2015年経済の不確定要因

ジャスティン・ウルファーズが12/28付けNYT論説記事で表題の要因を6つ挙げている。

  1. 労働市場に本当はどれだけのスラックが残っているのか?
    • 失業率は5.8%になり、このまま行けば2015年半ばまでにはもう0.5%ポイント下がるだろう。それは事実上の完全雇用水準だという経済学者もいる。
    • しかし失業率の低下は労働参加率の低下によるところも大きい。もし力強い経済が労働市場からの退出者の復帰をも促すのであれば、完全雇用までの道程はまだ遠いことになる。また、被雇用者としてカウントされているうちの何百万もの人々は、フルタイムの仕事を望みつつもパートタイムの仕事に甘んじている。
    • 労働市場のさらなる改善は、6ヶ月以上失業している長期失業者の就業にも掛かっている。悲観論者は、長期失業の問題は欧州の多くの国で過去40年に亘って解決できなかった問題だった、と言う。ただ、米国の最近のデータからは楽観的な見方もできる。
    • インフレをもたらさずに失業率がどこまで下がるかは良く分かっていない。5〜5.5%というのがコンセンサスだが、維持可能な最低失業率が推計値と1%以上異なることも容易に起こり得る、ということを研究は示している。実際、クリントン時代の好景気はインフレを上昇させずに失業率を4%以下まで押し下げた。

  2. FRBは2%のインフレ目標を目標とするのか、それとも天井とするのか?
    • 公式には2%超えも許容すると言っているが、行動は違っている。政策の正常化――金利引き上げの婉曲語――の計画は着々と進んでおり、FRB自身の見通しでもインフレが今後数年間に2%を超えることはない。

  3. 経済が健全性を維持するためにはどのくらいの速度で成長する必要があるのか?
    • 多くの評論家は少なくとも年率3%と考えているが、2000年以降の平均は1.9%に過ぎず、現在の拡張期の平均2.3%でも大幅な失業率の低下をもたらすのに十分だった。
    • 成長率の低下は人口成長率の低下、女性の労働力人口への移行の終了、ベビーブーマーの退職といった人口動態要因によって起きている。
    • 労働力人口の伸び率は90年代より1%近く低下しており、2%成長がかつての3%成長に相当すると考えられる。また、かつては労働力人口への新規参入者に対応するために月15万人の雇用創出が必要と考えられていたが、今はその数字は5万人まで下がっていると考えられる。

  4. 米国経済は他国の助けなしに回っていけるか?
    • 主要国の中で米国が2014年に最も力強い成長を達成した。日欧中露は停滞気味で、それは外需の弱さのみならず、ドル高をも招き、回復への逆風となる。

  5. 6月以降およそ半値にまで下がった原油価格の低下の帰結は?
    • 通常、原油価格の低下は減税と同様に消費者の懐を潤し、支出促進を通じて成長を促す。しかしシェール革命以降、米国は先導的なの石油消費国だけでなく先導的な産油国ともなった。従って原油価格の低下はエネルギー企業の収益の低下をもたらす。それらの生産者は高コスト体質であるため、原油価格が下がり過ぎると、さらなる投資の採算が取れなくなる。

  6. ドナルド・H・ラムズフェルド元国防長官が分かっていない未知のことと呼んだものは何か?
    • 経済に打撃を与えるショックは青天の霹靂であることが多い。最近の原油価格の変動然り、金融危機然り、ギリシャ危機然り、東日本大震災然り。財政と連邦債務を巡る最近の議会の瀬戸際戦略も、ここまで行くとはかつては考えられなかった。