2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

財政再建の恒久的影響

昨日エントリで触れたAntonio Fatasとサマーズの表題の論文(原題は「The Permanent Effects of Fiscal Consolidations」)の要旨を紹介しておく*1。 The global financial crisis has permanently lowered the path of GDP in all advanced economies. At t…

供給からの逃走

クルーグマンが、ヒックス的なマクロ経済の見方は、今般の経済危機において、需要については極めて上手く機能したが、供給についてはそれほど上手く行かなかった、とブログで論じた。というのは、インフレと失業の平面図において、70年代と80年代の過去の不…

経済学の教科書は、真実、すべての真実、および真実だけを語っているか?

ノアピニオン氏が、マンキューに代表される経済学の入門教科書は「間違っている」というブルームバーグ論説を書き、Econlogのデビッド・ヘンダーソンに批判された(H/T マンキュー)。それに対しノアピニオン氏が自ブログで反論している。 ノアピニオン氏が…

機関投資家の需要と資産価格の均衡モデル

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「An Equilibrium Model of Institutional Demand and Asset Prices」で、著者はRalph S.J. Koijen(ロンドンビジネススクール)、Motohiro Yogo(プリンストン大)。 以下はその要旨。 We develop an ass…

親の失職が子供の健康に与える短期的影響

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Short-run Effects of Parental Job Loss on Child Health」で、著者はアリゾナ大のJessamyn SchallerとMariana Zerpa。 以下はその要旨。 Recent research suggests that parental job loss has negati…

悪しき投資と失われた機会? 戦後のアジアと中南米への資本移動

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Bad Investments and Missed Opportunities? Postwar Capital Flows to Asia and Latin America」で、著者はLee E. Ohanian(UCLA)、Paulina Restrepo-Echavarria(セントルイス連銀)、Mark L. J. Wri…

エージェンシー景気循環

というNBER論文が上がっている(ungated版、スライド版)。原題は「Agency Business Cycles」で、著者はMikhail Golosov(プリンストン大)、Guido Menzio(ペンシルベニア大)。 以下はその要旨。 We propose a new business cycle theory. Firms need to r…

クルーグマン「銀行問題は欧州問題の核心に非ず」

クルーグマンが、欧州危機の原因を銀行に求める見方を取り上げ、既視感を訴えている。 For those of us who worried a lot about Japan in the late 1990s and now find the whole advanced world facing similar problems, deja vu comes so often that we …

生産性上昇率は過小評価されている?

昨日取り上げたアダム・ポーゼンのブログエントリでは、サマーズ講演の要旨として、履歴効果の他に、そもそものカンファレンスの主題である生産性成長率の鈍化と、技術による失業の2点が挙げられていた。 生産性上昇率の鈍化については概ね以下のようなこと…

履歴効果とアベノミクス

18日エントリで紹介したブランシャール=セルティ=サマーズ論文について、アダム・ポーゼンがアベノミクスを引き合いに出しつつ以下のように書いている(H/T Economst's View)。 I have a lot of sympathy for this view. When discussing a recent paper …

ケインズの労働時間の予測はなぜ外れたのか?

ハーバード大のベンジャミン・フリードマン(Benjamin M. Friedman)が「Work and Consumption in an Era of Unbalanced Technological Advance」というNBER論文で、ケインズの「わが孫たちの経済的可能性」*1の労働時間の予言が間違った理由を分析している…

危機前後の中央銀行の信認

今年初めに紹介した論文の続編とでも言うべき表題のNBER論文(原題は「Central bank Credibility Before and After the Crisis」;ungated版)をMichael D. Bordo(ラトガーズ大)とPierre Siklos(ウィルフリッド・ローリエ大学)が書いている。 以下はその…

インフレと経済活動――2つの探求とその金融政策にとっての含意

というNBER論文をブランシャールとサマーズが書いている(ungated版[IMF版])。原題は「Inflation and Activity - Two Explorations and their Monetary Policy Implications」で、著者はOlivier Blanchard(ピーターソン国際経済研究所)、Eugenio Cerutt…

帝政ロシア下のモメンタム

というNBER論文が上がっている。原題は「Momentum in Imperial Russia」で、著者はWilliam Goetzmann(イェール大)、Simon Huang(南メソジスト大)。 以下はその要旨。 Some of the leading theories of momentum have different empirical predictions ab…

債務か、然らずんば悪魔か

ニューヨーカー誌のジョン・キャシディが、アデア・ターナーの以下の近著を紹介している(H/T Economist's View)。Between Debt and the Devil: Money, Credit, and Fixing Global Finance作者: Adair Turner出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 201…

受動的な財政政策を含意していたフィッシャー式逆さ眼鏡派

David Andolfattoが、新フィッシャー派(フィッシャー式逆さ眼鏡派)を二派に分類している。 As far as I can tell, this Neo-Fisherian proposition comes in two stripes. The first stripe is of the "cashless economy with Ricardian equivalence" vari…

貸し借り無しの経済を求めるカシュカリ

クルーグマンがブログエントリで2人の地区連銀総裁を相次いで批判している。 最初に槍玉に挙げたのは、来年ミネアポリス連銀総裁に就任するニール・カシュカリ。前任者とイニシャルが同じことに掛けて、以下のように書いている。 So, if the Minneapolis Fed…

どのアルファ?

というNBER論文が上がっている。原題は「Which Alpha?」で、著者はエモリー大のFrancisco BarillasとJay Shanken。 以下はSSRN版の冒頭部。 Many papers in the empirical literature compare the performance of different models in pricing test assets u…

サイズ発見

というNBER論文をダレル・ダフィーらが書いている。原題は「Size Discovery」で、著者はDarrell Duffie(スタンフォード大)、Haoxiang Zhu(MIT)。 以下はその要旨。 Size discovery refers to the use of trade mechanisms by which large quantities of …

メフィストフェレスとしてのHAP論文

一昨日、昨日と、Angus Deatonの共著論文、およびラインハート=ロゴフを槍玉に挙げたMichael Ashの批判が、計量経済学に関する曖昧な知識に基づいていたことを紹介した。では、2年前に吹き荒れたラインハート=ロゴフへのバッシングは、きちんとした根拠を…

パネル分析を理解していなかったマサチューセッツ大学アマースト校経済学部教授

昨日取り上げたEconbrowserのDeatonゲストエントリにおけるコメンターRick Strykerは、Angus DeatonとDarren Lubotskyの共著論文に対するMichael Ashの批判は、加重回帰についてのAshの無理解から来たものだ、と断じた。同様に、ラインハート=ロゴフに対す…

加重最小二乗法を理解していなかったマサチューセッツ大学アマースト校経済学部教授

こちらのツイートを目にして、2年前に取り上げたEconbrowserのAngus Deatonのゲストエントリを読み直したところ、コメント欄でMichael Ash自身から反論が寄せられていたことに気付いた。具体的には、以前Ashが批判した自論文にはコーディングエラーは存在し…

スラッファは何を見落としていたのか?

6日エントリで紹介したDavid Glasnerらの論文の直近版の公開当時、その内容を巡って、3日エントリで紹介した論文の著者であるPhilip PilkingtonとGlasnerの間で論争があった。以下は関連エントリ。 A New Version of my Paper (with Paul Zimmerman) on the …

明確に定義されているがほぼ役に立たない自然利子率

2日エントリで紹介したタイラー・コーエンの自然利子率に関する考察に対し、その考察の一つで自分の共著論文(cf. 前回エントリ)が言及されたDavid Glasnerが反応した。表題のエントリ(原題は「The Well-Defined, but Nearly Useless, Natural Rate of Int…

自然利子率に関するスラッファ=ハイエク論争

2日エントリで触れたDavid GlasnerとPaul Zimmerman(GlasnerのFTC[米国連邦貿易委員会]の同僚)の表題の共著論文(原題は「The Sraffa-Hayek Debate on the Natural Rate of Interest」)の要旨を紹介してみる。 Hayek’s Prices and Production, based on…

スラッファのケインズ批判を巡る誤解

2日エントリの脚注でリンクしたDavid Glasnerのエントリのコメント欄で、3日エントリでその論文を引用したPhilip Pilkingtonが、Roy H Grieveという人が書いた「An issue with own-rates: Keynes borrows from Sraffa , Sraffa criticises Keynes, and prese…

長期停滞を巡るクルーグマンとサマーズの意見の相違

クルーグマンが10/31エントリで、サマーズは長期停滞について4年前と意見を変えたようだ、と書いた。するとサマーズが、確かに以前より長期停滞を重視するようになったが、クルーグマンはその変化を誇張している、とWaPo紙上で苦情を申し立てた。クルーグマ…

ケインズが破壊したもの

前回エントリで紹介したコーエンは、ケインズが自然利子率に否定的だったということを示した論文にリンクしている。ここでは、その論文「Endogenous Money and the Natural Rate of Interest: The Reemergence of Liquidity Preference and Animal Spirits i…

自然利子率とは何か?

タイラー・コーエンが表題のブログエントリ(原題は「What’s the natural rate of interest?」)で自然利子率について7つの論点を挙げた。以下はその概要。 デビッド・デビッドソンとクヌート・ヴィクセルは20世紀初頭に自然利子率の概念について論争した。…

米国の自然利子率は下がったのか?

大不況入り後に米国の自然利子率が急低下した、というSF連銀の論文をクルーグマンが取り上げ、FRBが利上げを急ぐべきでない証左として訴えた。一方、Carola Binderが同論文について以下のような技術的な指摘を行っている(H/T Economist's View)。 The auth…