という報告をピューリサーチセンター*1が出している(Economixブログ経由)*2。
レポートの内容は以下の図に集約される。
そのほか、州別に見ても、2007年から2008年に掛けて景気が大きく悪化した州で、2008年から2009年に掛けて出生率が相対的に大きく低下する傾向が見られたという。逆に、景気後退が軽微だった州では、出生率の低下は小さかった。たとえば、失業率が3.1%と有数の低い水準に留まったノースダコタは、全米で唯一2008年から2009年に掛けて出生率が僅かながら上昇した(0.7%)。統計的にも、2007年から2008年に掛けての下記の6つの各経済指標の変化率と、2008年から2009年に掛けての出生率変化率の相関は有意(*は5%水準、**は1%水準)だったという。
指標 | 相関係数 |
---|---|
一人当たり所得 | 0.49** |
一人当たりGDP | 0.31* |
雇用率 | 0.33* |
失業率 | -0.72** |
新規失業申請件数 | -0.33* |
差し押さえ率 | -0.51** |
人種別で見ても、不況の打撃を最も蒙ったヒスパニック系で出生率の低下が最大になったとのことである。
2007年から2008年に掛けての雇用率の低下幅は、ヒスパニック1.6%ポイント、黒人1.0%ポイント、白人0.7%ポイントだった。また、失業率の上昇幅は、ヒスパニック2.0%ポイント、黒人1.8%ポイント、白人0.9%ポイントだった。さらに、ピューヒスパニックセンターの調査によると、2005年から2009年に掛けての富の中位値の下落率は、ヒスパニック66%、黒人53%、白人16%だったとの由。ただし、2007年から2008年に掛けての一人当たり所得の変化については、人種による有意な差は無かったという。
レポートの最後では、女性の年代別の出生率の変化も示している。
これによると、若い女性の出生率は下がっており、40代ではむしろ上がっている。これは、若い女性には景気が良くなるまで出生を延ばすという選択肢があるためではないか、とレポートでは推測している。
このレポートを紹介したEconomix記事では、関連する研究として、短期的な住宅価格の下落は持ち家の人の出生率を下げ、それ以外の人の出生率の上昇につながることを示したメリーランド大学の経済学者の論文を紹介している。