2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

2段階最小二乗法――予告された殺人の記録?

と題したMetrics Mondayエントリ(原題は「2SLS–Chronicle of a Death Foretold?」)でMarc F. Bellemareが、最近話題になっているというAlwyn Young(LSE)の論文を取り上げている。 The paper is titled “Consistency without Inference: Instrumental Var…

マクロ経済学の学際モデル

BOEのホールデンがArthur E Turrellとともに表題のスタッフワーキングペーパーを書いている(原題は「An interdisciplinary model for macroeconomics」、H/T Mostly Economics)。以下はその要旨。 Macroeconomic modelling has been under intense scrutin…

インドが日韓の産業政策を真似できないわけ

についてCUTS International*1のPradeep S. Mehtaがミント紙に書いている(H/T Mostly Economics)。 The use of industrial policy by advanced economies like Japan and South Korea in their initial growth phase, before globalization reached its ze…

米国の輸出と雇用

米国の世界への輸出と中国からの輸入が雇用に与えた効果を定量的に評価したNBER論文が同時に2本上がっている。いずれもUCデービスのRobert C. Feenstraが共著者の一人になっており、一つはアイダホ大学の笹原彰氏と共著した「The 'China Shock', Exports and…

ポケモンGOによる死

という論文(原題は「Death by Pokémon GO」)をDigitopolyでJoshua Gansが紹介している。論文の著者はパデュー大のMara FaccioとJohn J. McConnellで、ポケモンGOリリース後の148日におけるインディアナ州チペカヌー郡の死傷者の評価損失額は520万ドルから2…

賃金と生産性と進歩的政策

上図のように生産性上昇が賃金上昇に結び付いていない現象を巡る論争を、ジャレッド・バーンスタインが自ブログで取り上げている。論争はAnna Stansbury=Lawrence Summers(SS)とLawrence Mishel=Josh Bivens(MB)の間で交わされたものだが、その過程でS…

金プール(1961-1968)とブレトン=ウッズ・システムの崩壊/中銀の協調への教訓

国際金融史についての論文を精力的に書き続けているマイケル・ボルドーが、今度は金プール*1を取り上げている。以下はMichael Bordo(ラトガーズ大)、Eric Monnet(フランス銀行)、Alain Naef(ケンブリッジ大)の表題のNBER論文(原題は「The Gold Pool (…

レプラコーン経済学・現実的推計版

11日エントリでは、トランプ減税の恩恵のかなりの部分が海外投資家に流出してしまう、というクルーグマンの試算を紹介した。その試算はTax Foundationの減税効果の推計に基づいていたが、Tax Policy Centerがより現実的な推計を出したため、クルーグマンは改…

アイスランドの台頭、没落、そして復活

エガートソンのNBER論文をもう一丁。以下は、Sigríður Benediktsdóttir(イェール大)、Gauti B. Eggertsson(ブラウン大)、Eggert Þórarinsson(アイスランド中銀)の表題の論文(原題は「The Rise, the Fall, and the Resurrection of Iceland」;ブルッ…

マイナス金利はGDPを減らすかも

というNBER論文をエガートソンらが上げている(ungated版)。原題は「Are Negative Nominal Interest Rates Expansionary?」で、著者はGauti B. Eggertsson(ブラウン大)、Ragnar E. Juelsrud(ノルウェー経営大学BI)、Ella Getz Wold(ブラウン大)。 以…

CoCo債の発行と銀行の脆弱性

というNBER論文が上がっている(原題は「CoCo Issuance and Bank Fragility」)。著者はStefan Avdjiev(BIS)、Bilyana Bogdanova(同)、Patrick Bolton(コロンビア大)、Wei Jiang(同)、Anastasia Kartasheva(BIS)。 以下はその要旨。 The promise o…

ジャネット・イエレンがFRBに残るべき4つの理由

イエレンがFRB議長を退任した後もFOMCに残すべき、とコチャラコタがブルームバーグ論説で訴えている。その理由として以下の4つを挙げている。 優れた専門性 公職に就く前は一流の経済学者で、それが彼女の政策に関する考えの強い基盤になっている。 FOMCに過…

自然失業率仮説は棄却すべきか?

ブランシャールが自然失業率仮説の是非を取り上げた表題の論文(原題は「Should We Reject the Natural Rate Hypothesis?」)の結論部で、以下の2つの式を提示している。 y*(+1) = ay* + b(y - y*) (1) π = c(y - y*) + Eπ ただし -x≦π≦xならばEπ = 0、それ…

予測目標

をFRBは既に採用しており、それはテイラールールなどよりも優れている、としたNBER論文「What Rule for the Federal Reserve? Forecast Targeting」をスヴェンソンが上げている(本人のブログエントリ(ungated版にリンク))。 以下はその要旨。 How would …

オンラインデータを使った地域経済のナウキャスティング

に取り組んだNBER論文をエドワード・グレイザーらが上げている。論文のタイトルは「Nowcasting the Local Economy: Using Yelp Data to Measure Economic Activity」で、著者はEdward L. Glaeser、Hyunjin Kim、Michael Luca(いずれもハーバード大)。 以下…

クラスターすべき時、すべきでない時

Metrics MondayでMarc F. Bellemareが、「When Should You Adjust Standard Errors for Clustering?」という論文(著者はAlberto Abadie(MIT)、Susan Athey(スタンフォード大)、Guido W. Imbens(同)、Jeffrey Wooldridge(ミシガン州立大))を取り上…

デジタル技術は格差拡大につながる

という主旨のNBER論文をOECDの2人の研究者が共著している。論文のタイトルは「Digital Innovation and the Distribution of Income」で、著者はDominique Guellec、Caroline Paunov。以下はその要旨。 Income inequalities have increased in most OECD coun…

現代版ソローパラドックス?

Francis Dieboldも紹介しているが、「Artificial Intelligence and the Modern Productivity Paradox: A Clash of Expectations and Statistics」というNBER論文が上がっている。著者はErik Brynjolfsson(MIT)、Daniel Rock(同)、Chad Syverson(シカゴ…

経済が高速道路に戻るには

マービン・キング前BOE総裁が、貿易財と非貿易財の二財モデルとターンパイク理論で現在の経済状況の説明を試みている(当該講演の動画とスライド;H/T Tim Taylor)。 Multisector models fell out of favor largely because of the focus on the steady-sta…

レプラコーン経済学

クルーグマンが、本ブログの10/22エントリで紹介した図による分析を敷衍する形で、トランプ減税のもう一つの問題点を指摘している。その問題点とは、減税の恩恵の多くが海外の投資家の手に渡ってしまう、という点である。クルーグマンが最初にその点を指摘し…

カサアゲノミクスの内訳

本石町日記さんツイート経由で、昨年末のGDP改定において名目GDPが2008SNA対応以外の要因で増加したことを問題視している人がいることを知った。具体的には、こちらの公表資料の1ページ目などに記されている改定前後の比較表の差分において、「うち その他」…

ローカル予測の分散分解に関するメモ

というNBER論文が上がっている。原題は「A Note on Variance Decomposition with Local Projections」で、著者はUCバークレーのYuriy GorodnichenkoとByoungchan Lee。 以下はungated版の冒頭。 Macroeconomists have been long interested in estimating dy…

期間構造への回帰

均衡イールドカーブが9月の日銀の金融政策決定会合で議論されたことが6日公表の議事要旨で明らかになったとして話題になったが、Francis Dieboldもたまたまほぼ同タイミングの5日の表題のブログエントリ(原題は「Regression on Term Structures」)で関連研…

マクロ経済学:宗教か科学か?

と題したエントリでロジャー・ファーマーが以下のように書いている。 Science and religion are strange bedfellows. Science dates from the enlightenment. Religion has been around since the dawn of history. Science is supported by rationalism. Re…

米国と日本の新フィッシャー効果

ときわ総合サービス研究所‏さんもツイートされているが、小生がフィッシャー式逆さ眼鏡派と呼ぶ経済学者の一人であるコロンビア大のMartín Uribeが表題のNBER論文を上げている(原題は「The Neo-Fisher Effect in the United States and Japan」)。 以下は…

あるコースの誤読

をピーター・ドーマンが指摘している。槍玉に挙げられたのはブルックリン大とCUNYで政治学教授を務めるCorey Robinのこちらの自サイト記事。 According to CR, “Coase divides the economic world into two modes of action: deal-making, which happens bet…

法人税負担:一般均衡推定と分析の概観

クルーグマンが、法人税の負担に関する問題を整理した最良の論文として、CBOのJennifer C. Gravelleの2010年の表題の論文(原題は「Corporate Tax Incidence: Review of General Equilibrium Estimates and Analysis」)にリンクしている。同論文では、開放…

自然失業率には自然なことなど何もない

というProject Syndicate論説をエドムンド・フェルプスが書いている(原題は「Nothing Natural About the Natural Rate of Unemployment」)。そこで彼は、自らが旗手の一人であった反ケインズ革命を以下のように振り返っている。 Why is unemployment so lo…

減税の昔ながらの嘘

トランプ減税案を叩いていたクルーグマンが、昔ながらの共和党の嘘も顔を見せ始めている、と警告している。 その一つが、富裕層が税金の大部分を納めているのだから、減税の恩恵の大部分を受けても当然だ、という議論である。クルーグマンは、この議論は中間…

粘着的価格対粘着的情報:政策パラドックスにおいてそれは問題になるか?

というNBER論文をエガートソンらが書いている。原題は「Sticky Prices Versus Sticky Information: Does it Matter for Policy Paradoxes?」で、著者はGauti B. Eggertsson(ブラウン大)、Vaishali Garga(同)。 以下はその要旨。 This paper shows that g…