トランプ減税案を叩いていたクルーグマンが、昔ながらの共和党の嘘も顔を見せ始めている、と警告している。
その一つが、富裕層が税金の大部分を納めているのだから、減税の恩恵の大部分を受けても当然だ、という議論である。クルーグマンは、この議論は中間層向けの減税というキャッチコピーと矛盾している、と皮肉りつつも、その話は連邦所得税については成立するかもしれないが、連邦税としては大部分の人にとって所得税よりも多い給与支払税は実際には逆進的である、と指摘している。また、それなりに負担割合の高い州・地方税は明らかに逆進的であり、税全体を考えると負担比率は所得比率からそれほど外れていない、としてこちらのサイトから以下の図を示している。
もう一つが、レーガン減税によって米経済は3%以上の高成長を達成した、という議論である。それに対しクルーグマンは、クリントンのみならずカーターも在任期間中の成長率は3%を超えていた(ただし就任当初の成長率は高かったものの末期には不況とインフレに見舞われたため、人々の記憶には残っていない)、と指摘している。
その上で、以下のように論じている。
In any case, holding up either Reagan or Clinton as a model, a reason to believe 3% growth is in easy reach, misses one huge factor: demography. Under Reagan the last of the baby boomers were just entering their prime working years; these days we’re on our way out the door. Jason Furman had a nice graph to illustrate just how much has changed:
So anyone invoking Reagan-era growth to justify outlandish projections now is ignorant, dishonest, or both.
(拙訳)
いずれにせよ、レーガンもしくはクリントンを手本として掲げ、3%成長が簡単に達成できる理由とするのは、一つの重大な要因を見落としている。それは人口動態である。レーガン政権下ではベビーブーマーの最後の世代がちょうど働き盛りの年代に達していた。今日では我々は出口に差し掛かっている。ジェイソン・ファーマンは、どれだけ事態が変化したかを描写する良いグラフを示している。
ということで、今日において論外な予測を正当化するためにレーガン時代の成長を喚起する人は皆、無知か不正直か、もしくはその両方である。
クルーグマンは経済成長への人口動態への影響を以前から重視しており(eg. ここ)、この論説でもその点を強調する形になっている。なお、3%をメルクマールとするかはともかく、ここで紹介したようにサマーズはレーガン減税が成長率を高めた、という立場に立っている。トランプ減税批判に関してはほぼ同様の議論を展開してきたクルーグマンとサマーズも、その点については意見を異にする、と言えそうである。