社会

非近代化:権力・文化の軌道と政治制度の動学

というNBER論文でアセモグル=ロビンソンが、経済発展が民主主義につながるという近代化論(modernization theory)が何を見誤っていたか、について論じている(ungated版)。原題は「Non-Modernization: Power-Culture Trajectories and the Dynamics of Po…

誤情報:戦略的共有、類友、内生的なエコーチェンバー

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「Misinformation: Strategic Sharing, Homophily, and Endogenous Echo Chambers」で、著者はDaron Acemoglu、Asuman Ozdaglar、James Siderius(いずれもMIT)。 以下はその要旨。 We prese…

ワクチンは銀の弾丸ではない?

少し前に、コロナ禍対策でのワクチン頼みの是非や、ワクチン接種が進む中で改めて検査を拡充する必要性の有無が議論になったが、欧米ではその点の議論はどのようになっているのだろう、と少しぐぐってみたところ、幾つか記事が引っ掛かったので簡単に紹介し…

第二次世界大戦からコロナ禍までの危機のイノベーション政策

というNBER論文が上がっている。原題は「Crisis Innovation Policy from World War II to COVID-19」で、著者はDaniel P. Gross(デューク大)、Bhaven N. Sampat(コロンビア大)。 以下はその要旨。 Innovation policy can be a crucial component of gove…

技術革新が道を踏み外す時:技術退歩とオピオイド禍

エドワード・グレイザーの5月のNBER論文をもう一丁。以下はDavid M. Cutler、Edward L. Glaeser(いずれもハーバード大)による表題の論文(原題は「When Innovation Goes Wrong: Technological Regress and the Opioid Epidemic」)の要旨。 The fivefold …

ジェントリフィケーションと近隣の変貌:Yelpによる実証結果

エドワード・グレイザーの昨年末のNBER論文をもう一丁。以下はEdward L. Glaeser、Michael Luca、Erica Moszkowski(いずれもハーバード大)による表題の論文(ungated版、原題は「Gentrification and Neighborhood Change: Evidence from Yelp」)の要旨。 …

文化、制度、社会的均衡:ある枠組み

というNBER論文(原題は「Culture, Institutions and Social Equilibria: A Framework」)をアセモグル=ロビンソンが上げている(ungated版)。以下はその要旨。 This paper proposes a new framework for studying the interplay between culture and inst…

致死的な差別:職場の安全にとって「消失女人」が持つ意味

というNBER論文が上がっている。原題は「Deadly Discrimination: Implications of "Missing Girls" for Workplace Safety」で、著者はZhibo Tan,(IMF)、Shang-Jin Wei(コロンビア大)、Xiaobo Zhang(北京大)。 以下はその要旨。 We examine an indirect…

危険な哲学者・再訪・補足

前回エントリで引用したシンガーインタビューで言及されていた「飢えと豊かさと道徳」の原論文「Famine, Affluence, and Morality」がネットで読めることに気づいたので、インタビューでシンガーが「これ以上施したら当該の人物に恩恵を与えるのと同じくらい…

危険な哲学者・再訪

5年近く前に本ブログでピーター・シンガーを取り上げた1999年のニューヨーカー記事を紹介したことがあったが、同誌の別の記者(Daniel A. Gross)がシンガーにインタビューし、最後に当時の記事の取り上げ方について訊いている(H/T タイラー・コーエン)。 …

銃撃事件が子供たちに残す後遺症

について調べた2本の論文が今月初めにNBERに同時に上がっている。一つはMostly Economicsやタイラー・コーエンも紹介しているウトヤ島事件を扱った「Surviving a Mass Shooting」で、著者はPrashant Bharadwaj(UCサンディエゴ)、Manudeep Bhuller(オスロ…

カズオ・イシグロのキャンセル・カルチャー批判

御田寺圭(白饅頭)氏の現代ビジネス記事が物議を醸している。同記事で白饅頭氏は、「リベラルは多様性を反映することを心掛けるべき」という趣旨のカズオ・イシグロの言を冒頭で引用した上で、リベラルにおける画一的な価値観への同調圧力を槍玉に挙げた。…

炭素の社会的費用、リスク、分配、市場の失敗:代替手法

というNBER論文をニコラス・スターン(Nicholas Stern、LSE)とジョセフ・スティグリッツ(Joseph E. Stiglitz、コロンビア大)という2人の大物経済学者が上げている。原題は「The Social Cost of Carbon, Risk, Distribution, Market Failures: An Alternat…

政治的分極化と予想された経済の帰結

Olivier Coibion(テキサス大オースティン校)、Yuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Michael Weber(シカゴ大)のNBER論文をもう一丁。以下は昨年の大統領選投票日前に出された表題のNBER論文(原題は「Political Polarization and Expected Economic Out…

政治的暴力、リスク回避、および非局地的な感染拡大:米議事堂暴動の実証研究

何かイベントがあるとそのCOVID-19感染への影響をNBER論文に上げている研究者のグループ*1が、今度は1/6の議事堂占拠事件を取り上げた。以下はDhaval M. Dave(ベントレー大)、Drew McNichols(UCサンディエゴ)、Joseph J. Sabia(サンディエゴ州立大)に…

Whataboutismが有用な時

近年、Whataboutismという用語が人口に膾炙したが、誤用ないし濫用による弊害も目立ってきたように思われる。そこで、ここでは敢えて、WikipediaのWhataboutismの説明と、redditの哲学論のエントリから、Whataboutism擁護論を引用してみる。 Whataboutism - …

メルケルはトランプのtwitterアカウント停止について何と言ったのか?

という点が最近ツイッター界隈で議論になったが、ドイツ政府のホームページに当該の報道官の会見のトランスクリプトが上がっていることに気づいたので、以下に該当箇所の原文、そのグーグル英訳、さらにその拙訳を掲げてみる。 (原文) Frage: Herr Seibert…

判事の定年制による米国の州最高裁のパフォーマンスの改善

というNBER論文が上がっている(7月時点のWP、H/T Mostly Economics)。原題は「Mandatory Retirement for Judges Improved Performance on U.S. State Supreme Courts」で、著者はElliott Ash(チューリッヒ工科大学)、W. Bentley MacLeod(コロンビア大)…

誰をパンデミック中に在宅勤務にすべきか? 賃金と感染のトレードオフ

というNBER論文が上がっている。原題は「Who Should Work from Home during a Pandemic? The Wage-Infection Trade-off」で、著者はSangmin Aum(明知大学校)、Sang Yoon (Tim) Lee(ロンドン大学クイーン・メアリー校)、Yongseok Shin(セントルイス・ワ…

COVID-19以前のスウェーデンで特に多かった脆弱な人々――「乾いた薪」

ここで紹介した「乾いた薪」仮説をさらに検証した表題のSSRN論文にタイラー・コーエンがリンクしている。論文の原題は「Exceptionally many vulnerable – “dry tinder” – in Sweden prior to COVID-19」で、著者はJonas Herby(CEPOS*1)。 以下はその要旨。…

戦争、社会主義、およびファシズムの勃興:実証追究

アセモグルのNBER論文をもう一丁。以下はDaron Acemoglu(MIT)、Giuseppe De Feo(レスター大)、Giacomo De Luca(ボゼン・ボルツァーノ自由大)、Gianluca Russo(ポンペウ・ファブラ大)による表題の論文(ungated版、原題は「War, Socialism and the Ri…

制度の変化と制度の持続

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「Institutional Change and Institutional Persistence」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Georgy Egorov(ノースウエスタン大)、Konstantin Sonin(シカゴ大)。 以下はその要旨。 In thi…

超感染拡大的なイベントによる感染の外部性:スタージス・モーターサイクル・ラリーとCOVID-19

こちらのエントリなどで紹介した、Covid-19のイベントスタディを精力的に行っている研究者のグループが、今回は表題のNBER論文を上げている。原題は「The Contagion Externality of a Superspreading Event: The Sturgis Motorcycle Rally and COVID-19」で…

パンデミックの訓練:ホラー好きと死や暴力ものが好きな人はCOVID-19パンデミック中に精神的により元気

という「Personality and Individual Differences」掲載予定論文をタイラー・コーエンが紹介している(7月時点の日本語紹介記事1、2、3、4)。論文の原題は「Pandemic practice: Horror fans and morbidly curious individuals are more psychologically res…

長期および短期のパンデミックの最適管理

というNBER論文が上がっている。原題は「Optimal Management of a Pandemic in the Short Run and the Long Run」で、著者はAndrew B. Abel(ペンシルベニア大)、Stavros Panageas(UCLA)。 以下はその要旨。 Social policy to limit interactions can slo…

進歩の罠

についてアセモグルが「Minding the Perils of Progress」と題したProject Syndicate論説で論じている(H/T Mostly Economics)。以下はその一節。 The improvements of the past 200 years are the fruits of industrialization, made possible by our acqu…

北欧でスウェーデンのCovid死亡率が高い16の理由候補

というSSRN論文にタイラー・コーエンがリンクしている。原題は「16 Possible Factors for Sweden’s High Covid Death Rate among the Nordics」で、著者はDaniel B. Klein(ジョージ・メイソン大)、Joakim Book(独立研究者)、Christian Bjørnskov(オーフ…

独裁者の2つのジレンマ

というProject Syndicate論説をMostly Economicsが紹介している。原題は「The Dictator’s Two Dilemmas」で、著者はコロンビア大のAndrew J. Nathan。 以下はその冒頭。 Authoritarian regimes often enjoy more public support than democratic governments…

ロックダウンなしのCOVID-19予防と大気汚染

というNBER論文が上がっている。原題は「COVID-19 Prevention and Air Pollution in the Absence of a Lockdown」で、著者はHung-Hao Chang(国立台湾大)、Chad Meyerhoefer(リーハイ大)、Feng-An Yang(国立台湾大)。 以下はその要旨。 Recent studies …

天災に対応した海外移住:現代欧州で最も破壊的な地震についての実証結果

昨日紹介した論文と天災繋がりになるが、表題のNBER論文が上がっている。原題は「International Migration Responses to Natural Disasters: Evidence from Modern Europe's Deadliest Earthquake」で、著者はYannay Spitzer(ヘブライ大)、Gaspare Tortori…