についてGavyn Daviesが書いている。このうちの少なくとも一つは2014年以降の重大なマクロ経済問題になるだろう、と彼は予言している。
- FRBはいつ米国の供給制約を気にするようになるか?
- これまでの主要な懸念は、GDPの1.5%に相当する2013年の財政緊縮を受けた需要不足問題だった。しかし2014年にはその値が0.4%にまで縮小する半面、GDP成長率は3%を超えるとされている。その成長率はCBOの推計する潜在成長率2%を大きく上回っている。
- 多くの経済学者は、失業者の早期引退や低調な設備投資といった景気後退の副作用によって、潜在生産力は少なくとも一時的には低下したと考えている。実際、総需要と総供給の区別は曖昧になってきている。
- クルーグマンのようなケインジアンは、総需要と総供給の区別は今も重要であり、潜在生産力は今後大きく高まる、と主張する。
- CBOの推計によれば、潜在GDPは実際のGDPより6%高い。このことは、短期金利の最初の引き上げを、FOMCの大多数が想定している2015年より遅らせることができることを意味している。先進国の低水準でさらに低下しつつあるインフレ率もその支援材料となる。
- だが、労働参加率、ひいては潜在供給力が景気後退によって恒久的な損傷を受けたのではないか、という疑念がFRBの意外なところでも広まりつつある*1。また、失業率は2014年が終わるかなり前に6.5%を切るだろう。
- 問題の要点:ジャネット・イエレン率いるFRBは、最初の利上げを2015年末より後まで遅らせたいと思うだろうか? そして、金融市場が早期の利上げを価格に織り込もうとする時、2013年夏の時のように、それと闘おうとするだろうか? Davies自身は答えは共に“yes”だと考えているが、2014年が終わるまでには幾つかの小競り合いがあるだろう。実際のところ、最初の小競り合いは既に始まっているのかもしれない。
- 中国は過剰な信用の膨張を押さえ込むか?
- 中国の長期的成長率がかつての年率10%超から落ちたことには皆が同意している。しかし、今後については楽観論と悲観論に見方が分かれている。
- 楽観論は、これまで数十年に亘って資本投資に注力してきたのは正しい戦略であり、今後も成功戦略であり続けるだろう、というものである。2010年から2020年に掛けて実質GDPを倍増させるという公式目標を達成するためには、残りの期間の成長率は年率6.9%で良く、それは経済を消費寄りにリバランスしながらも達成することが十分に可能である。それは、信用バブルからの極めて穏当なソフトランディングを意味する。
- 悲観論は、信用バブルからの脱却に伴い、良くて5%台の成長という時期が長く続くだろう、というものである。当局が信用の膨張を押さえ込もうとする度に、GDP成長率を受け入れ可能な水準に維持するためにそれを緩和しなくてはならない、ということが繰り返されてきた。このことは、市場に金利を決めさせるという当局の目標と、ハードランディング抜きで信用バブルを押さえ込むというもう一つの目標の間には、衝突があることを示唆している。
- 今のところ信用伸び率が名目GDP成長率より下がったという兆候は見られず、住宅や土地の価格のバブル的な伸びは未だに加速している。これまでは楽観陣営の方が正しかったし、中国のユニークな特性を考えると、時間を掛けたソフトランディングの可能性が最も高いように思われる。しかし押さえ込みに時間が掛かれば掛かるほど、ハードランディングの可能性も高くなる。
- ECBはゼロ金利下限に直面するか?
- 長期停滞と呼ぶにせよ日本化と呼ぶにせよ、ユーロ圏は低成長と目標を下回るインフレ率に依然として足を取られており、最近の為替の増価は事態を悪化させている。
- 今週ドラギは、インフレ率が1%以下に恒久的に落ち込まないように注意しなくてはならない、と述べたが、この発言は「2%以下で2%近傍」というECBのインフレ目標と完全に整合的とは言えまい。
- 一方、独連邦銀行は、ユーロ圏でのデフレの危険性をきっぱりと否定する論文を出した。また、経済に問題を抱えた国で労働コスト単価が低下しているのは、通貨圏の中で必要な内的調整が行われているという歓迎すべき兆候、とも述べた。ユーロ圏経済の回復が続くならば、市場もこの論理を受け入れるだろう。世界経済の成長が高まるならば、そうなる可能性は高い。
- だが、為替がこれ以上増価すると、ECBも遂にはゼロ金利下限に直面する羽目に追い込まれるかもしれない。ドラギは、そうなった場合に必要となる政治的に上手く立ち回る能力を自身が備えていることを、これまで何度か示してきた。しかし、現段階での予防的な引き下げはできそうにない。理事会の総意を得るためには、市場危機が必要になるかもしれない。
ちなみにDavies自身は、この中で中国問題を最も懸念しているとの由。
*1:ここでDaviesはDave Altigにブログ記事にリンクしている。