2015-01-01から1年間の記事一覧

長期主義の弊害

5年半前に、小生は本ブログで以下のようなことを書いた。 …おそらく当初は皆バブル崩壊に伴って生じた需要不足という見方で概ね一致していたのだろうが、不況が長引くにつれ「いや待てよ、これだけ長引くならば単なる一時的な需要不足の問題ではないだろう、…

比較優位なんかいらない

デューク大のMichael Munger*1が、Foundation for Economic Education*2の論説記事で、以下のように述べている(H/T Mostly Economics)。 The problem is that fixed comparative advantage — derived from weather, culture, and location — is vanishing …

ハンセンとGMM

引き続きハンセンインタビューから。今日は、冒頭のGMMの説明を引用してみる。 Region: Let’s start, if we could, with asset prices and the generalized method of moments, known as GMM. When you were honored with the Nobel award in 2013 for your …

ハンセンとロバスト制御理論

引き続きリージョン誌のハンセンインタビューから。昨日引用した部分のさらに前段でハンセンは以下のように述べている。 Region: Let me turn to a related topic, robust control theory. You and Tom Sargent pioneered its application in economics, and…

不確実性は行動しないことの言い訳にはならない

今日は、リージョン誌のハンセンインタビューから、昨日引用した部分の前段でハンセンが語ったことを紹介してみる。 I worry about the pressures that policymakers face to project a lot of confidence in a precise rationale when they communicate wit…

より単純な政策がより慎重な政策なのか?

ミネアポリス連銀のリージョン誌がラース・ハンセンのインタビュー記事を掲載している。以下はそこからの引用。 Region: Related to this point about the projection of certainty, your closing observation in your Nobel lecture was, “Uncertainty gene…

主要死因の歴史的起源:米国南部の心疾患

という少し毛色の変わったNBER論文が上がっている。原題は「Historical Origins of a Major Killer: Cardiovascular Disease in the American South」で、著者はオハイオ州立大のRichard H. SteckelとGarrett Senney。 以下はその要旨。 When building major…

非伝統的金融政策の資産価格への影響の測定

というNBER論文が上がっている(ungated版;cf. 当該研究のプレゼンが行われたチリ中銀第19回コンファレンスのサイト)。原題は「Measuring the Effects of Unconventional Monetary Policy on Asset Prices」で、著者はUCアーバインのEric T. Swanson。 以…

サマーズ「FRBは長期停滞の可能性を強めた」

とサマーズが22日付けWaPo論説に書いている(自HP転載記事;H/T Economist's View)。以下はその冒頭部。 It has been two years since I resurrected Alvin Hansen’s secular stagnation idea and suggested its relevance to current conditions in the in…

短期金利政策と量的緩和政策のイールドカーブへの影響

を比較したNBER論文が上がっている(ungated版)。論文のタイトルは「Forward Guidance in the Yield Curve: Short Rates versus Bond Supply」で、著者はRobin Greenwood(ハーバード大)、Samuel Hanson(同)、Dimitri Vayanos(LSE)。 以下はその要旨。…

わが孫たちの経済的不可能性?

というNBER論文をオックスフォード大のKevin Hjortshøj O'Rourkeが書いている(原題は「Economic Impossibilities for our Grandchildren?」;論文の元となった英国学士院[British Academy]講演の映像はこちら)。以下はungated版の終盤におけるO'Rourkeの…

2010年1月28日付けコメント欄方針の適用第二号について

以前本ブログのコメント欄の方針変更についてお知らせしたことがありましたが、その基準適用の第二号としてwaさんにこの方針を適用させて頂きます。コメントの活動期間については、そこで記した「数ヶ月以上」という「長期」基準には達していませんが、それ…

フィル・コリンズの認知的不協和

をクリス・ディローが指弾している(H/T Economist's View)。といってもジェネシスのフィル・コリンズではなく、かつてトニー・ブレアのスピーチライターを務めたフィリップ・コリンズ(Wikipedia)のこと。 ディローが槍玉に挙げたのはコリンズの18日付け…

マクロ経済学は本物か?

Lars Syllが表題のブログ記事(原題は「Is macroeconomics for real?」)でケビン・フーバー*1の言葉を引用している(Economist's View経由のデロング経由;該当Economist's Viewエントリの邦訳はこちら)。 Empirically, far from isolating a microeconomi…

科学は葬式ごとに進歩するのか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Does Science Advance One Funeral at a Time?」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Christian Fons-Rosen(ポンペウ・ファブラ大学)、Joshua S. Graff Zivin(UCサンディエゴ)。 We study the extent …

貨幣と生産:フリードマン=シュワルツ再訪

というNBER論文が上がっている。原題は「Money and Output: Friedman and Schwartz Revisited」で、著者はMichael T. Belongia(ミシシッピ大)、Peter N. Ireland(ボストンカレッジ)。 以下はその要旨。 More than fifty years ago, Friedman and Schwart…

米国債務上限史

というNBER論文をサージェントらが書いている(ungated(IMF)版、IMFプレゼン資料)。原題は「A History of U.S. Debt Limits」で、著者はGeorge J. Hall(ブランダイス大)、Thomas J. Sargent(NYU)。 以下はその要旨。 Congress first imposed an aggre…

資産価格モデルの比較

エモリー大のFrancisco BarillasとJay Shankenが、11/13エントリで紹介した論文の続編とでも言うべき表題のNBER論文を上げている(原題は「Comparing Asset Pricing Models」;SSRN版)。 以下はその要旨。 A Bayesian asset-pricing test is derived that i…

金融政策当局者は経済の話題を金融政策との関連においてのみ話すべき

という主旨のCBSニュース論説をMark Thomaが書いている。(H/T Economist's View)。彼がそこで槍玉に挙げたのは、昨年イエレンが格差に関して行った講演(cf. ここ)。 Nevertheless, despite Yellen's attempts to avoid political issues and stick to th…

赤毛のアンとメープルシロップのサウジアラビア

マンキューが、以前の教え子から送られてきたケベックのメープルシロップ市場のカルテル化に関する面白い記事としてこちらのBBC記事にリンクしている。 以下は記事の冒頭部。 Redheaded grandmother Angele Grenier doesn't look much like a criminal, but …

盲目的な中国への礼賛が西側を思考停止に陥らせている

漱石の「こころ」には、「かつてはその人の膝の前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載せさせようとするのです」という一節があるが、表題のエントリ(原題は「Blind adoration of China has paralyzed the West…」)の冒頭で、Mostly Econom…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第7弾)

ジェブ・ブッシュの税政策を分析したTax Policy Centerのレポートに両者が反応した(ただしマンキューはリンクしただけだが)。 グレッグ君 ジェブの税政策:Tax Policy Centerの分析。 ポール君 ジェブ・ブッシュは共和党候補に指名されないだろうから、極…

防げなかったことと引き起こしたことの違い

テッド・クルーズ上院議員が、12/3に開かれた上下両院合同経済委員会の席上で証言したイエレンFRB議長に対し、2008年夏にFRBが金融引き締め方向に動いたことで金融危機が醸成されたのではないか、と質問した。それについてデビッド・ベックワースが、クルー…

対数軸の罠

引き続きコクランの成長戦略ネタ。 6日エントリの脚注で触れた通り、「フロンティアまでの距離」と一人当たりGDPを散布図上の回帰直線で関連付けた第2項の分析は、Kids Prefer CheeseブログでAngusに厳しく批判されている。 以下は問題の図。 ここでFROは「…

歩道に放置された数兆ドル?

12/6エントリで取り上げたジョン・コクランのエントリの第2項目では、非効率性を解消すれば所得が上がるという主張の裏付けとして、世銀の「フロンティアまでの距離」指標と一人当たりGDPの散布図を示していたが、そのほかに2つの論文を引いて自説を補強して…

ジョーンズの世界

昨日エントリで取り上げたジョン・コクランのエントリの4項目のうち、第3項目で紹介されたチャド・ジョーンズ(Chad Jones)ことスタンフォード大のチャールズ・ジョーンズ(Charles I. Jones)の研究を以下に紹介してみる。これは、2005年の「Growth and Id…

水準と成長率

ジョン・コクランが、経済成長を高める際に水準と成長率を区別することは言われているほど意味が無い、という論陣をブログで張っている。これは、彼の成長戦略提言(html版)に対しノアピニオン氏が、コクラン提言は成長戦略ではなく一時的な押し上げ効果に…

錨と不安

29日エントリで紹介した議論のフォローアップエントリをクルーグマンが書いている*1。そこで彼は、前のエントリで言及した“インフレ期待の「固定化」(“anchored” inflation expectations)”を取り上げ、その理論の欠点について論じている。 Now, the usual …

ドナルド・トランプはファシストだ

と題したSlate記事(原題は「Donald Trump Is a Fascist」)をJamelle Bouieが書き、ウンベルト・エーコの挙げた14のファシズムの特徴*1のうち、以下の7つが特に良く当てはまる、としている(マンキュー経由のロス・ドウザット[Ross Douthat]NYT論説経由)…

経済学者は経済を分かっていない

とニュースクールのランス・テイラーがINETのインタビューで述べている(H/T Mostly Economics)。 - I want to really start out with a basic question. Do economists understand the economy? - No. - That was really quick answer. - When you tip me …