2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

貨幣摩擦が問題になる時・続き

気が付くと、23日に紹介したStephen WilliamsonとMatt Rognlieの論争がその後も継続していた。 前回紹介した時には、RognlieへのWilliamsonの異議申し立ててで話が終わっていたが、その後Rognlieが自ブログにフォローアップエントリを立てると同時にWilliams…

カリブレーションの海賊

アンドリューゲルマンブログで、ゲルマンの共同ブロガーのBob CarpenterがあるScientific American記事に対し、極めて感情的な反発を示した(Economist's View経由)。 それによると、Jonathan Carterという地球物理学者が、単純な油井モデルでデータを生成…

言葉の壁は大学ランキングに影響している?

一昨日のエントリで紹介した2枚目のグラフ(世界ランキング上位50大学を分野ごとに国別の校数を示したグラフ)について、Economix記事のコメントに以下のようなものがあった。 I think there is a pretty obvious bias in this data: language. I have worke…

スタグフレーションと売り上げの弱さ

16日エントリでは、規制監督上の不確実性が景気を冷やしているという見解をクルーグマンが嘲笑した、という話を紹介した。もう少し詳しく説明すると、EPI(Economic Policy Institute)所長のLarry Mishelがそうした見解を否定するレポートを発表したところ…

日本政府の研究開発支援のOECDにおける位置は…

先月末のEconomixブログで相次いでOECD発のグラフが取り上げられていたが(ここ、ここ)、その元ネタはこの本らしい。その米国向け要約版がこちらで読める*1。 Economixの9/30エントリでは、その中から、2008年から2009年に掛けての雇用の業種別の変化を国別…

マクロ経済学はすべて宗教?

昨日紹介したStephen Williamsonのエントリはクルーグマンへの反論として書かれたものだが、クルーグマンのカリブレーション批判への反論もなされている: Part of what the calibration people were reacting to, was a view among econometricians that qu…

清滝信宏氏とミネソタ大学

Stephen Williamsonが、淡水系の経済学部では反ケインジアンの人々がニューケインジアンを雇うことに反対する、という噂について書いたクルーグマンに反論する際に、清滝信宏氏を引き合いに出している。 People in academic departments disagree about who …

FRBは法を犯している?

22日エントリではStephen Williamsonの名目GDP目標批判を紹介した。もとよりクルーグマンをはじめとするケインジアンが大嫌いで、さらにマーケットマネタリストの名目GDP目標も受け付けず、となると、Williamsonは流動性の罠はマクロ経済政策ではどうしよう…

貨幣摩擦が問題になる時

Matt Rognlieが貨幣摩擦のマクロ経済への影響は大したものではない、とブログで論じ、Stephen Williamsonが猛反発した。 その反論エントリの末尾でWilliamsonが、Rognlieは勉強不足なのでまずこれらを読むべし、として挙げた文献リストの中には、少し前の自…

名目GDP目標とテイラールールの違い

ここの冒頭部でerickqchanさんが記述されているように、スコット・サムナーやデビッド・ベックワースがかねてから提唱してきた名目GDP目標が、ゴールドマン・サックスのレポートをきっかけに一気に話題として広まった。 それに対しStephen Williamsonが、そ…

不況は出生率を下げる

という報告をピューリサーチセンター*1が出している(Economixブログ経由)*2。 レポートの内容は以下の図に集約される。 そのほか、州別に見ても、2007年から2008年に掛けて景気が大きく悪化した州で、2008年から2009年に掛けて出生率が相対的に大きく低下…

オバマ政権の経済失政は不可避だったのか

今月8日、エズラ・クラインがオバマ政権の経済危機対応を振り返る記事を書いた。以下、各人の反応。 デロング サスキンド本*1よりずっと良い。確かに特効薬的な政策は存在しなかったかもしれないが、小規模や中規模の政策――それらの中には今も実行可能なもの…

コトリコフの社会主義的解決策

昨日紹介したコトリコフの5つの政策提案のうち、4番目の賃金の硬直性の話がクルーグマンやガルブレイスとコトリコフの論争を招いたが、残りの4つの提案をEconospeakでProGrowthLiberal(PGL)が俎上に載せている。曰く: 5番目の提案は財政緊縮策であり、4番…

コトリコフ対クルーグマン

少し前に両者の対決がネット上で見られた。 きっかけは、コトリコフのブルームバーグ論説記事。そこでコトリコフは現下の経済問題の対処するための5つの処方箋を提示したのだが、その4番目で概ね次のようなことを書いた:クルーグマンやジェームズ・ガルブレ…

政策の不確実性は景気を冷やすのか?

昨日のエントリで紹介したカール・スミスの10/2エントリでは、政策の先行きの不透明さが企業家心理を冷やしているという議論*1に触れていたが、10/10エントリで彼は、そうした政策の不確実性を指数化した研究について論じている*2。その研究を行ったのはスタ…

論争において嘲笑は悪手

とModeled Behaviorでカール・スミスが書いている。 ...mocking your intellectual opponents is a bad idea because only raises the cost of them changing their mind. if you mock them, your opponent has to admit that he or she is a fool. Its much…

開放経済相対乗数・補足

9/28エントリで紹介したNakamura=Steinsson論文*1がAmbrosiniブログで批判されている(サムナーブログ経由)。 Isn’t creating jobs and attracting capital exactly what we’re trying to do with fiscal stimulus? Yes, but not if it means that labor an…

金利引き下げがあればGDP予測を下方修正すべき?

一昨日のエントリの脚注ではジェームズ・ハミルトンの時系列分析の教科書中のVAR批判について触れた。そのハミルトンがEconbrowserでシムズの業績を「radical step in the direction of transforming macroeconomics into a much more objective, scientific…

Thomaによるシムズの業績の解説・その2

昨日紹介したEconomist's Viewのシムズの業績の解説で触れられていた因果性検証について、同ブログのこちらのエントリで詳しい解説がなされている。以下はその要約とも言える段落。 Sims' main contributions were, initially, the F-tests for testing caus…

Thomaによるシムズの業績の解説

Economist's Viewのこの解説を以下に簡単にまとめてみる。 シムズ以前の計量経済の構造モデルには、識別問題(identification problem)があった。これは、例えばすべての変数がすべての方程式に現われる場合、パラメータが推計できないという問題。 例(Xと…

ISLM論争・続き

7日と昨日のエントリで拾いきれなかったISLM論争に関するネット上の言説を以下にまとめてみる。 デロング FOMC開催時という間歇的なタイミングでしか貨幣供給の変化が起きない現状では、M固定というLM曲線の仮定も現実味を持つ*1。 サムナー モデルは可能な…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第10弾)

7日エントリで取り上げたISLM論争にマンキューも加わった。7日エントリでは今回の論争はイデオロギー的色彩が強いという感想を書いたが、そうした傾向に反し(!)、今度のマンキューはクルーグマンに諸手を挙げて賛成している。 ポール君 ISLMは短期のマク…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第9弾)

富裕層への課税強化について、クルーグマンとマンキューが、同じ団体(Tax Policy Center)のデータをソースにしながらも、およそ正反対のことを述べていた。特にお互いへの言及は無いが、両者の考えの違いが際立つ好例なので、以下にまとめておく。 ポール…

人の噂も四十九日

というのは「人の噂も七十五日」の誤用だが、株式市場での嘘の噂が効力を持つ期間は四十九日の平方根の七日、という研究結果をNY連銀が報告している。 その論文で分析対象となったのは、2002年のユナイテッド航空の親会社破綻のニュースが2008年9月8日にイン…

今さらISLM論争?

という感もあるが、タイラー・コーエンがISLMモデルの嫌いな点を書き連ねたことをきっかけに、ISLM擁護派と批判派が応酬を繰り広げている。ただ、そこでコーエン批判の先陣を切ったデロングが、6年前にコーエンがほぼ同じ内容のエントリを上げた時にはどちら…

大再配置理論

Great Relocationなる仮説をノアピニオン氏が提唱している。それを乱暴に要約してしまうと、ここで紹介したクルーグマンの新経済地理学を、ここで紹介したロドリックの訴えるような製造業の重要性と接合したもの、と言えるかもしれない。 以下はエントリの該…

Cole=Ohanian騒動

先月26日のCole=OhanianのWSJ論説を巡って、米ブロゴスフィアで一騒動あった。 一連の流れはデロングの3つのエントリ(ここ、ここ、ここ)で基本的に押さえられているが、問題となったのは論説の以下の記述。 And in a 2002 speech as a Federal Reserve gov…

完全雇用下で価格を固定した場合、誰が過剰支出のツケを払う?

とスティーブン・ランズバーグが問い掛けた。 この問いを投げ掛けるに当たってランズバーグは、以下の状況を想定している。 完全雇用が成立 貨幣の社会的コストがゼロ(=フリードマン・ルールが成立するような世界。いわば蛇口を捻れば必要なだけ貨幣が手に…

アセモグルの主張する「東條英機の論理」

ミネアポリス連銀のRegion誌インタビューが、今回はアセモグルを取り上げた(Economist's View経由)。その中で温暖化対策についてかなり楽観的な見解―― 一見したところ、池田信夫氏がこのエントリで批判対象にした主張と近いようにも見える――を述べているの…

なぜロバート・ルーカスはオバマに投票したのか?

27日エントリでは、ロバート・ルーカスがWSJインタビューで財政刺激策を評価するような発言をしたことが議論の的になったことを紹介した。このインタビューの彼の発言でもう一つ議論の的になったのは、日欧の経済が米国に比べて遅れを取ったままであるのは、…