2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

セイラーとファイナンスの出会い

一昨日のエントリの末尾で、「セイラーのRegion誌インタビューでは、まさに心理学との出会いとファイナンスの研究が彼の研究の転機になったことが語られている」と書いた。昨日は同インタビューから心理学との出会いについて語った箇所を引用したが、今日は…

セイラーと心理学の出会い

昨日のエントリの末尾で、「セイラーのRegion誌インタビューでは、まさに心理学との出会いとファイナンスの研究が彼の研究の転機になったことが語られている」と書いたが、今日は同インタビューから心理学との出会いについて語った箇所をかいつまんで引用し…

経済思想史上最大の間違い

23日エントリではファーマ対セイラーを取り上げたが、そのセイラーがミネアポリス連銀の発行するRegion誌のインタビューに登場している(H/T Conversable Economist)。そこでセイラーは、シラーの以下の言葉を引用している。 Bob Shiller has this great li…

ノーベル賞を分かち合いつつ、意見が一致しないことで意見が一致

今回ノーベル賞を受賞したロバート・シラーがNYTへの寄稿をそう題している。原題は「Sharing Nobel Honors, and Agreeing to Disagree」。 以下はその冒頭部。 The Nobel Memorial Prize in Economic Science has sometimes been awarded to economists who …

タイム誌のハンセンインタビュー

タイム誌が今年のノーベル経済学賞を受賞したハンセンのインタビューを掲載している(H/T タイラー・コーエン)。以下はその一節。 TIME: How do you explain to the lay person your contributions to economics?Hansen: I work on the boundary between ec…

悪質な経済学批判であることの18の兆候

をカナダ・ビクトリア大学のChris Auldが自ブログエントリで挙げている。以下はその18項目。 マクロ経済予測を、経済分析の主要ないし唯一の目標と見做している。 政治的な枠組みで批判する。最も一般的なのは、経済学者は市場原理主義者である、という主張…

スーツとギークの分断

アーノルド・クリングがオバマケアのシステム不具合について書いたブログエントリが話題を呼んでいるらしく、マンキューとタイラー・コーエンがリンクしている。 以下はその一節。 In response to the WaPo story, I wrote a letter to the editor, which th…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第9弾)

お互いへの言及は無いが、期せずして話のピンポンが成立しているように見える(ただしマンキューの2番目のエントリは実際にクルーグマンのエントリへの当てつけを意識しているかも)。 グレッグ君 僕のハーバードの同僚のRaj Chettyが経済学は科学だと言っ…

ファーマ対セイラー

昨日のエントリでリンクした Institutional Investor記事から、ファーマとセイラーを取り上げた箇所を引用する。 Despite their philosophical differences, Dick Thaler and Gene Fama remain close friends at the Booth School of Business. According to…

バランスとしてのウエスタン・ラリアット

一昨日のエントリでは、一部のマクロ経済学者による今回のノーベル賞受賞者の業績解釈が的外れであることを指摘したが、そうした勘違いは、一つにはマクロ経済学者の方々がファーマをはじめとする代表的なファイナンス学者の以下の特質をあまり理解していな…

ファーマ「価格変化がランダムであることと市場効率性が等価だと皆が思っていた時期も昔はありました」

昨日のエントリでリンクしたRobert Littermanによるファーマインタビューから、ファーマが市場の効率性と株価の予測可能性について語った部分を引用しておく*1。 Market efficiency says that prices reflect all available information and thus provide ac…

ノーベル賞受賞研究におけるファーマとシラーの対立点

は存在しない、前者は短期における市場の効率性の成立、後者は長期におけるその不成立ということで話を棲み分けているのだから、という趣旨の議論を両者がノーベル賞を受賞した後に複数の箇所で目にしたが(例:ここ、ここ)、これはある意味ファーマを非常…

ミクロ的基礎付けの無い研究は学界から排除されているのか?

という点についてサイモン・レン−ルイスとDavid Andolfattoが軽く論争している。レン−ルイスは排除されていると言い、Andolfattoはそんなことはない、と言う。以下はAndolfattoの自ブログでのレン−ルイスへの反論の一節。 ...Simon Wren-Lewis complains (ag…

政治家がスポーツのビッグイベントを招致したがるわけ

について研究した論文をEconomic Logicが紹介している。論文の原題は「The bidding paradox: why economists, consultants and politicians disagree on the economic effects of mega sports events but might agree on their attractiveness」で、著者はユ…

安倍晋三の大冒険

アイケングリーンがミルケン研究所の発行するMilken Institute Reviewの最新号で「Japan rising? Shinzo Abe’s Excellent Adventure」と題した小論を寄稿し*1、日本の経済政策の現状と課題について書いている(H/T Economist's View)。 その中で、第三の矢…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第8弾)

両者が直接対決したわけではないが、一応拾っておきます。 グレッグ君 ニーアル・ファーガソンがポール君に挑んでいるね:その1、その2、その3。 ポール君 トロール(ネット荒らし)に餌をやるつもりはない:最近、僕に向けられたある暴言にいつ応えるつ…

灰とダイヤモンド

ラインハート=ロゴフの誤りを指摘した論文の著者の一人Michael Ashについて、かつて自分が書いた論文も彼(とDean Robinson)から批判されたが、その批判は実体の無いものだった、とプリンストン大学教授Angus DeatonがEconbrowserのゲストポストで書いてい…

オバマケアと財政・ある例え話

一昨日のエントリで、Charles Blahousのメディケアに関する「勘違い」をケビン・ドラムが分かり易い比喩で指摘している、と書いた。今日はその例え話を紹介してみる。 ある父親と息子の家庭。父親は政治ブログという仕事で月に100ドル稼いでいる。息子はレモ…

オバマケアと財政・続き

昨日紹介したCharles Blahousのオバマケア財政分析記事から、メディケア支出削減問題以外の指摘を紹介してみる*1。 10年間で700億ドルの収益源となるはずだったCLASS(Community Living Assistance Services and Supports)(cf. 2011/1/21付け本ブログ記事…

オバマケアと財政

マンキューがCharles Blahous*1によるオバマケアの財政分析を「Not a pretty picture」としてリンクしている。オバマケアの財政への影響については、本ブログでも一昨年の1/21エントリで2010/3/20付けのCBO試算を紹介した。Blahous記事がリンクした今年3月の…

私がオックスフォードで学んだこと

と題してクリス・ディローが、およそ30年前に学んだことで今も有用だと考える点として以下の6項目を挙げている。 経済学はメカニズムの研究であり、モデルの研究ではない。問題は、どういったメカニズムでXがYに影響するかだ。それは時と場所によって異なる…

水曜道化ショー・続き

昨日紹介したライアン・アベントの論説を、かつての同僚であるMatthew C. Klein*1が「FRBは道化ショーではない(The Fed Is Not a Clown Show)」と題したブルームバーグ論説で批判している。曰く: Avent, however, seems to think it is inappropriate for…

水曜道化ショー

少し前のエントリで「FRBがとんだ道化を演じた可能性」について言及したが、ライアン・アベントが「A Federal Reserve clown show」というそのものずばりのタイトルの記事をFree Exchangeに書いている(H/T 本石町日記さんツイート*1)。小生は前述のエント…

最低賃金と雇用成長

アマースト大学のArindrajit Dubeが、最低賃金の10%の上昇は雇用成長率を0.5%ポイント低下させることを示したテキサスA&M大学のJonathan MeerとJeremy Westの論文「Effects of the Minimum Wage on Employment Dynamics」に反論し、その反論論文を自ブログで…

今年追加された雇用の96%がパートタイム

というブログ記事を先月初めにマンキューが紹介したが、最近Economist's ViewのMark Thomaが、マンキューの引用した数字は間違いだ、と反論した(ただし、どこがどう間違いなのかは書いていない)。 マンキューがリンクしたのはジョン・ロット(John Lott)…

統計用語の初出一覧

を統計学者のHerbert Davidがまとめ、その論文をDave Gilesが紹介している*1。ただしDavidは、本当に初出かどうかにはあやふやさが付き纏うのが常ということで、論文のタイトルを「First (?) Occurrence of Common Terms in Mathematical Statistics」として…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第7弾)

ケネス・ロゴフのFT論説にマンキューとクルーグマンが反応したが、マンキューがリンクと紹介の一言だけにとどめたのに対し、クルーグマンが批判を加えている。 グレッグ君 英国は自国の信用状況を当然のものと考えてはならない、とケン・ロゴフが書いている…

テストステロンが男女の賃金差をもたらしているのか?

という点について調べた論文「Testosterone and the gender wage gap」をEconomic Logicが紹介している。 以下はその紹介の概要。 男女の賃金差は他の条件が等しいという形で測定されなければならない。しかし、テストステロンが労働者の生産性を向上させ、…

人口動態と長周期の資本の流れ

という論文がNBERに上がっている。原題は「Demography and Low Frequency Capital Flows」で、著者はNYUのDavid Backus、Thomas Cooleyとカリフォルニア大学デービス校のEspen Henriksen。 以下はその要旨。 We consider the causes of international capita…

インフレ目標下の為替政策

9/25エントリでは開放経済とインフレ目標の両立が困難であることを示した論文を紹介したが、こちらの論文ではインフレ目標の政策ツールとしての為替操作の可能性について分析している。論文のタイトルは「Implicit Asymmetric Exchange Rate Peg under Infla…