なぜ在宅勤務は国と人によって違うのか?

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Why Does Working from Home Vary Across Countries and People?」で、著者はPablo Zarate(プリンストン大)、Mathias Dolls(IFO研究所)、Steven J. Davis(スタンフォード大)、Nicholas Bloom(同*1)、Jose Maria Barrero(メキシコ自治工科大)、Cevat Giray Aksoy(欧州復興開発銀)。
以下はその要旨。

We use two surveys to assess why work from home (WFH) varies so much across countries and people. A measure of cultural individualism accounts for about one-third of the cross-country variation in WFH rates. Australia, Canada, the UK, and the US score highly on individualism and WFH rates, whereas Asian countries score low on both. Other factors such as cumulative lockdown stringency, population density, industry mix, and GDP per capita also matter, but they account for less of the variation. When looking across individual workers in the United States, we find that industry mix, population density and lockdown severity help account for current WFH rates, as does the partisan leaning of the county in which the worker resides. We conclude that multiple factors influence WFH rates, and technological feasibility is only one of them.
(拙訳)
我々は2つのサーベイを使って、国と人によって在宅勤務がこれほど違う理由を評価した。文化的な個人主義の指標が、在宅勤務率の国による違いのおよそ3分の1を説明した。オーストラリア、カナダ、英国、米国は個人主義と在宅勤務率で高い評点を示した半面、アジア各国は両方について低い評点を示した。累積的なロックダウンの厳格度、人口密度、産業構成、および一人当たりGDPといったそれ以外の指標も重要であったが、違いの説明力はより低かった。米国の個々の労働者を見てみると、産業構成、人口密度、およびロックダウンの厳しさのほか、労働者が居住する郡の党派性が現在の在宅勤務率の説明に寄与した。在宅勤務率には様々な要因が影響し、技術的可能性はその一つに過ぎない、と我々は結論する。

以下は週の在宅勤務日数を示した図。日本はギリシャと同じ0.5日で、より少ないのは韓国の0.4日だけである。

大卒に絞ると0.7日となり、大卒者の在宅勤務が全体よりむしろ低い台湾(0.7→0.6)を逆転する。

以下は個人主義と在宅勤務の相関図。日本は個人主義の指標はアルゼンチンと同程度だが、在宅勤務率は差を付けられている。一方、個人指標の指標では差があるフランスやデンマークと在宅勤務率はさほど変わらない。

以下は一人当たりGDPと性別の在宅勤務率(実際、希望)の相関図。縦軸は女性-男性なので、低いほど男性の在宅勤務が多いことを示す。一人当たりGDPが高まると差が縮まるように見えるが、回帰分析で他の要因を含めると有意ではなくなるとの由。

以下は各要因の説明力を示した図。

以下は各要因の記述統計量。注に各要因の簡単な説明がある。

以下は米国について各要因の説明力を示した図。バイデンへの投票率が上位に入っている。

*1:在宅勤務のメリット - himaginary’s diaryで紹介したように、Bloomは在宅勤務の研究を精力的に続けている。