2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

コロナ禍後のインフレの要因

というNBER論文が上がっている(ungated(ECB)版)。原題は「The Drivers of Post-Pandemic Inflation」で、著者はDomenico Giannone(IMF)、Giorgio Primiceri(ノースウエスタン大)。 以下はその要旨。 Post-covid inflation was predominantly driven by…

気候変動への企業の適応

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Firm Adaptation to Climate Change」*1で、著者はArti Grover(世銀)、Matthew E. Kahn(南カリフォルニア大)。 以下はungated版の要旨。 How firms in the developing world adapt to changes in we…

相互主義と中国ショック

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Reciprocity and the China Shock」で、著者はChad P. Bown(ピーターソン国際経済研究所)、Lorenzo Caliendo(イェール大)、Fernando Parro(ロチェスター大)、Robert W. Staiger(ダートマス…

気温の地域への影響に光を投じる

というIMF論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Shedding Light on the Local Impact of Temperature」で、著者はDa Hoang、Duong Trung Le、Ha Nguyen、Nikola Spatafora(Duong Trung Leは世銀、他はIMF)。 以下はその要旨。 We use a new data…

問題は相対需要だよ、馬鹿者!

とまでは言っていないが、クルーグマンがパウエルFRB議長のジャクソンホール講演を引きながら、インフレに関する自分の見解を改めてまとめた連ツイを立てている。 Today Powell more or less endorsed the Long Transitory view of inflation. And I thought…

コロナ禍のロックダウン中における短期の雇用補助の長短期の効果

というNBER論文が上がっている。Munich Research Institute for the Economics of Aging and SHARE Analysesというマックスプランク研究所の関係機関*1がまとめたもので、著者はその機関ないしマックスプランク研究所の研究者である。ungated版もそちらのサ…

ラムゼープランの導入

というNBER論文をトーマス・サージェントらが上げている(ungated版)。論文の原題は「Implementing a Ramsey Plan」で、著者はWei Jiang(香港科技大)、Thomas J. Sargent(NYU)、Neng Wang(長江商学院*1)。 以下はその要旨。 Lucas and Stokey (1983) …

オペレーション・ワープ・スピードはコロナワクチン以外のイノベーションを加速する手本となり得るか?

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Can Operation Warp Speed Serve as a Model for Accelerating Innovations Beyond COVID Vaccines?」で、著者はArielle D'Souza(Institute for Progress*1), Kend…

準備資産競争と世界財政循環

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Reserve Asset Competition and the Global Fiscal Cycle」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Robert J. Richmond(NYU)。 以下はその要旨。 Governments tend to increase thei…

税負担の変則性

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者のページ)。原題は「Tax Incidence Anomalies」で、著者はYoussef Benzarti(UCサンタバーバラ)。 以下はその要旨。 This paper reviews the literature on the incidence of consumption and…

双方向の範囲の経済

というNBER論文が上がっている(昨年6月時点のWPへのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Bilateral Economies of Scope」で、著者はYao Amber Li(香港科技大学)、Sichuang Xu(香港中文大学(深圳))、Stephen Yeaple(ペンシルベニア州立大)、T…

世界覇権と法外な特権

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Global Hegemony and Exorbitant Privilege」で、著者はCarolin Pflueger(シカゴ大)、Pierre Yared(コロンビア大)。 以下はその要旨。 We present a dynamic two…

クラウドコンピューティングとAIの業界動向と集中度への影響

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「The Impact of Cloud Computing and AI on Industry Dynamics and Concentration」で、著者はYao Lu(清華大)、Gordon M. Phillips(ダートマス大)、Jia Yang(清華大)。 以下はその要旨。 We …

ハリスさんは経済学者がご入用なのではないかな

マンキューが、「マンキュー「カマラ・ハリスに投票するけどさぁ・・・」 - himaginary’s diary」で紹介したエントリの続きのような表題のブログエントリ(原題は「Maybe Ms. Harris needs some economists」)を上げている。 The response to the rollout o…

外貨準備の需要(と供給)の急増のマクロ金融にとっての意味合い

というNBER論文が上がっている。原題は「Macro-Financial Implications of the Surging Global Demand (and Supply) of International Reserves」で、著者はEnrique G. Mendoza(ペンシルベニア大)、Vincenzo Quadrini(南カリフォルニア大)*1。 以下はそ…

産業政策としての妨害行為

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Sabotage as Industrial Policy」で、著者はJin Liu、Martin Rotemberg、Sharon Traiberman(いずれもNYU)。 以下はその要旨。 We characterize sabotage, exemplif…

マンキュー「カマラ・ハリスに投票するけどさぁ・・・」

「Kamala Harris...sigh」というブログエントリをマンキューが書いている。 I plan to vote for Kamala Harris. Why? Simply because she is not Donald Trump. In my judgment, Trump is (1) an authoritarian narcissist whose rhetoric is mean-spirited …

為替モデルは意外に当てはまりが良い件と、それらのモデルが昔は当てはまりが悪かった理由

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン;ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Exchange Rate Models are Better than You Think, and Why They Didn't Work in the Old Days」で、著者はCharles Engel(ウィスコンシン…

韓国の長期的な実質為替相場の動向の理解

というNBER論文をモーリス・オブズフェルドらが上げている(ungated(PIIE)版)。原題は「Understanding Korea’s Long-Run Real Exchange Rate Behavior」で、著者はDouglas A. Irwin(ダートマス大)、Maurice Obstfeld(ピーターソン研究所)。 以下はその…

中国の対外不均衡は公表データに反して実際には拡大を続けている

という趣旨の連ツイをBrad Setserが立てている。 It is almost impossible to describe how "weird" China's q2 balance of payments data is -- The basic balance (the current account plus FDI) turned really negative (-30b) for the first time, desp…

サマーズの日銀の金融引き締めへの評価

サマーズが7月末の日銀の利上げとその後の市場の動乱への対応について述べたコメントがネットの一部で話頭に上っている。以下はブルームバーグ日本語記事からの引用。 サマーズ氏は、特に新任のセントラルバンカーは初めて運転席に座るドライバーのように「…

中銀の長期のバランスシート:マクロの観点

というECB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The central bank’s balance sheet in the long run: a macro perspective 」で、著者はいずれも同行のPeter Karadi、Dominik Thaler、Oreste Tristani 。 以下はその要旨。 We study whether it is…

地球温暖化は世界成長をどの程度冷やすのか?

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン;ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「How Much Will Global Warming Cool Global Growth?」で、著者はIshan B. Nath(サンフランシスコ連銀)、Valerie A. Ramey(スタンフォー…

25歳時点の人生を想像しよう:ジェンダー規範への従順性とその後の人生の結果

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン、ungated版)。原題は「Imagine your Life at 25: Gender Conformity and Later-Life Outcomes」で、著者はSreevidya Ayyar(LSE)、Uta Bolt(ブリストル大)、Eric French(ケンブリッジ大)、Corma…

内延効果に沿った労働調整

というNBER論文が上がっている。原題は「Adjusting Labor Along The Intensive Margins」で、著者はDaniel S. Hamermesh(テキサス大オースティン校)、Jeff Biddle(ノートルダム大*1)。 以下はその要旨。 We expand the analysis of cyclical changes in …

資本の動きが遅い時の量的引き締め

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Quantitative Tightening with Slow-Moving Capital」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Jialu Sun(同)。 以下はその要旨。 We document shifts in investor composition durin…

米国の最近のインフレ上昇:貨幣数量説からの政策の教訓

というミネアポリス連銀論文(2024年7月Quarterly Review)をMostly Economicsが紹介している。原題は「The Recent Rise in US Inflation: Policy Lessons from the Quantity Theory」で、著者はHan Gao(ニュー・サウス・ウェールズ大)、Juan Pablo Nicoli…

反社会規範

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Anti-social norms」で、著者はLeopoldo Fergusson(ロス・アンデス大)、José-Alberto Guerra(同)、James A. Robinson(シカゴ大)。 以下はその要旨。 Since formal rules can only partially reduc…

ピケティらが陥った所得データの陥穽? ~陥穽に陥ったのはお前らの方だの巻~

前回エントリでリンクしたZucmanの連ツイを紹介する。 Delighted to release this paper on Auten & Splinter’s work, painstakingly going through their code & assumptions https://gabriel-zucman.eu/files/PSZ2024.pdf We uncover key mistakes—and sho…

ピケティらが陥った所得データの陥穽? ~パススルーをスルーしては駄目よの巻~

こちらのツイートで、「ピケティらが陥った所得データの陥穽?・続き - himaginary’s diary」で紹介したPiketty, Saez, and Zucman(PSZ)とAuten=Splinter(AS)の論争に進展があったことを知った。具体的には、AS論文がJournal of Political Economyの今…