財政当局は責任をもって無責任になることを約束すべし

クリストファー・シムズが、ドイツのリンダウで開かれたノーベル賞学者らを集めた会合で、物価の先行きに関しFTPL的な見解を示してマネタリストを腐したらしい。本石町日記さんツイートしたこちらのガーディアン記事のほか、こちらのCentral Banking.comの記事でも紹介されている。

  • かつてないほど金利が低くなっても持続する低インフレを脱却するためには、財政当局が、将来の緊縮策で相殺されることがないことを信頼できる形でコミットした拡張政策を採る必要がある。
  • 物価はもはやMV=PYでは決まらない。低金利の現状では、金利の付かないMと金利のつく政府債務との区別は意味が無くなった。
  • 物価を決めるのは、政府債務の市場価値と、プライマリーバランスの黒字の割引現在価値の関係。
    • もし、財政当局は現在の債務を将来のプライマリーバランスの黒字で裏付ける気が無い、と一般市民が確信したならば、中銀は貨幣の伸び率を一定に保つことができないし、中銀が金利を引き上げてもインフレ率は低下しない。金利の上昇によって(プライマリーバランスでない)通常の財政収支が悪化し、債務がさらに積み上がるため、金利引き上げはデフレ的ではなくインフレ的となる。
    • もし、財政赤字が将来の財政緊縮につながると一般市民が捉えたならば、その財政赤字はデフレ的となる。
      • 米国の一般市民は社会保障は自分の老後の支えにならないと考え、退職者の56%は給付がカットされるものと考えている。彼らは、数十年以内に緊縮策が発動されるものと考えている。
  • 米国は、単一の財政当局によって必要な財政拡張策を打てる状況にある。ユーロ圏はそれができないので、低インフレとゼロ金利下限における金融政策という状況がかなり長い期間続く可能性がある。