2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

何でもする? 条件付き政策の約束の影響

というNBER論文が上がっている(4月時点のWPへのリンクがある著者の一人のサイト)。原題は「Whatever it Takes? The Impact of Conditional Policy Promises」で、著者はValentin Haddad(UCLA)、Alan Moreira(ロチェスター大)、Tyler Muir(UCLA)。 以…

債務と財政赤字:定常比率による財政分析

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Debt and Deficits: Fiscal Analysis with Stationary Ratios」で、著者はJohn Y. Campbell(ハーバード大)、Can Gao(ザンクトガレン大)、Ian W.R. Martin(LSE)。 以下はその要旨。 We study coint…

原油価格、金融政策、およびインフレ高騰

というNBER論文をガートラーらが上げている(ungated(SSRN)版)。原題は「Oil Prices, Monetary Policy and Inflation Surges」で、著者はLuca Gagliardone、Mark Gertler(いずれもNYU)。 以下はその要旨。 We develop a simple quantitative New Keynesia…

ジェフリー・サックスへのオープンレター

が3月20日に出されていたことにデロングが最近気づき、遅まきながら署名したいと申し出ている*1。 同オープンレターはウクライナ出身のYuriy Gorodnichenko(cf. ゴロドニチェンコとウクライナ - himaginary’s diary)が発起人になったもののようで、その冒…

インフレは一連の不幸な出来事だったのか、それとも原罪だったのか?

前回、前々回エントリで紹介したバーナンキ=ブランシャール論文について、ブルッキングス研究所のセミナーで討論者を務めたジェイソン・ファーマンが、その討論スライドを基にした連ツイを起こしている。 Was inflation A Series of Unfortunate Events or …

ブランシャールによるバーナンキ=ブランシャール論文の解説

前回エントリで紹介したバーナンキ=ブランシャール論文をブランシャール自身が連ツイで解説している。 1. I see that my paper with Ben Bernanke on inflation is interpreted in contradictory ways: “BB show that demand played a small role, BB show …

何がコロナ禍期の米インフレをもたらしたのか?

という論文(原題は「What Caused the U.S. Pandemic-Era Inflation?」)をバーナンキとブランシャールが書いている。以下はその要旨。 We answer the question posed by the title by specifying and estimating a simple dynamic model of prices, wages, …

クルーグマン「いや、ルーカスプロジェクトの核心にはケインジアンへの攻撃があった」

クルーグマンが、前々回エントリで紹介したルーカス評をフォローしている。 Lots of virulent responses to my remarks about Robert Lucas, understandably so. But if you imagine that the attack on Keynesian macroeconomics wasn't at the core of the…

クルーグマンが見落とした(?)ルーカスの貢献

前回エントリで紹介したクルーグマンのルーカス評にIvan Werningが異を唱えている。 I disagree but think there are two separate issues. Was his particular 1972 islands model emphasizing incomplete information the right model? Most people today …

ルーカスプロジェクトの挫折

についてクルーグマンがツイッターでまとめている。 OK, something that isn't about the d*** c*******. Obituaries have acknowledged his brilliance and huge influence, all of which is true. But I think it's important to realize that his project…

世界的な金融ショックの減殺:マクロプルーデンシャル規制は(資本規制よりも)有用か?

というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Dampening global financial shocks: can macroprudential regulation help (more than capital controls)?」で、著者は Katharina Bergant(IMF)、Francesco Grigoli(同)、Niels-Jakob Hansen(…

理工系大卒はいかにして利口になったのか?

「Where Do STEM Graduates Stem From? The Intergenerational Transmission of Comparative Skill Advantages*1」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はEric A. Hanushek(スタンフォード大)、Babs Jacobs(マーストリヒト大)、Guido Schwer…

生産網におけるインフレとGDPの動学:十分統計量アプローチ

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Inflation and GDP Dynamics in Production Networks: A Sufficient Statistics Approach」で、著者はHassan Afrouzi(コロンビア大)、Saroj Bhattarai(テキサス大学オースティン校)。 以下はその要…

サプライチェーンの制約とインフレ

というNBER論文が上がっている。原題は「Supply Chain Constraints and Inflation」で、著者はDiego A. Comin(ダートマス大)、Robert C. Johnson(ノートルダム大)、Callum J. Jones(FRB)。 以下はその要旨。 We develop a multisector, open economy, …

インフレの逆襲:輸入競合と労働市場の果たした役割

というNBER論文が上がっている。原題は「Inflation Strikes Back: The Role of Import Competition and the Labor Market」で、著者はMary Amiti(NY連銀)、Sebastian Heise(同)、Fatih Karahan(アマゾン・ドット・コム)、Ayşegül Şahin(テキサス大オ…

ブランシャールの追悼ツイート

が個人的にはロバート・ルーカスの訃報の第一報だった。短い中にルーカスの貢献を上手く表現しているように思われるので、以下にその追悼ツイートを紹介しておく。 RIP Bob Lucas. Surely the most influential macroeconomist of the last 50 years. A perf…

コミットメント無しの金融政策

というNBER論文をロゴフらが上げている(ungated版)。原題は「Monetary Policy without Commitment」で、著者はHassan Afrouzi(コロンビア大)、Marina Halac(イェール大)、Kenneth S. Rogoff(ハーバード大)、Pierre Yared(コロンビア大)。 以下はそ…

米国の在宅勤務は過小推計されていた

という主旨のNBER論文をAdam Ozimekらが上げている(昨年3月時点のWP)。論文のタイトルは「How Many Americans Work Remotely? A Survey of Surveys and Their Measurement Issues」で、著者はErik Brynjolfsson(スタンフォード大)、John J. Horton(MIT…

なぜ高齢の学者はスローダウンするのか?

というNBER論文をHamermeshらが上げている。原題は「Why Do Older Scholars Slow Down?」で、著者はDaniel S. Hamermesh(テキサス大学オースティン校)、Lea-Rachel Kosnik(ミズーリ大学セントルイス校)。 以下はその要旨。 Using data describing all “T…

インフレ予想と資源の誤配分:イタリアでの実証結果

というNBER論文をGorodnichenko=Coibionらが上げている(ungated版)。原題は「Inflation Expectations and Misallocation of Resources: Evidence from Italy」で、著者はTiziano Ropele(イタリア銀行)、Yuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Olivier C…

軽度な政府の失敗

というNBER論文が上がっている。原題は「Mild Government Failure」で、著者はShang-Jin Wei(コロンビア大学)、Jianhuan Xu(シンガポールマネージメント大学)、Ge Yin(対外経済貿易大学)、Xiaobo Zhang(北京大学)。 以下はその要旨。 A relatively m…

It’s Baaack:2020年代のインフレ高騰と非線形のフィリップス曲線の復活

というNBER論文が上がっている。原題は「It’s Baaack: The Surge in Inflation in the 2020s and the Return of the Non-Linear Phillips Curve」で、著者はPierpaolo Benigno(ベルン大)、Gauti B. Eggertsson(ブラウン大)。 以下はその要旨。 This pape…

財政赤字は自らを賄えるか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Can Deficits Finance Themselves?」で、著者はGeorge-Marios Angeletos(ノースウエスタン大)、Chen Lian(UCバークレー)、Christian K. Wolf(MIT)。 以下はその要旨。 We study how fiscal defici…

クルーグマン「債務スパイラルは起きない」

債務スパイラルの懸念を否定する連ツイをクルーグマンが立てている。 Thinking about debt, and some common misconceptions. I thought I'd start with a picture that needs explaining, although it's just a new way to make a point many economists — …

キャリートレードから企業間信用へ:非金融企業による金融仲介

というNBER論文が上がっている(ungated(BIS)版)。原題は「From Carry Trades to Trade Credit: Financial Intermediation by Non-Financial Corporations」で、著者はBryan Hardy(BIS)、Felipe Saffie(バージニア大)。 以下はその要旨。 We use unique…

なぜプーチンはウクライナを侵略したのか? 衰退する専制政治の理論

というNBER論文が上がっている。原題は「Why Did Putin Invade Ukraine? A Theory of Degenerate Autocracy」で、著者はGeorgy Egorov(ノースウエスタン大)、Konstantin Sonin(シカゴ大)。 以下はその要旨。 Many, if not most, personalistic dictators…

2014年のロシアショックとそのイタリアの企業と銀行への影響

というNBER論文が上がっている(昨年9月時点のWP)。原題は「The 2014 Russia Shock and Its Effects on Italian Firms and Banks」で、著者はStefano Federico、Giuseppe Marinelli、Francesco Palazzo(いずれもイタリア銀行)。 以下はその要旨。 We stud…

クルーグマンの見る債務上限問題の行く末

クルーグマンが、今回の債務上限問題が今後辿る経路について4つの可能性を挙げた。 So I now see four possible paths through the debt ceiling crisis. Reaching a deal with Kevin McCarthy isn't one of them 1/ The possible paths are: Discharge peti…