サマーズの日銀の金融引き締めへの評価

サマーズが7月末の日銀の利上げとその後の市場の動乱への対応について述べたコメントがネットの一部で話頭に上っている。以下はブルームバーグ日本語記事からの引用。

サマーズ氏は、特に新任のセントラルバンカーは初めて運転席に座るドライバーのように「ハンドルを切り過ぎる」傾向があると話す。日銀の場合は「あれほど長期にわたってゼロ金利政策を続けた後だから、もっと緩やかに政策をシフトできたのではないだろうか」と指摘。7日の内田真一副総裁によるコメントに言及し、「日銀は市場に対応している姿勢をあそこまできっぱりと見せる必要はなかった」とサマーズ氏は述べた。
「オリンピックの言葉を借りれば、私なら日銀から『出来栄え点』を少し減点するだろう」とサマーズ氏は語った。

サマーズはこちらのツイートで当該のコメントを行ったブルームバーグテレビジョンの動画にリンクしている。この回の番組の主眼はトランプがFRBの金融政策に介入すると宣言したことを批判するもので、日銀については番組の終盤(9分強の番組の6分20秒過ぎ辺りから)で以下のような会話が交わされている(ブルームバーグテレビジョンの文字起こしを適宜修正)。

As we come to the end of the week, one of the things that people are saying about what precipitated the market fluctuations was what happened over in Japan, with the Bank of Japan really tightening monetary policy. They actually sort of backed off of it, saying they're not going to do any more right away given the market turmoil. You back in October on this program said they have to be careful as they move in a different direction on monetary policy, given how much borrowing there have been done in relatively cheap yen. Give us your sense, do you think the Bank of Japan is handling this correctly? What course should it set for itself?
You know, David, when -- I remember when I first learned to drive a car, and I remember when I taught my kids to drive a car. The first times they were driving a car, they tended to oversteer. They turn the steering wheel too much one way, and then they have to turn it and they want to correct that and they turn the steering wheel too much the other way. And we sort of make a wave down the road. I think there's a bit of a tendency for central bankers, particularly new central bankers, to do that kind of thing. And I think you saw a bit of that in Japan. I think the backing off after such a long time of such low interest rates could perhaps have been executed more gently. And then when it caused a big response, they didn't need to be quite as firm as they were about showing that they were responding to the markets. So I think, you know, it's the stuff Machiavelli taught leaders: you always want to look unruffled. You want your actions to be small and then have a cumulative impact, not the shouting when you already have a megaphone. And so I don't think it's ultimately going to be hugely consequential. And I think there was an adjustment that was going to need to come in Japanese monetary policy. But to use the language of this week's Olympics, I think I'd probably deduct a bit on style points from the Bank of Japan.
(拙訳)

司会
週末になり、市場の動揺をもたらした要因として人々が口にしていることの一つが日本で起きたことで、日銀が金融政策を実際に引き締めたことです。彼らは事実上それを撤回するかのような行動を取りました。市場の混乱に鑑みて、これ以上はすぐには何もしない、と言ったのです。この番組で昨年10月*1に貴兄は、相対的に安い円でどれだけの額が借り入れられているかに鑑みると、金融政策の方向転換を行う際に日銀は注意しなくてはならない、と言いました。貴兄のご意見をお聞かせ下さい。日銀はこの件に正しく対応しているとお思いですか? どのような進路を日銀は採るべきでしょうか?
サマーズ
そうですね、デビッド、私が車の運転を初めて学んだ時や、子供に車の運転を教えた時のことを思い出しますね。車を初めて運転する時、人はハンドルを切り過ぎる傾向にあります。一方にハンドルを切り過ぎて、それを戻さなくてはならない、修正せねば、ということで今度は反対方向にハンドルを切り過ぎるのです。その結果、道路上をいわば蛇行することになります。中央銀行家、特に新任の中央銀行家にもそうしたことをする傾向がややあると私は思います。日本でその一端を目にしたわけです。あれだけの低金利をあれだけ長く続けた後の政策転換は、もっと穏やかに実施できたのではないか、と思います。そしてそれが大きな反応を引き起こした後に、市場に反応しているのだ、ということをあれほど決然と示す必要はありませんでした。それはマキャベリが指導者に説いたことです。常に泰然としていなさい、というわけです。行動の振り幅は小さくして、累積的な形で影響を与えるようにするべきなのです。メガフォンを持っている時に叫ぶべきではありません。今回のことが最終的に非常に重大な結果をもたらすとは思いません。日本の金融政策において、いずれは調整が必要でした。ただ今週の五輪の用語を使えば、日銀のスタイルは少し減点、というところです。

*1:[2024/8/12追記]「back in October」を「昨年10月」と訳したが、サマーズ元米財務長官、日本での展開を注視-円や金利でリスク - Bloomberg英文元記事)によると2022年10月のことだったかもしれない(ただしこちらブルームバーグTVの2022/10/22ツイートのサマーズの動画クリップや2022/10/21付けのYoutubeのブルームバーグTV動画のような現在ネットに上がっている動画ではそうした言及を見つけることができなかった)。