昨日紹介したCharles Blahousのオバマケア財政分析記事から、メディケア支出削減問題以外の指摘を紹介してみる*1。
- 10年間で700億ドルの収益源となるはずだったCLASS(Community Living Assistance Services and Supports)(cf. 2011/1/21付け本ブログ記事の2番目の表)が、財務の不健全性を理由に2011年に停止された(cf. 厚生省勧告)。
- 2012年の最高裁判決により、州のメディケイド拡張がオプションとなった。元々のアイディアは、州がメディケイドを拡充する一方で、新設の保険取引所からの購入者を連邦が補助する、というものだった。しかし州のメディケイド拡充がオプション化されたことで、貧困ラインより上の層に対してより充実した保険を提供する費用はすべて連邦政府に負わせる、というインセンティブが州サイドに生まれてしまった。
- 保険を提供しない雇用者へのペナルティは今後10年間で1400億ドルの収益をもたらすはずだったが、2014年の執行は見送られた*2。
- 同じ低所得者層が加入する保険でも、保険取引所を通じて買った保険と雇用者の提供する保険では、前者の方が連邦政府の補助が手厚い。そのため、後者の保険の加入者が前者に乗り換えるか(=加入率上昇)、もしくは、雇用者提供保険への連邦補助も手厚くするか(=費用増加)、といういずれかの結果に陥るだろう。ホワイトハウスは、そうした補助を提供する権限が無い、と労働界に伝えたものの、政治的圧力は続くだろう。
- メディケア費用を抑えるために設立が予定されている独立支払諮問機関(Independent Payment Advisory Board=IPAB)に対しても両党派からの反対が強く*3、現時点で誰かがメンバーに指名される兆しさえ無い。
- 「unearned income Medicare contribution (UIMC)」という高額所得者の不労所得を対象とした3.8%の新税は、閾値がインフレに連動していないため、75年後には8割以上の労働者が対象となる。しかしAMTの経験を考えれば、それがそのまま適用されるかは疑問。高額保険("Cadillac" health insurance plans)を対象にした新税についても同様。
- CBOの最新の長期財政見通しでは、2038年までの連邦医療費の伸びのうち35%が高齢化、40%がインフレ、26%がオバマケアによるものだとしている。別の試算では、オバマケアの導入を1年遅らせると360億ドル浮く、としている。
リベラル派はBlahous論考を攻撃する際にメディケア支出削減の二重計上問題に専ら焦点を当ててきたが、実際に費用を想定より膨らませるのは得てしてここで挙げられたような個別項目の積み重ねであることを考えると、それらの論点にもきちんと目を向ける必要があるように思われる。