突然資源国になったらどうすべきか?

ある国で石油資源が見つかったことをエネルギー相が財務相に知らせる、という仮想的な状況を描いたエントリがIMFブログに上がっている(H/T Mostly Economics)。著者はSanjeev GuptaとEnrique Floresで、2人がAlex Segura-Ubiergoと共に書いたIMFスタッフディスカッションノートの解説記事になっている。
記事では、資源の呪いを回避できるような堅牢な制度が確立していない国では、資源からの収入を国民に直接配ってしまえば良い、と主張するXavier Sala-i-MartinとArvind Subramanianの論文を俎上に載せている。同論文の主旨は、直接分配のメカニズムによって非効率ないし腐敗した予算制度が迂回されるほか、分配した資源からの収入が税金を通じて政府に再吸収されれば、その使い道についての政府の説明責任を求める国民の声が高まる、というものだという。これについて記事では、実際に直接分配を行っている実例はアラスカしか無く、それも堅固な予算制度と当局の監督の下での話であり、額も一人当たり所得の3〜6%に過ぎない、という点を指摘している。
その上で記事では、あれこれ調べた仮想国の顧問が財務相に上申する、という体で、Sala-i-MartinとSubramanianが推奨するような直接分配について以下の6つの考察を示している。

  1. 大規模なものにせよ小規模なものにせよ、財務省が何らかの形の直接分配を考えるならば、財政政策全体の設計という文脈の中で考える必要がある。
    • 天然資源によって賄われるにせよ別の手段によって賄われるにせよ、支出と財源確保の決定は、全体的なマクロ経済の状況に基づいてなされるべき。
  2. 意思決定の重荷を民間部門に移せば――直接分配のメカニズムではそうなるとされているわけだが――経済的な帰結が改善する、ということを支持する証拠はあまり無い。
    • 収入の変動の管理、重要な社会的サービスの即座の提供、資源がいずれ枯渇することへの対処、貯蓄と投資の世代間の問題の対応といった点について、民間部門の方が有利な立場にあるわけではない。
  3. 直接分配が公共サービスの提供を妨げる恐れもある。
    • 政府支出の現行水準に比べて資源からの収入の割合が極めて大きくなることが良くある。従って、資源のかなりの割合を民間に移行することは、道路、学校、社会サービスに回せる金が減ることを意味する。税制が弱体で、経済の非資源部門から税収を集めるのが困難な場合は猶更である。
  4. 直接分配は国家に依存する文化を創り出し、労働供給に負の影響を与えるかもしれない。
    • 先進国での勤労所得控除(EITC)や条件付き現金給付の経験からすると、現金給付の額が大きく比較的裕福な層にも及ぶとなると、そのことが問題となり得る。
  5. 直接分配のメカニズムが腐敗や政治的圧力の餌食とならない保証はない。
    • 多くの国の予算外資金の経験が示すように、予算の外にある直接分配には著しいリスクがある。
  6. 直接分配の規模が比較的小さく予算の枠組みの中に置かれるならば、直接分配が経済の中で果たす役割が存在するかもしれない。