2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

人生いろいろ、インフレ予想もいろいろ、情報解釈もいろいろ

Carola Binderが、Amazon Mechanical Turkを使って行ったインフレ予想に関する実験の内容をブログで紹介している。 Consumers' inflation expectations are very disperse; on household surveys, many people report long-run inflation expectations that …

わからないことやどうしようもない不確実性に包まれたときに人は数字を丸めるのでしょう

以前、「インフレ率に関する人々の予測ならびに記憶が曖昧な証左として、回答されたインフレ率が5%の倍数に集まりやすい傾向」がある、というCarola Binderの指摘を紹介したことがあったが、7月7日の彼女のブログエントリで、その傾向を分析した論文を出版し…

付加価値税の増減税の非対称性

「What Goes Up May Not Come Down: Asymmetric Incidence of Value-Added Taxes」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はYoussef Benzarti(UCLA)、Dorian Carloni(議会予算局)、Jarkko Harju(VATT Institute for Economic Research(フィ…

大不況の雇用への履歴効果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Employment Hysteresis from the Great Recession」で、著者はDanny Yagan(UCバークレー)。 以下はその要旨。 This paper uses U.S. local areas as a laboratory to test whether the Great Recessio…

歴史的に見た中央銀行の進化とイノベーション

ここやここで紹介したNBER論文の著者であるMichael D. Bordo(ラトガーズ大)とPierre Siklos(ウィルフリッド・ローリエ大学)が、また中銀に関するNBER論文を書いている(ungated版)。 以下はその論文「Central Banks: Evolution and Innovation in Histo…

大恐慌と大不況の貿易の落ち込みの比較

「Two Great Trade Collapses: The Interwar Period & Great Recession Compared」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はオックスフォード大のKevin Hjortshøj O'Rourke。 以下はその要旨。 In this paper, I offer some preliminary compariso…

通貨安競争としての量的緩和

についてジョン・テイラーが実証分析した結果をブログで報告している。 About one year ago at the annual monetary conference in Jackson Hole, Meltzer argued that the Fed’s “quantitative easing” was in effect a monetary policy of “competitive de…

ノイズ除去装置としてのAI

今月の13-14日に、「AIの経済学(Economics of AI)」というNBERコンファレンスがトロントで開かれ、「Behavioural Economics」と題したカリフォルニア工科大学のColin Camererの講演(資料、スライド、ビデオ)にカーネマンが討論者として参加した。Joshua …

第二のグローバル化時代はまだ終わっちゃいねえ

「The Second Era of Globalization is Not Yet Over: An Historical Perspective」というNBER論文をマイケル・ボルドーが上げている(ungated版)。以下はその要旨。 The recent rise of populist anti-globalization political movements has led to conce…

1930年代の量的緩和政策は如何に巻き戻されたか?

FOMCで10月からのバランスシート縮小が決まったが、過去の事例を調べた表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「How was the Quantitative Easing Program of the 1930s Unwound?」で、著者はMatthew Jaremski(コルゲート大)、Gabriel Mathy(…

中銀における機械学習

というBOEのスタッフ論文が出ている(H/T Francis Diebold)。原題は「Machine learning at central banks」で、著者はChiranjit Chakraborty、Andreas Joseph。 以下はその要旨。 We introduce machine learning in the context of central banking and pol…

米国版「反・日本列島改造論」

「Tarnishing the Golden and Empire States: Land-Use Restrictions and the U.S. Economic Slowdown」というNBER論文をプレスコットらが書いている(ungated版のサイト)。著者はKyle F. Herkenhoff(ミネソタ大)、Lee E. Ohanian(UCLA)、Edward C. Pre…

経済学者の7つの罪

をインドのLivemint紙で編集者のPramit Bhattacharyaが挙げている(H/T Mostly Economics)。 アリス・イン・ワンダーランド的な仮定 1989年以降のネオリベ的なコンセンサスは、1970〜80年代の合理的期待革命に基づいていた。 そうした考え方はシラーらによ…

安全資産不足という難問

という論文をJournal of Economic Perspectivesにカバレロらが書いている(本石町日記さんツイート経由のAEAweb記事経由)。原題は「The Safe Assets Shortage Conundrum」で、著者はRicardo J. Caballero(MIT)、Emmanuel Farhi(ハーバード大)、Pierre-O…

目標インフレ率を下げるか、それとも非伝統的金融政策を続けるか?

ヌリエル・ルービニが13日付のProject Syndicate論説で、財や労働市場の需給が引き締まっているにも関わらず先進国のインフレ率が上がらないのは、グローバル化、労組の弱体化、原油・商品価格の低下、技術革新といった正の供給ショックのためではないか、と…

財政刺激策と財政の持続可能性

「Fiscal Stimulus and Fiscal Sustainability」というNBER論文をUCバークレーのAlan J. AuerbachとYuriy Gorodnichenkoが書いている(ungated版)。以下はその要旨。 The Great Recession and the Global Financial Crisis have left many developed countr…

情報経済学の革命:その過去と未来

スティグリッツのNBER論文をもう一丁。以下は「The Revolution of Information Economics: The Past and the Future」の要旨。 The economics of information has constituted a revolution in economics, providing explanations of phenomena that previou…

現代マクロ経済学はどこで道を間違えたか

「Where Modern Macroeconomics Went Wrong」というNBER論文をスティグリッツが上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 This paper provides a critique of the DSGE models that have come to dominate macroeconomics during the past quarter-centur…

経済学の入門課程における新たなパラダイム

ニューヨーカー誌でも取り上げられているが、COREという新しい無料のオンライン経済学教科書が話題を呼んでいる。表題のVoxEU記事(原題は「A new paradigm for the introductory course in economics」)で、著者のうちの2人(Samuel Bowles、Wendy Carlin…

DACA打ち切りと日本化

クルーグマンが、DACA打ち切りは日本化への近道だ、と警告を発している。 Meanwhile, I’m one of those who worries about secular stagnation — persistently weak spending, making episodes in which monetary policy can’t achieve full employment even…

都市国家の復活

という論説(原題は「Return of the city-state」)を英国のシンクタンクDemos*1のJamie Bartlett*2が書いている(H/T Mostly Economics)。 The case against the nation-state is hardly new. Twenty years ago, many were prophesising its imminent demi…

マクロ経済学における歪み

「Distortions in Macroeconomics」という小論をブランシャールが書いている(H/T hicksianさんツイート)。 I shall argue that, over the past 30 years, macroeconomics had, to an unhealthy extent, focused on a one-distortion (nominal rigidities) …

世界金融循環はどの程度重要なのか? 資本移動による実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated[IMF]版)。原題は「How Important is the Global Financial Cycle? Evidence from Capital Flows」で、著者はEugenio Cerutti(IMF)、Stijn Claessens(BIS)、Andrew K. Rose(ハーバード大)。 以下はその要旨。…

予防的金融引き締め措置:費用に関する異なる仮定の役割

以前紹介した予防的金融引き締め措置に関する論文の続編とでも言うべき表題のNBER論文(原題は「Leaning Against the Wind: The Role of Different Assumptions About the Costs」)をスヴェンソンが書いている(関連ブログエントリ、ungated版もそこでリン…

ベイルインとベイルアウト:インセンティブ、結合性、およびシステムの安定性

というNBER論文をスティグリッツらが書いている。原題は「Bail-ins and Bail-outs: Incentives, Connectivity, and Systemic Stability」で、著者はBenjamin Bernard(UCLA)、Agostino Capponi(コロンビア大)、Joseph E. Stiglitz(同)。 以下はその要旨…

女性が専攻を変える時

「Choice of Majors: Are Women Really Different from Men?」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はジョージタウン大学のAdriana D. Kugler、Catherine H. Tinsley、Olga Ukhaneva。 以下はその要旨。 Recent work suggests that women are mo…

人種による所得格差は存在する

「Race Matters: Income Shares, Income Inequality, and Income Mobility for All U.S. Races」というNBER論文が上がっている(以前のバージョンと思われるWP)。著者はRandall Akee(UCLA)、Maggie R. Jones(センサス局)、Sonya R. Porter(同)。 以下…

ノーベル賞経済学者は格差拡大をどう見ているか

引き続きリンダウ・ノーベル賞受賞者会議ネタ。同会議では、格差に関する懸念が大物経済学者から相次いで表明された、とシティ大学ロンドンのSteve Schifferes金融ジャーナリズム教授がThe Conversationで報告している(H/T Mostly Economics)。 以下は同記…

研究と政策の相互依存関係

と題されたリンダウ・ノーベル賞受賞者会議での講演(原題は「The interdependence of research and policymaking」)の結論部で、マリオ・ドラギECB総裁が、過去10年の経験から得られたという5点の教訓を挙げている(H/T Mostly Economics)。 突然のショッ…

ポピュリストとクローニーキャピタリズムの関係

スティグラーセンターの金融の政治経済コンファレンスでラグラム・ラジャンが基調講演を行い、それを「Raghuram Rajan: Populist Nationalism Is “the First Step Toward Crony Capitalism”」と題したProMarket記事が紹介している(H/T 本石町日記さんツイー…