位の論文を紹介してみる(論文のタイトルは「The Economic Costs of Organized Crime: Evidence from Southern Italy」で、著者はボッコーニ大学のPaolo Pinotti)。以下はその要旨。 I ex…

新制度学派経済学への招待

UDADISIの2012年経済学論文ランキングから今日は第4位の論文を紹介してみる(論文のタイトルは「Institutions, Economics and the Development Quest」で、著者はポルト大学のDuarte N. Leite、Sandra T. Silva、Óscar Afonso)。 以下はその要旨。 Institut…

テレビが自閉症を引き起こすのか?

UDADISIの2012年経済学論文ランキングから今日は第3位の論文の要旨を紹介してみる(論文のタイトルは「Positive and Negative Mental Health Consequences of Early Childhood Television Watching」で、著者はコーネル大学のMichael Waldman、Sean Nicholso…

経済環境と自爆テロのクオリティ

昨日のエントリは思わぬほどたくさんのはてぶを頂いたが、そのエントリに書いた通り、それはUDADISIの2012年経済学論文ランキング(=アクセス数ランキング)の第2位の論文である。今日は第1位の論文の要旨を紹介してみる: We analyze the link between eco…

経済学を勉強すると嘘をつきやすくなる

という点について研究した論文がUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第2位として取り上げられていた。著者はマドリード・アウトノマ大学のRaúl López-Pérezとケベック大学モントリオール校のEli Spiegelmanで、論文のタイトルは「Do Economists Lie More?…

アセモグル=ロビンソンの「直線史観」と文化

昨日までの一連のエントリで紹介したサックス記事で槍玉に挙がったAJR論文について、文化の重要性という面から論じたNBER論文が、UDADISIの2012年経済学論文ランキングの第7位として取り上げられていた(著者はハーバードのNathan Nunnで、論文のタイトルは…

アセモグル=ロビンソンの「直線史観」:サックスの批判

今日は、サックスのアセモグル=ロビンソンへの反論記事から、その記事のメインテーマとなっているAJR線形(直線)モデルへの反論部分をまとめてみる。 13日エントリの最後に記した通り、AJRモデルは以下のスキームで表わされる。 (potential) settler morta…

因果関係を示す理論に予測力は必要無い?

引き続きサックスのアセモグル=ロビンソンへの反論記事から、理論の予測力と実地への応用性について論じた部分を引用してみる。 Third, Acemoglu and Robinson simply shrug off the inability of their theory to predict economic growth. To my point th…

アセモグル=ロビンソンと地理的条件:サックスの反論

昨日紹介したサックスのアセモグル=ロビンソンへの反論記事から、アセモグル=ロビンソンが地理的条件の無効性を論ったことへの反論部分を以下にまとめてみる(各箇条書きの主項がアセモグル=ロビンソンの主張、副項がサックスの反論)。 地理的条件は、米…

アセモグル=ロビンソンの「直線史観」

12/3エントリでアセモグル=ロビンソンvsサックスの論争を紹介したが、Coordination Problemブログ(旧名:The Austrian Economists*1)経由で、サックスが自HPで反論をまとめたことを知った。そこでサックスは、「I thank them for their response, even if…

4つの4

クビグスタド(Jan Fredrik Qvigstad)ノルウェー中央銀行副総裁*1が、銀河ヒッチハイク・ガイドでは42がマジックナンバーだったが、自分にとっては4がマジックナンバーだ、と昨年2月のスタッフレポートで述べている(Mostly Economics経由)。それによると …

市場マネタリストとカンティロン効果とハイエクの景気循環論

経済に新規に注入された貨幣のもたらす効果は、その貨幣がどこに注入されたかで違ってくるか、という点を巡り、市場マネタリストとオーストリア学派の人がやり合っていたようだ。オーストリア学派は違うと言い、市場マネタリストは違わないと言う。結局、効…

財政政策もサーモスタットの役割を果たせるのか?

最近、デビッド・ベックワースが示した以下の図を巡ってちょっとした論争があった。 各人の言い分を乱暴にまとめると、以下のようになる。 ベックワース 財政政策の動向は名目GDPに無関係。金融政策がすべてを決めるから*1。 ノアピニオン氏 Nick Roweの言う…

最低賃金引き上げは若者より高年齢層にとって損

という実証結果を示した論文をEconomic Logicが紹介している。以下はその要旨。 We estimate the effects of a significant increase in the minimum wage in Spain between 2004 and 2010 on the individual probability of losing employment, using a lar…

ハイパーインフレは稀だが、ユーロ圏の崩壊はその原因となり得る

と題した論文をピーターソン国際経済研究所のシニア・フェローであり、かつてサックスと共にロシアの経済改革に尽力したAnders Åslund*1が書いている(Mostly Economics経由;原題は「Hyperinflations Are Rare, but a Breakup of the Euro Area Could Promp…

共有地の悲劇に対するある反例

昨日に続きEconomist's View経由のサンディねた。 マシュー・カーン (Matthew Kahn)カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)環境研究所、経済学部、公共政策学部教授が、自ブログで、マーケット大学歴史学部の准教授アンドリュー・カール(Andrew Kahr…

災害と便乗値上げ

マンキューが取り上げたように、ハリケーンのサンディが東海岸を襲った時の便乗値上げ(price gouging)について、CNBCのJohn Carneyが価格メカニズムの働きとして肯定した一方で(cf. ここ、ここ)、Mark Thomaがフェアネスの観点から疑問を呈した*1。そのT…

高速道路への公共投資の乗数は2以上

という研究結果をサンフランシスコ連銀のEconomic Letterが紹介している(H/T Mostly Economics;その結果をまとめた論文はこちら)。 以下はその冒頭部からの引用。 We find that unanticipated increases in highway spending have positive but temporary…

ルーカス「モデルはうまくいかなくて当たり前」

Stephen Williamsonが引用したEconomicDynamicsのルーカスインタビューが面白い(H/T Economist's View)。 以下はその中のミクロ的基礎付けに関する話。 ED: If the economy is currently in an unusual state, do micro-foundations still have a role to …

アセモグル=ロビンソンとCAPM

先月21日にアセモグル=ロビンソンが、「Why Nations Fail」に対するサックスのフォーリン・アフェアーズ誌上での批判に自ブログで反論したが(H/T Mostly Economics)、その内容はノアピニオン氏が“今まで目にした中で最も辛辣なものの一つ(one of the mos…

FRBがインフレ目標を採用しなかったわけ

について、イエレンの11/13講演では以下のように述べられている。 The FOMC could have chosen to adopt an "inflation-targeting framework," in which it would have specified an objective solely for inflation, without any explicit reference to emp…