2013-01-01から1年間の記事一覧

2014年の三大マクロ経済問題

についてGavyn Daviesが書いている。このうちの少なくとも一つは2014年以降の重大なマクロ経済問題になるだろう、と彼は予言している。 FRBはいつ米国の供給制約を気にするようになるか? これまでの主要な懸念は、GDPの1.5%に相当する2013年の財政緊縮を受…

AS-ADで見るデフレの罠

EconospeakでKevin Quinnが、ゼロ金利下限の存在下でフィッシャー則と金融政策ルールとの相互作用により発生する二点均衡を、AD-ASの枠組みで描写することを試みている。本ブログのここで紹介した研究をはじめとするこのテーマに関する分析では、横軸をイン…

景気循環の非対称性を生み出すもの

昨日紹介したAntonio Fatásの考察の第一項(=景気循環の非対称性)に対し、クルーグマンに続きDavid Andolfattoも自ブログでコメントしている。 AndolfattoはまずFatásの考察を6点に切り分け、それぞれについて自分が賛成か否かを述べている。 景気循環は対…

マクロ経済モデルに欠けている4つの要素

26日エントリで紹介したデロングやクルーグマンの論考や、21日エントリで紹介したミクロ的基礎付けを巡る論争をきっかけに、Antonio Fatásが主流派マクロ経済モデルに備えて欲しいと彼が考える4つの特性を挙げている。 景気循環は対称的ではない 多くのマク…

ネオコンとしてのニューケインジアン

昨日エントリでは、デロングがまとめたニューケインジアンの5つのテーゼとそれに対するクルーグマンの論考を紹介したが、同じブログ記事でデロングは、そのテーゼが生成されるに至った歴史的背景に触れている。 デロングは1965-1975年のケインジアンをケイン…

ニューケインジアンの5つのテーゼ

をデロングが2000年の自論文から引く形で挙げ、その各々にクルーグマンが自ブログでコメントを付けている。クルーグマンに言わせれば、60年代や70年代のケインジアンが同意しなかったこれらのテーゼは、ブランシャール、サマーズ、イエレンといった今の著名…

若きスタンリー・フィッシャーとケインズ反革命

というEconomix記事――書いたのはBinyamin Applebaumで、原題は「Young Stanley Fischer and the Keynesian Counterrevolution」――の冒頭で、スタンリー・フィッシャーの功績が次のように書かれている(H/T デロング)。 Stanley Fischer, who may join Janet…

好きなミクロ的基礎付けと解けるミクロ的基礎付け

今日は、21日エントリで触れた各人のミクロ的基礎付けに関する議論のうち、Nick Roweのものを紹介してみる。 そのエントリで彼は、ミクロ的基礎付けの例としてカルボプライシングモデルを挙げ、本当はそれからランダム性を無くした方がミクロやマクロのデー…

目標を見失ったニューケインジアン

昨日紹介したGlasnerは、エントリ中でマイケル・ウッドフォードを引用し、複数均衡の可能性を無視している、と批判した。一方、Glasnerを引用したデロングは、ウッドフォードを別の観点から批判している。彼は、GlasnerのほかMark Thomaの主張――モデルも地図…

マクロ経済学の還元主義

昨日エントリではTony Yatesとサイモン・レン−ルイスのミクロ的基礎付けを巡る論争を紹介したが、ここで紹介したように、レン−ルイスは2ヶ月ほど前にもミクロ的基礎付けについてブログで論じている。そのレン−ルイスの議論を受けて、David Glasnerも10/25エ…

ミクロ的基礎付けを持つモデルと持たないモデル

エコノブロゴスフィアでミクロ的基礎付けに関する論争が起きている。最初はツイッター上の論争だったようだが、当事者の一人であるTony Yates(BOE出身で現在はブリストル大学勤務)が「Why microfoundations have merit」と題したブログ記事を上げ、アダム…

なぜ利益率の反転上昇が投資に結び付かないのか?

昨日紹介したPiketty論考を基に、クリス・ディローが資本利益率と投資の関係について考察している。以下はその概要。 資本へのリターンが高いために富の集中が生じるというPiketty理論は、利益率が低下していくというマルクス主義への反証になっている、とTi…

長期における格差と資本主義

昨日Piketty=Saezの資本課税の論文を紹介したが、著者の一人であるPikettyが、来年3月に出版される自著「Capital in the Twenty-First Century」*1の紹介という形で資本と格差についてヘルシンキで講演したという。タイラー・コーエンがその近刊はとても重…

資本と富への課税再考

昨日エントリで紹介したマンキューブログではThomas PikettyとEmmanuel Saezが軽くdisられていたが、Owen Zidarがその2人の論文(WP)「Rethinking capital and wealth taxation」の要旨を紹介している(H/T Economist's View)。 This paper reviews recent…

中流家庭の所得は停滞していない

マンキューが16日エントリでそう書いている。以下はその概要。 1979年から2007年に掛けて、課税前、所得移転前の課税単位の現金収入の中位値は3.2%しか上昇しなかった。これが中流家庭の所得の停滞の証とされている。しかし… 課税単位より重要なのは家計。夫…

神の不在に気付いた司祭

シラーがファーマのことをそう評した、とガーディアン紙が伝えている(H/T タイラー・コーエン)。ソースはスウェーデン公共テレビ局SVTのシラーインタビュー。以下は同記事が引用するシラーの発言。 "[Fama] is a careful researcher, an inspired research…

自然利子率を成長率の枠組みで捉え直してみると

Andy Harlessがおよそ5ヶ月ぶりにブログポストを上げ、概ね以下のようなことを書いている。 市場マネタリストによれば、自然利子率は期待実質成長率に依存し、期待実質成長率は金融政策に影響を受ける(cf. ここ)。従って、現実の金利を自然利子率に一致さ…

量的緩和がデフレ的になる時

先日紹介した量的緩和がデフレ的になるというWilliamsonの論考を受け、FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが、自分も似たようなことを以前から考えていた、ただしメカニズムはWilliamsonとは少し違うが、と書いた。これをNick RoweがWilliamsonの論考と合…

汽水域としてのファイナンス

ノアピニオン氏が直近エントリでAli Sina Önder(バイロイト大学)とMarko Terviö(アールト大学)の論文「Is Economics a House Divided? Analysis of Citation Networks」を取り上げている。 以下は論文の要旨。 We investigate divisions within the cita…

最低賃金やEITCより賃金助成が望ましい?

最低賃金ネタをもう一つ。ノアピニオン氏が最低賃金やEITCより賃金助成が望ましい、と12/7エントリで主張している。氏の主張は概ね以下の通り。 経済学的にはEITCが最低賃金より望ましい。 失業の問題や、単に高校生の手取りを増やすだけに終わるという問題…

最低賃金では低所得家庭は救えない?

ここで紹介した12/3エントリでマンキューはDavid Neumarkカリフォルニア大学アーバイン校教授らの最低賃金に関する研究を取り上げていたが、12/10エントリで今度はNeumarkのEconomix記事を取り上げた。 以下は同エントリでマンキューが引用した図。この図に…

ナチスの台頭とラジオの関係

について調べた論文をUDADISIが紹介している。論文のタイトルは「Radio and the rise of the Nazis in prewar Germany」で、著者はMaja Adena(ベルリン社会科学研究センター)、Ruben Enikolopov(プリンストン高等研究所、ニュー・エコノミック・スクール…

流動性プレミアムが高まるとインフレが高まる?・その3

2日エントリでは、表題のWilliamsonの主張への疑問として「流動性プレミアムが高まれば貨幣ないし安全資産への志向が高まり、それらの価値が高まるはず」と書いたが、David Glasnerが同様の指摘を行い、タイラー・コーエンが良い指摘、と褒めている。 Willia…

マンキュー対オバマ大統領

マンキューブログからネタをもう一丁。かつてのクルーグマンのブッシュ批判を真似たわけでもなかろうが、最近マンキューはオバマの“食言”批判を強めている。 12/5エントリでマンキューは、前日のスピーチでオバマが「最低賃金の引き上げが職を犠牲にするとい…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第11弾)・補足

12/5に紹介したマンキューのクルーグマン批判エントリの追記で、「最低賃金の不公平性に関するエントリで再読の価値あり」というコメントを添えてスティーブン・ランズバーグの今年2/18エントリがリンクされていた。 リンク先のエントリでランズバーグは、Da…

マンキュー対ローマ法王

マンキューがWaPoで報じられたローマ法王の以下の言葉*1に反応している。 “Some people continue to defend trickle-down theories which assume that economic growth, encouraged by a free market, will inevitably succeed in bringing about greater ju…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第11弾)

前回はクルーグマンがマンキューのNYT論説に正面から反応したが、今回はマンキューがクルーグマンのNYT論説(邦訳)に正面から反応した。 グレッグ君 今日のNYT論説でポール君は最低賃金引き上げを支持する論陣を張り、雇用への負の影響は大したことは無いと…

流動性プレミアムが高まるとインフレが高まる?・続き

12/2エントリで紹介した議論について、Stephen Williamsonが自らの主張を数学を一切使わずに説明するエントリを上げた。以下はそこからの引用。 Next, conduct a thought experiment. What happens if there is an increase in the aggregate stock of liqui…

南北イタリア分断の淵源

に関して研究した論文をUDADISIが紹介している。論文のタイトルは「Cooperation Hidden Frontiers: The Behavioral Foundations of the Italian North-South Divide」で、著者はMaria Bigoni、Stefania Bortolotti、Marco Casariz(以上、ボローニャ大学)、…

流動性プレミアムが高まるとインフレが高まる?

Stephen Williamsonの11/27エントリを巡ってエコノブロゴスフィアが一騒動になっている(Rowe、デロング、クルーグマン[ここ、ここ*1]による批判、それに対するノアピニオン氏、Andolfattoによる逆批判、AndolfattoへのRoweの反論、Williamson自身の再論*2…