2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

長期的な実質為替相場:バラッサ=サミュエルソン効果再考

というNBER論文が上がっている。原題は「The Real Exchange Rate in the Long Run: Balassa-Samuelson Effects Reconsidered」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)、Ehsan U. Choudhri(カールトン大)、Giorgio Fazio(ニューキャッスル大)、Ronal…

新しい古典派の革命を理解する

というブログエントリをサイモン・レン−ルイスが書き(原題は「Understanding the New Classical revolution」)、それをMark Thomaが取り上げ、さらにそれにクルーグマンが反応している。以下はレン−ルイスのエントリの概要。 以前のエントリで説明したのは…

米国のGDPの第一四半期の落ち込みは思ったほど悪くない

というブログエントリ(原題は「The First Quarter GDP Contraction was Less Severe than you Think」)をペンシルベニア大のFrancis Dieboldが書いている(H/T Economist's View)。公式数値では、年率成長率が-1%から-2.9%に下方修正されたが、Dieboldら…

ニューケインジアンモデルでの最適テイラールール

ノアピニオン氏の師でありOrderstatisticブログを運営しているミシガン大学のChristopher Houseが「Optimal Taylor Rules in New Keynesian Models」というNBER論文を書いている。共著者は同じくミシガン大学のChristoph E. Boehm。 以下はその要旨。 We ana…

再認ヒューリスティック

昨日引用したギーゲレンツァーの話に出てきた再認ヒューリスティックについてフォックスが話を振り、ギーゲレンツァーが答えている。これはこれまで引用してきたインタビュー記録の最終部分で、昨日の引用部分の続きに当たる。 The recognition heuristic is…

認知限界論者の認知限界

引き続きギーゲレンツァーのインタビューからの引用。以下は、21日エントリで紹介した箇所とは別に、改めてカーネマンを批判した部分。 The problem of the heuristics and biases people, including much of behavioral economics, is they keep the standa…

買わない客を見分ける方法

昨日に続き、ギーゲレンツァーのインタビューから、ビジネスで役立つ経験則の話を引用してみる。 The hiatus heuristic is an example: if a customer has not bought for at least nine months, classify as inactive; otherwise, active. Now, you might s…

不確実な世界ではビッグデータは役に立たない

引き続き、ギーゲレンツァーのインタビューからの引用。 Gut feelings are tools for an uncertain world. They’re not caprice. They are not a sixth sense or God’s voice. They are based on lots of experience, an unconscious form of intelligence.I…

モデルは不確実な世界では簡単化、確実な世界では複雑化すべし

昨日紹介したギーゲレンツァーのインタビューから、金融危機に関連する部分を引用してみる。 ...in the course of the financial crisis, it was said that banks play in the casino. If only that would be true — then they could calculate the risks. B…

カーネマンの退歩

ジャスティン・フォックスが、「Instinct Can Beat Analytical Thinking」と題したブログエントリで、日本でもその著書が幾つか邦訳されている*1ゲルト・ギーゲレンツァーのインタビューを紹介している。 以下はそのインタビューの中でギーゲレンツァーが、…

人によって人生の価値は違う

という点をモデル化したNBER論文が上がっている(ungated版)。論文の原題は「Heterogeneity in the Value of Life」で、著者はJoseph E. Aldy(ハーバード・ケネディスクール)、Seamus J. Smyth(カクストン・アソシエイツ)。 以下はその要旨。 We develo…

独裁者のインナーサークル

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Dictator's Inner Circle」で、著者はPatrick Francois(ブリティッシュ・コロンビア大)、Ilia Rainer(ジョージ・メイソン大)、Francesco Trebbi(ブリティッシュ・コロンビア大)。 以下はその…

ナチスを超える巨大悪組織の財務

モスル陥落の2日前に、イラク軍が、ISISの捕虜から尋問によって得た情報によってISISの司令官の一人を殺害し、160以上のフラッシュメモリを入手した、とガーディアン記事が報じている(H/T FT Alphaville)。それによって、ISISの財務状況の詳細が明らかにな…

銀行とは流動性の存する処なり

と題したNBER論文をオリバー・ハートとルイジ・ジンガレスが書いている(ungated版)。原題は「Banks Are Where The Liquidity Is」。以下はその要旨。 What is so special about banks that their demise often triggers government intervention? In this …

シリアの大統領選の数字が作られたものである証拠

今月初めのシリアの大統領選の結果の数字が切りが良すぎて、作られた数字であることを物語っている、という話題をアンドリュー・ゲルマンがWaPoのブログで取り上げている。このことはロシア人のブロガーRoman Tumaykinが最初に気付いたらしいとのことで、ゲ…

突然資源国になったらどうすべきか?

ある国で石油資源が見つかったことをエネルギー相が財務相に知らせる、という仮想的な状況を描いたエントリがIMFブログに上がっている(H/T Mostly Economics)。著者はSanjeev GuptaとEnrique Floresで、2人がAlex Segura-Ubiergoと共に書いたIMFスタッフデ…

ファイナンスと比較経済学の研究を転換させた論文

シカゴブース大学院のSteven Neil Kaplanとルイジ・ジンガレスが、同大学院の発行する「Capital Ideas」誌の春号に「How 'Law and Finance' transformed scholarship, debate」という記事を書いている(H/T Mostly Economics)。 以下はその冒頭部。 It has …

p値と信頼区間に関して繰り返し起こる論争を再訪する

という論文の要約と結論が、バージニア工科大学の統計学者Deborah G. MayoのブログError Statistics blogで紹介されている(H/T Dave Giles)。原題は「Recurring Controversies About P Values and Confidence Intervals Revisited」で、著者はMayoの同僚の…

株式リターンと金利の本質的な関係

というNBER論文(ungated版)が上がっている。原題は「On the Fundamental Relation Between Equity Returns and Interest Rates」で、著者はJaewon Choi(イリノイ大)、Matthew P. Richardson(NYU)、Robert F. Whitelaw(同)。 以下はその要旨。 This p…

600年の株式リターンで資産価格理論を検証する

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Testing Asset Pricing Theory on Six Hundred Years of Stock Returns: Prices and Dividends for the Bazacle Company from 1372 to 1946」で、著者はDavid le Bris(KEDGE ビジネススクール)、Willi…

アフリカの成長の奇跡だって?

少し前に、2011年にロドリックと共著論文を書いたMargaret S. McMillanのアフリカに対するやや楽観的な見方を示したNBER論文を紹介したが、今度はロドリックがアフリカに対するやや悲観的な見方を示したNBER論文「An African Growth Miracle?」を上げている…

統計学の百年戦争

Dave Gilesが、M. J. Bayarri(バレンシア大)とJ. O. Berger(デューク大)の「The Interplay of Bayesian and Frequentist Analysis」という2004年の論文を紹介している。 以下はその要旨。 Statistics has struggled for nearly a century over the issue…

定年を延長すると総貯蓄が減る

という考察を示したFanti論文(2012)*1を1年ほど前に取り上げたことがあったが、その際、uncorrelated氏より、論文が前提にした年金の確定拠出制度と、日本のような確定給付制度では結果が逆になる、という指摘を受けた。 ただ、最近公表された平成26年財政検…

高頻度取引の何が問題か?

少し前にマイケル・ルイスの「フラッシュ・ボーイズ」への反論を紹介したが、そのルイスのインタビュー記事がウォートンのサイトに掲載されている(H/T Mostly Economics)。インタビュアーはジェレミー・シーゲル。インタビューの中でルイスは、高頻度取引…

マクロプルーデンシャル規制は銀行の信用供与をどのように変えるか?

というNBER論文をアニール・カシャップらが書いている(ungated版)。原題は「How does macroprudential regulation change bank credit supply?」で、著者はAnil K Kashyap(シカゴ大)、Dimitrios P. Tsomocos(オックスフォード大)、Alexandros P. Vardo…

OECD諸国における大不況による長期的損失

というNBER論文をローレンス・ボールが書いている。原題は「Long-Term Damage from the Great Recession in OECD Countries」。以下はその要旨。 This paper estimates the long-term effects of the global recession of 2008-2009 on output in 23 countri…

経済学と道徳

経済学は道徳劇ではない、というのはクルーグマンが良く口にするところだが(cf. ここ、ここ)、Timothy TaylorがこのテーマについてIMFのFinance & Developmentサイトに寄稿している(H/T Mostly Economics;Taylor自身も自ブログで取り上げている)。 その…

ピサリデスとキプロス

引き続きIMFのFinance&Developmentのピサリデス記事から、今日は出身国のキプロスに纏わる2つのエピソードを紹介してみる。 まずは、キプロス紛争が彼の人生に与えた影響。 With Ph.D. in hand, Pissarides returned to Cyprus to work in the research depa…

ピサリデスの2つの貢献の政策的意義

昨日はIMFのFinance & Developmentサイトに掲載されたピサリデスの記事から彼の労働経済学への2つの貢献を紹介したが、同記事ではそれぞれの貢献から引き出された実務的ないし政策的意義についても記述されている。 まずは、マッチング関数によるベバリッジ…

ピサリデスの2つの貢献

IMFのFinance & Developmentでノーベル賞受賞経済学者のクリストファー・ピサリデスが取り上げられている(H/T マンキュー、Mostly Economics)。その中でピサリデスの2つの主要な貢献について以下のように紹介されている。 まずは、マッチング関数。 Charle…