2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

新ファーマ・パズル

というNBER論文が上がっている(ungated版、著者の一人であるメンジー・チンの昨年7月のEconbrowserエントリでの紹介)。原題は「The New Fama Puzzle」で、著者は Matthieu Bussière(フランス銀行)、Menzie D. Chinn(ウィスコンシン大)Laurent Ferrara…

20年後のIt’s Baaack・その4

昨日まで紹介してきたクルーグマンの小論では、世界の中銀でインフレ目標が2%に設定された理由として以下の2つを挙げている。 ニュージーランド中銀が2%に設定した 最初に明示的なインフレ目標を導入した中銀であったため、経済のウエイトや人口(羊を含め…

20年後のIt’s Baaack・その3

昨日エントリではクルーグマンの1998年のモデルの4つの予言を紹介したが、そのうちの財政乗数に関する4番目の予言に対しては、反ケインジアン陣営から以下の3つの反論があったという。 セーの法則を持ち出す 所得は支出されなければならないのだから、公共投…

20年後のIt’s Baaack・その2

昨日紹介したクルーグマンの小論は以下の文から始まっている。 This paper is an exercise in self-indulgence and self-aggrandizement. (拙訳) 本稿は自己満足と自分の研究の誇張の試みである。 そして、これを書いた目的について以下のように述べている…

20年後のIt’s Baaack

という小論をクルーグマンが書いている(H/T デロング1、デロング2)。以下はその中のアベノミクス評。 If the worst economic crisis since the 1930s, one that cumulatively cost advanced nations something on the order of 20 percent of GDP in foreg…

格差と総需要

少し前に安全資産への需要増大が自然利子率を低下させた、という議論を紹介したが、資産への需要増大が格差拡大によってもたらされる、という議論をAdrien Auclert(スタンフォード大)とMatthew Rognlie(ノースウエスタン大)が展開している。 2人は表題の…

自動化のモデル化

先月に続きダロン・アセモグル(MIT)とPascual Restrepo(ボストン大)のコンビが、自動化に関するNBER論文を上げている(ungated版)。論文のタイトルは「Modeling Automation」。 以下はその要旨。 This paper points out that modeling automation as fa…

アナリストが疲れる時

「Decision Fatigue and Heuristic Analyst Forecasts」というNBER論文が上がっている。著者はDavid Hirshleifer(UCアーバイン)、Yaron Levi(USC)、Ben Lourie(UCアーバイン)、Siew Hong Teoh(同)。 以下はその要旨。 Psychological evidence indica…

貿易協定の真の効果

1年ほど前にロドリックの「What did NAFTA really do?」というエントリを紹介したことがあったが、そのロドリックが「What Do Trade Agreements Really Do?」というNBER論文を上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 As trade agreements have evolved …

電気代を節約するだけでなく暑さを抑えて生産性も上げるLED

「The Light and the Heat: Productivity Co-benefits of Energy-saving Technology」というNBER論文が上がっている(本文も公開されている)。著者はAchyuta Adhvaryu(ミシガン大)、Namrata Kala(ハーバード大)、Anant Nyshadham(ボストン大)。 以下…

ナッジが暴走する時?

ナッジねたをもう一丁。マクロスキーほどエキセントリックではないが、Tim Taylorもナッジの在り方に若干の懸念を示している。 Three broad concerns discussed by Holmes seem worth noting. First, nudges can often be very specific to context and deta…

マクロスキーのセイラー(+クルーグマン、スティグリッツ)批判

ディアドラ・マクロスキーが、昨年ノーベル経済学賞(もちろんマクロスキーはノーベル賞と認めていない)を受賞したリチャード・セイラーを舌鋒鋭く批判し、併せてクルーグマンとスティグリッツも盛大にディスっている(H/T Mostly Economics)。 Once Thale…

持続的な低期待リターンは最適なライフサイクルの貯蓄、投資、退職行動をどのように変えるか?

というNBER論文が上がっている。原題は「How Persistent Low Expected Returns Alter Optimal Life Cycle Saving, Investment, and Retirement Behavior」で、著者はVanya Horneff(ゲーテ大学フランクフルト)、Raimond Maurer(同)、Olivia S. Mitchell(…

人的資本に関する決定は教育のリターンに反応するか? DACAを用いた実証結果

米政府の一時閉鎖をもたらした政争の一つの焦点となったDACAを自然実験として利用した表題のNBER論文が上がっている。原題は「Do Human Capital Decisions Respond to the Returns to Education? Evidence from DACA」で、著者はElira Kuka(南メソジスト大…

中国のシャドウバンキングの見取り図

を「Mapping shadow banking in China: structure and dynamics」と題したBIS論文が示している(H/T Mostly Economics)。論文の著者はTorsten Ehlers(BIS)、Steven Kong(香港金融管理局、ただし論文執筆時はBIS)、Feng Zhu(BIS)。 以下はその要旨。 W…

カルドアとピケティの事実:米国における独占力の台頭

というNBER論文をエガートソンらが書いている(ungated版*1)。原題は「Kaldor and Piketty's Facts: The Rise of Monopoly Power in the United States」で、著者はGauti Eggertsson、Jacob A. Robbins、Ella Getz Wold(いずれもブラウン大)。 以下はその…

相関行列の補完

BOEブログが、リスク算定に使う未知の相関係数を含む相関行列を補完する比較的簡単な数学的な手法を紹介している。これは昨年の論文で展開されたもので、論文の著者はDan I. Georgescu(BOE)、Nicholas J. Higham(マンチェスター大)、Gareth W. Peters(…

安全資産プレミアムと流動性プレミアムの上昇が自然利子率の低下をもたらした

NY連銀ブログの3連ポストでMarco Del Negroら4人のエコノミスト*1が、昨年3月のブルッキングス研究所のコンファレンスで提示した論文を解説している。論文の内容は、カバレロらの持説*2である安全資産不足と、Del Negroや清滝氏らの言う流動性への逃避*3が、…

ハウス・オブ・ビットコインの軋み

BIS総支配人のアグスティン・カルステンス(Agustín Carstens、元メキシコ政府蔵相&中銀総裁)がゲーテ大で貨幣について講演し、以下の図を示している(H/T Mostly Economics)。この図はBIS季刊誌(BIS Quarterly Review)の昨年9月号に掲載されたこちらの…

労働コストは反景気循環的?

「New Evidence on Cyclical Variation in Labor Costs in the U.S.」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はGrace Weishi Gu(UCサンタクルーズ)、Eswar Prasad(コーネル大)。 以下はその要旨。 Employer-provided nonwage benefit expendit…

米国は完全雇用に近いか?

ディーン・ベーカーが、クルーグマンの2/5論説について、株式市場や住宅市場やトランプ政権の能力の評価は概ね同意するとしつつも、現状は完全雇用に近いという見立てに異を唱えている。以下はその異論のポイント。 高齢化が労働参加率を全体的に引き下げる…

人工知能と機械学習はどのように市場設計に影響を与えるか

というNBER論文をポール・ミルグロムらが書いている(ungated版)。原題は「How Artificial Intelligence and Machine Learning Can Impact Market Design」で、著者はPaul R. Milgrom(スタンフォード大)、Steven Tadelis(UCバークレー)。 以下はその要…

大恐慌と大不況の貿易崩壊の共通性

について研究したNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「The Anatomy of a Trade Collapse: The UK, 1929-33」で、著者はAlan de Bromhead(クイーンズ大学ベルファスト校)、Alan Fernihough(同)、Markus Lampe(ウィーン経済・経営大学)、Kevin Hj…

まぼろしの大平穏期

昨日紹介したディローのエントリでは、大平穏期を「ショックの欠落という一時的な幸運に過ぎなかった」と評しているが、その際に2007年のECB Working Paper「The 'Great Moderation' in the United Kingdom」にリンクしている。著者は当時ECBのLuca Benati(…

一般人との対話に臨む経済学者が守るべき4箇条

レンールイスらが経済学者の一般人との対話の仕方についてツイッター上で議論したのを受けて、クリス・ディローが、表題の4箇条を説いている。ディローは、ブレグジットや緊縮策についての経済学者の影響力が十分ではなかったことを認めた上で、一般の人に広…

潜在GDPよりもインフレに耳を傾けるべき?

前回エントリで触れたCoibion=Gorodnichenko=Ulateの研究へのブランシャールのコメントを紹介しておく。その冒頭でブランシャールは、研究内容を以下のようにまとめている。 The basic point of the note by Coibion et al is an extremely important one.…

潜在GDPのリアルタイム推計:FRBは本当にブレーキを踏むべきなのか?

以前紹介したOlivier Coibion(テキサス大オースティン校)、Yuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Mauricio Ulate(同)の潜在GDPに関する研究が改めて注目されている。著者たちがその内容をまとめた表題のレポート(原題は「Real-Time Estimates of Poten…

理念対権益:統一的な政治経済の枠組み

昨日に続き、27日エントリで紹介したロドリックのブログ記事でリンクされていた論文の要旨を紹介する。以下は表題の共著論文(原題は「Ideas versus Interests: A Unified Political Economy Framework」、共著者はウォーリック大のSharun W. Mukand)の要旨…