2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

大不況期の価格マークアップの説明

という記事(原題は「Explaining Price Markups During the Great Recession」)をセントルイス連銀の「On the Economy」ブログが上げている。 以下はその冒頭。 The U.S. economy experienced severe economic slack during the 2007-09 Great Recession, b…

アナリストの党派性が資本コストを歪める?

少し前に、自分の支持政党から大統領が出ていると経済の先行きに楽観的になる、というセンチメントを利用した研究を紹介したが、格付けアナリストの仕事もまたそうしたセンチメントに左右される、ということを示したNBER論文が上がっている(ungated版)。論…

米安全実質金利の長期的な変動要因に関する実証研究

昨日は実質リスクフリー金利の過去30年間の低下傾向について書いたNBER論文を取り上げたが、そのおよそ4倍の期間の変動について書いた表題のNBER論文が上がっている(2017年12月時点のWP、同年5月の日銀金融研究所の国際コンファレンスで報告した時の様子)…

マクロ金融トレンドの説明:市場支配力、無形資産、ならびにリスクプレミアム

という昨日とはまた別の共著NBER論文をEmmanuel Farhiが上げている(ungated版、ブルッキングス研究所版)。原題は「Accounting for Macro-Finance Trends: Market Power, Intangibles, and Risk Premia」で、共著者はFrançois Gourio(シカゴ連銀)。 以下…

総生産関数のミクロ経済的基礎

というNBER論文(原題は「The Microeconomic Foundations of Aggregate Production Functions」)をDavid Rezza Baqaee(UCLA)とEmmanuel Farhi(ハーバード大)のコンビ(cf. ここ)が上げている。以前、ケンブリッジ資本論争で米国側が勝ったような認識が…

サーチ理論で説明できること、できないこと・続き

Equitable GrowthでWill McGrewという研究員が「How job-matching technologies can build a fairer and more efficient U.S. labor market」という論説を書き、本ブログで4年前に紹介したジョン・クイギンの議論に触れている。 Despite its widespread impa…

なぜ米国の労働者は働いていないのか?

というレポートをSF連銀が出している(H/T Economist's View)。原題は「Why Aren’t U.S. Workers Working?」で、著者はMary C. Daly(SF連銀)、Joseph H. Pedtke(ミネソタ大院生)、Nicolas Petrosky-Nadeau(SF連銀)、Annemarie Schweinert(ウィスコン…

中小銀行と大手銀行への景気循環の異なる影響

というレポートをリッチモンド連銀が出している(H/T Economist's View)。原題は「The Differing Effects of the Business Cycle on Small and Large Banks」で、著者はBorys Grochulski(リッチモンド連銀)、Daniel Schwam(ハーバード大)、Aaron Steelm…

インフレとギグエコノミー:オンライン小売りと個人事業主の増加はフィリップス曲線を乱したか?

というダラス連銀WPが出ている(H/T Economist's View)。原題は「Inflation and the Gig Economy: Have the Rise of Online Retailing and Self-Employment Disrupted the Phillips Curve?」で、著者はJohn V. Duca(オーバリン大、ダラス連銀)。 以下はそ…

生産性パズルとミスアロケーション:イタリアからの視点

という論文がEconomic Policy誌に掲載されている(Economist's View経由のEurekAlert経由、WP)。原題は「The Productivity Puzzle and Misallocation: an Italian Perspective」で、著者はSara Calligaris(OECD)、Massimo Del Gatto(G・ダヌンツィオ大学…

国境の壁

というNBER論文(原題は「Border Walls」)が上がっている。著者はTreb Allen(ダートマス大)、Cauê de Castro Dobbin(スタンフォード大)、Melanie Morten(同)で、AllenとMortenのHPでungated版やスライド資料、ノンテクニカルサマリーが読める。 以下…

プエルトリコの債務の持続性回復のための債務免除の必要性の分析

というNBER論文をスティグリッツらが書いている(ungated版)。原題は「An analysis of Puerto Rico’s debt relief needs to restore debt sustainability」で、著者はPablo A. Gluzmann(CEDLAS(Center for Distributive, Labor and Social Studies)@国立…

都市と星

スーパースター企業の台頭とそれに伴う格差拡大などの影響が少し前から経済学界隈で議論されているが(cf. ここ、ここ)、マッキンゼーがそうしたスーパースター企業、および都市のスーパースターについてまとめたレポートを出している(H/T Tim Taylor)。 …

金融サービスにとってのAI

フィラデルフィア連銀が開催したフィンテックに関するコンファレンスでブレイナードFRB理事が講演し、アルゴリズム、処理能力、ビッグデータという3つの主要な構成要素が入手しやすくなった結果、AIの金融機関にとっての魅力が増したが、特に以下の5つの特長…

貯蓄後悔

というNBER論文が上がっている(本文も読める)。原題は「Saving Regret」で、著者はAxel H. Börsch-Supan(マックス・プランク研究所)、Tabea Bucher-Koenen(同)、Michael D. Hurd(ランド研究所)、Susann Rohwedder(同)。 以下はその要旨。 We defin…

評判循環と所得動学

というNBER論文が上がっている。原題は「Reputation Cycles and Earnings Dynamics」で、著者はBoyan Jovanovic(NYU)、Julien Prat(CREST)。 以下はその要旨。 Cyclical patterns in earnings can arise when contracts between firms and their workers…

GDPRが技術ベンチャー投資に与えた短期的影響

というNBER論文が上がっている。原題は「The Short-Run Effects of GDPR on Technology Venture Investment」で、著者はJian Jia(イリノイ工科大学)、Ginger Zhe Jin(メリーランド大)、Liad Wagman(イリノイ工科大学)。 以下はその要旨。 The General …

仮想通貨の7つの致命的なパラドックス

と題したBOEブログエントリ(原題は「The seven deadly paradoxes of cryptocurrency」)で同行のJohn Lewisが仮想通貨の以下の7つの矛盾を突いている。 混雑のパラドックス 通常の交換の媒介は、使う人が多くなるほど良い(ネットワーク外部性、規模の経済…

経済学者のモデル:分析エンジンかファイリングシステムか? また、準備通貨を持つ国は債務不履行危機を恐れる必要があるか?

一昨年初めに紹介したサマーズ、クルーグマン、デロングの議論を、表題のブログエントリ(原題は「Economists' Models: Analysis Pumps or Filing Systems? And Do Countries with Reserve Currencies Need to Fear Solvency Crises?」)でデロングが振り返…

中産階級を支援する4つの政策とその財源

という記事(原題は「Four policies to help the middle class, and how to pay for them」)をブルッキングス研究所のRichard V. ReevesとKatherine Guyotが書いている。 以下はその概要。 労働者への税控除 Isabel Sawhill*1が提案する、子供のいない労働…

ギリシャ銀行の誕生

ギリシャ銀行が今月初めに戦間期の中央銀行の誕生(「The birth of inter-war central banks - building a new monetary order」)に関するコンファレンスを開催し、ヤニス・ストゥルナラス(Yannis Stournaras)総裁が開会の辞で同行の誕生に至る経緯を紹介…

大いなる詐欺――「大」不況とその「対策」の再評価

というNBER論文(原題は「The Big Con - Reassessing the "Great" Recession and its "Fix"」)をローレンス・コトリコフ(Laurence J. Kotlikoff)が上げている。以下はungated版の結論部。 Standard explanations of the 2008 financial crisis and its as…

日本における非伝統的金融政策の効果

IMFの3人の研究者(Giovanni Dell’Ariccia、Pau Rabanal、Damiano Sandri)が「Unconventional Monetary Policies in the Euro Area, Japan, and the United Kingdom」という論文をJournal of Economic Perspectivesに投稿している(H/T Tim Taylor)。 論文…

景気拡大は長く続いたからといって終わりやすくなるわけでは無い

「Expansions Don't Die of Old Age」というブログエントリを先月28日にFrancis Dieboldが上げている。 As the expansion ages, there's progressively more discussion of whether its advanced age makes it more likely to end. The answer is no. More f…

ブレグジットは美しく年を重ねるのか? コホート、年季、および年齢による離脱賛成傾向の過去、現在、未来

というNBER論文をアイケングリーンらが書いている。原題は「Will Brexit Age Well? Cohorts, Seasoning and the Age-Leave Gradient, Past, Present and Future」で、著者はBarry Eichengreen(UCバークレー)、Rebecca Mari(ボッコーニ大)、Gregory Thwai…

マイナス金利政策は収縮的か、拡張的か?・補足

昨日エントリでリンクした論文2本の要旨を紹介しておく。 一つは、Christoph Basten(チューリッヒ大)とMike Mariathasan(ルーヴェン・カトリック大)の「How Banks Respond to Negative Interest Rates: Evidence from the Swiss Exemption Threshold」。…

マイナス金利政策は収縮的か、拡張的か?

Douglas L. Campbellが、マイナス金利は時に経済を収縮させる、という主旨のここで紹介したエガートソンらの論文を批判している。 I like the paper and see a clear contribution. However, I wish the authors would have framed the paper slightly diffe…

デビッド・カードは間違っているのか?

前回エントリで紹介したThe Chronicle of Higher Education記事にタイラー・コーエンも10/31のMarginal Revolutionのリンク集エントリでリンクしているが、「Good piece, Card is wrong.(良い記事、カードは間違っている。)」と書き添えている。そのカード…

カード「ハーバード大入試でのアジア系差別は統計的に支持されない」

ハーバード大への入学がアジア系に不利になっている、という点が争われている裁判で、デビッド・カードが被告のハーバード大側の証人となり、統計的にはその証拠はない(「The statistical evidence does not support the claim」)、と証言したという。以下…

コンピュータビジョンと不動産:外観は重要なのか、また、インセンティブが外観を左右するのか

というNBER論文をエドワード・グレイザーらが上げている。原題は「Computer Vision and Real Estate: Do Looks Matter and Do Incentives Determine Looks」で、著者はEdward L. Glaeser(ハーバード大)、Michael Scott Kincaid(同)、Nikhil Naik(MIT)…