2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

コースの定理のフライトコース逸脱

ロバート・バローの息子で現在NYTの「The Upshot」に記事を書いているジョシュ・バローが、このCNN日本語記事などで報じられた旅客機の座席のリクライニングを巡る乗客同士のトラブルを8/27付け記事で取り上げ、解決策としてコースの定理を持ち出した。その…

群盲長期停滞を撫づ

Timothy Taylorが、Coen TeulingsとRichard Baldwinがまとめた長期停滞に関する13の小論集を取り上げ、そのうちの7つ*1の小論から以下の文章を抜粋している。 Larry Summers: "This chapter explains why a decline in the full-employment real interest ra…

影の金利が示さないもの

影の金利に関する論文をもう一丁。以下はNeville R. Francis(ノースカロライナ大)、Laura E. Jackson(同)、Michael T. Owyang(セントルイス連銀)による「How Has Empirical Monetary Policy Analysis Changed After the Financial Crisis?」というセ…

影の金利が示すもの

以前、影の金利に関するSF連銀論文を紹介したが、今度はBISから影の金利に関する論文が出ている。論文のタイトルは「A shadow policy rate to calibrate US monetary policy at the zero lower bound」で、著者はMarco LombardiとFeng Zhu。 以下はその要旨…

財政当局は責任をもって無責任になることを約束すべし

クリストファー・シムズが、ドイツのリンダウで開かれたノーベル賞学者らを集めた会合で、物価の先行きに関しFTPL的な見解を示してマネタリストを腐したらしい。本石町日記さんがツイートしたこちらのガーディアン記事のほか、こちらのCentral Banking.comの…

引き裂かれたカーテン

旧東独地域の消費に西側メディアが与えた影響を調べたNBER論文が上がっている(ungated版)。論文のタイトルは「A Tear in the Iron Curtain: The Impact of Western Television on Consumption Behavior」で、著者はLeonardo Bursztyn(UCLA)、Davide Cant…

ヘリコプターマネーは常に効く

Willem Buiterが「The Simple Analytics of Helicopter Money: Why It Works — Always」という論文を書いている(FT Alphaville経由のEconomist's View経由)。 以下はその要旨。 The author provides a rigorous analysis of Milton Friedman’s parable of …

米国の株価は高過ぎるのか?

シラーがPER(正確にはシラー流のPERであるCAPE=Cyclically Adjusted Price Earning Ratio)が25倍に達したことを以って、米株価が高過ぎる、とNYTで論じた。本来のPERの水準は15倍程度であり、過去の経験からして25倍に達するとその後の株価は低迷するとい…

米国の雇用回復は何合目なのか?

デロングが雇用指標について自らの戸惑いを示したエントリを上げている(cf. 元エントリ;H/T Economist's View)。 そこで彼は、CEAの面々によるvoxeu記事*1を紹介しているが、同記事では現在の雇用状況について、失業率は危機前の平均まで83%を戻している…

様々なマクロ経済学の世迷言に騙されないための素朴なケインズ経済学

というエントリをデロングが書いている(原題は「Naive Keynesianism to Keep You from Believing Macroeconomic Idiocy of Various Kinds: A Useful Graph for Jackson Hole Weekend: Thursday Focus for August 21, 2014」)。そこでデロングは、輸出、企…

法人税率が債務比率を決める

という企業理論で言われていることを実際に実証したNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「Corporate Taxes and Capital Structure: A Long-Term Historical Perspective」で、著者はFrancis A. Longstaff(UCLA)、Ilya A. Strebulaev(スタンフォード…

なぜ中銀は予測にモデルを使うのか?

というエントリをサイモン・レン−ルイスが立てている。これは予測に関するシリーズエントリの三番目となっており、前半部分で一番目*1と二番目のエントリについて以下のように概括している。 一番目のエントリ このエントリは、モデルに基づく予測に判断を加…

財政均衡原理主義

と題されたエントリ(原題は「Balanced-budget fundamentalism」)をサイモン・レン−ルイスが書いている(H/T Economist's View)。以下はその冒頭部。 Europeans, and particularly the European elite, find popular attitudes to science among many acro…

ゴキブリ、あるいはAK47としてのロシア経済

ジャスティン・フォックスがブルッキングス研究所の論説(著者はClifford G. Gaddy、Barry W. Ickes)から面白い一節を引用している。 Were it not so likely to be considered disrespectful, we might describe Russia as the cockroach of economies — pr…

財政政策は糊塗策なのか?

今月初め、市場マネタリストとサイモン・レン−ルイスの「論争」のデロングによるまとめを紹介したが、その続きとでも言うべきエントリをデロングが書いている。そこではNick Roweとレン−ルイスのブログ記事が紹介されており、エントリのタイトルは「Simon Wr…

データマイニングが有用な時

データマイニングは、最も当てはまりの良い回帰式を恣意的に拾い上げる慣行につながるという点で経済学では評判が悪いが、正しく使えば有用、とオックスフォード大の2人の研究者(Jennifer L. Castle、David F. Hendry)がこちらのvoxeu記事に書いている(H/…

外貨準備の多様化と「法外な特権」

という論文をイタリア銀行の3人の研究者が書いている。論文の原題は「Foreign exchange reserve diversification and the “exorbitant privilege”」で、著者はPietro Cova、Patrizio Pagano、Massimiliano Pisani。以下はその要旨。 We assess the global ma…

ジェーン・オースティンの小説世界が再来する条件

かねてからブログでピケティ批判を展開しているマンキューが、シカゴ大のEric Posner(Wikipediaによるとリチャード・ポズナーの息子)とGlen Weyl(現在シカゴ大からマイクロソフトに出向中との由)のTNR論説「Thomas Piketty Is Wrong: America Will Never…

予測とストーリーテリング

についてCarola Binderが昨年の初めに以下のようなことを書いていた(Economist's View経由のサイモン・レン−ルイス経由)。 Near the end of President Obama's first term, he commented that "When I think about what we've done well and what we haven…

波乱の時代の矛盾

Economist's Viewがバリー・リソルツの8/11付けブルームバーグ論説を引用している。 On this day in 1987, Alan Greenspan became chairman of the Federal Reserve Board. This anniversary allows us to take a quick look at what followed over the next…

巨大油田の発見は国内の武力紛争の火種となるか?

少し前に、石油資源が見つかったら、という仮想的な状況を扱った研究を紹介したが、実際に石油資源が見つかった国についての実証研究がJournal of Development Economicsの9月号に掲載されている(H/T UDADISI)。論文のタイトルは「Do giant oilfield disco…

サンノゼのプログラマーの年収が高い理由

についてブルッキングス研究所のJonathan Rothwellが、2013年の求人広告を分析した結果として、以下のように報告している(H/T Mostly Ecoomics)。 Software application developers earn large salaries in the United States, $96,260 a year on average.…

日銀預け金はどこから振り向けられたのか?

齊藤誠氏の東洋経済論説に高橋洋一氏が夕刊フジの論説で噛みついた。一方、齊藤氏は、高橋氏への直接の反論は避けつつも、自HP上のメモという形で自らの考え方の背景を説明している。 齊藤氏は、13年度の異次元緩和による銀行の日銀預け金の増加が、同期間の…

いかにしてOMTは1ユーロも使わずにスプレッドを低下させたか

と題したエントリ(原題は「How OMT reduced spreads without a single Euro spent..」)で、Mostly EconomicsがWSJブログ経由でECB論文「The Financial and Macroeconomic Effects of the OMT Announcements」を紹介している。論文の著者はCarlo Altavilla…

政府統計が捻じ曲げられる時

Center for Global Developmentという非営利のシンクタンクの2人の研究者(Justin Sandefur、Amanda Glassman)が、「The Political Economy of Bad Data: Evidence from African Survey & Administrative Statistics」という論文を書いている(H/T Mostly E…

GMM.com

Francis Dieboldが1年ほど前のブログエントリで、欧州の別々の三人の計量経済学者がそれぞれ別々の機会にGMM(generalized method of moments=一般化積率(モーメント)法)を「奇妙な米国の推定量(strange American estimator)」と呼んだことを報告して…

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第12弾)

マンキューが、クルーグマンの7/31付けNYT論説を非難したコトリコフのフォーブス論説を材料に、クルーグマンのネットや論説での態度を改めて攻撃した。クルーグマンはマンキューには直接反応しなかったものの、コトリコフ論説には反応した。 グレッグ君 ラリ…

前期比年率と前年同期比の違い

池田信夫氏が8/2ブログエントリで、前回消費増税時と今回消費増税時の実質GDP成長率の推移比較として以下のグラフを提示している。このうち今回の2014/4-6月期はロイターの予想集計の前期比年率マイナス7.1%を用いているが、実績部分は前年同期比を用いてい…

FRBの何が問題か?

昨年の10月にFrancis DieboldがFRBの研究部門の弱体化に懸念を表明している(H/T unrepresentative agentさん)。 エントリでDieboldがこの問題の主要ソースとしているのは、FRB職員の意識調査の結果について報じたハッフィントン記事であるが、同記事は専ら…

マネタリスト/ケインジアン/ミンスキー的な需要不足とその対策

市場マネタリストのデビッド・ベックワース、Nick Roweと、財政出動派のサイモン・レン−ルイスとの間に成立した合意について、デロングがいちゃもんを付けている。デロングによれば、その合意は 中銀が債券を購入して貨幣を人々のポケットに捻じ込み、モノを…