最も効果的なナッジの選択:免疫の大規模実験の実証結果

およそ1年前にバナジー=デュフロ夫妻らのコロナ感染防止に関するRCTを紹介したことがあったが、そのワクチン版(ただし対象はコロナではなく麻疹)とでも言うべき表題のNBER論文が上がっている。原題は「Selecting the Most Effective Nudge: Evidence from a Large-Scale Experiment on Immunization」で、著者はAbhijit Banerjee(MIT)、Arun G. Chandrasekhar(スタンフォード大)、Suresh Dalpath(ハリヤーナー州)、Esther Duflo(MIT)、John Floretta(J-PAL*1)、Matthew O. Jackson(スタンフォード大)、Harini Kannan(J-PAL)、Francine N. Loza(同)、Anirudh Sankar(スタンフォード大)、Anna Schrimpf(J-PAL)、 Maheshwor Shrestha(世界銀行)。
以下はその要旨。

We evaluate a large-scale set of interventions to increase demand for immunization in Haryana, India. The policies under consideration include the two most frequently discussed tools—reminders and incentives—as well as an intervention inspired by the networks literature. We cross-randomize whether (a) individuals receive SMS reminders about upcoming vaccination drives; (b) individuals receive incentives for vaccinating their children; (c) influential individuals (information hubs, trusted individuals, or both) are asked to act as “ambassadors” receiving regular reminders to spread the word about immunization in their community. By taking into account different versions (or “dosages”) of each intervention, we obtain 75 unique policy combinations. We develop a new statistical technique—a smart pooling and pruning procedure—for finding a best policy from a large set, which also determines which policies are effective and the effect of the best policy. We proceed in two steps. First, we use a LASSO technique to collapse the data: we pool dosages of the same treatment if the data cannot reject that they had the same impact, and prune policies deemed ineffective. Second, using the remaining (pooled) policies, we estimate the effect of the best policy, accounting for the winner’s curse. The key outcomes are (i) the number of measles immunizations and (ii) the number of immunizations per dollar spent. The policy that has the largest impact (information hubs, SMS reminders, incentives that increase with each immunization) increases the number of immunizations by 44 % relative to the status quo. The most cost-effective policy (information hubs, SMS reminders, no incentives) increases the number of immunizations per dollar by 9.1%.
(拙訳)
我々は、インドのハリヤーナー州で実施した免疫への需要を高める大規模な一連の政策措置を評価した。評価対象となる政策は、最も多く俎上に上がる2つのツールであるリマインダーとインセンティブのほか、ネットワーク研究を基に考案された政策措置も含んでいる。我々は、(a)各人が来たるワクチン接種イベントについてSMSのリマインダーを受け取る、(b)各人が子供にワクチン接種するインセンティブを受け取る、(c)影響力のある個人(情報ハブ、信頼されている個人、もしくは両方)が「大使」として行動するように頼まれて自分の共同体に免疫に関するメッセージを広める定期的なリマインダーを受け取る、の組み合わせをランダム化した。各措置の異なるバージョン(ないし「投薬量」)も考慮すると、75の独自の政策組み合わせが得られる。我々は、大集合から最善の政策を発見するために、スマートプーリング・剪定手続きという新たな統計的技法を開発した。その手法では、どの政策が効果的かを決定するとともに、最善の政策の効果も決定される。我々は次の2段階で分析を行った。まず、LASSO技法を用いてデータを集約した。即ち、効果が同じであることがデータによって棄却できない場合、同じ措置の投薬量をプールし、また、効果が無いと見られる政策を剪定した。次に、残った(プールされた)政策を用いて、勝者の呪いを考慮しつつ*2、最善の政策の効果を推計した。得られる主要な数字は、(i)麻疹の免疫の数、および、(ii)支出1ドル当たりの免疫数、である。最も影響の大きかった政策(情報ハブ、SMSリマインダー、免疫ごとに増加するインセンティブ*3)は、現状に比べて免疫数を44%増やす。最も費用対効果の高かった政策(情報ハブ、SMSリマインダー、インセンティブなし)は、1ドルあたりの免疫数を9.1%増やす。

*1:Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab - Wikipedia

*2:本文では以下のように説明されている:
...precisely because the best policy has the maximum effect relative to all other alternatives, it is also likely to be selected as best per the data when there is a positive random shock. Therefore, a naive estimate of the effect of a best policy will be too large and hence an unadjusted estimator of it will be upward biased (Andrews et al., 2019). Using a method proposed by Andrews et al. (2019), and leveraging our pruning of the set of policies from the first stage, we correct for this bias and deliver appropriate estimates for the best policy.
(拙訳)
最善の政策は、他の選択肢すべてに比べて最大の効果を発揮するというまさにその理由によって、正のランダムショックがある場合にデータからも最善として選択される可能性が高い。そのため、最善策の効果をそのまま推計すると過大となり、未調整の推定値は上方に偏る(アンドリューズ et al., 2019[cf. ここ])。アンドリューズ et al.(2019)が提案した手法を用い、第一段階から政策集合に我々の剪定を適用することにより、我々はこのバイアスを修正し、最善の政策の適切な推計値を算出する。

*3:この接種プログラムでは麻疹も含めて5種のワクチン(BCG、3つの五種混合ワクチン(cf. Pentavalent vaccine - Wikipedia)、麻疹)を打つことになっている。

なぜコロナ禍前の失業率はあれほど低かったのか?

タイラー・コーエンが表題のエントリ(原題は「Why was pre-Covid unemployment so low?」)で、最近お気に入り*1のMarianna Kudlyak(SF連銀)が昨年2月に書いた論文へのリンクページ紹介している。論文のタイトルは「Why Is Current Unemployment So Low?」で、共著者はリッチモンド連銀の Andreas Hornstein。Kudlyakは昨年3/2付けのFRBSF Economic Letterでもその研究内容をまとめている(そちらの共著者はSF連銀のMitchell G. Ochse)。

主な内容は、失業率の推移を、失業者・就労者・非労働力人口の間の遷移と結び付いて分析したもの。その点では2010/12/16エントリで紹介したDavid Andolfattoやマイク・コンツァルの分析と似ているが、リーマンショック後からコロナ禍直前までの景気拡大期間を取り込んだことにより、新たな知見が得られている。具体的には:

  • 失業者から就労者、失業者から非労働力人口への遷移率は景気拡大期に上昇しており、それは直近の景気拡大期でも同様*2。ただ、その上昇は過去に比べ特に大きいわけではなく、例えば2019年末の失業者から就労者への遷移率は2007年のピークより下に留まっている(図1パネルA)。
  • 就労者から失業者、非労働力人口から失業者への遷移率は景気拡大期には低下する*3。こちらの遷移率は2019年末には過去最低水準にあり、特に就労者から失業者への遷移率は顕著な長期低下傾向を示している(図1パネルB)。
  • 就労者から非労働力人口、非労働力人口から就労者への遷移率は、失業者への入出流に直接関係しないが、就労者数と非労働力人口を変えることによって間接的に失業率に影響する。両遷移率はトレンドからあまり乖離しておらず、非労働力人口からの就職率は2019年末までにリーマンショック前のピークに達していない*4(図1パネルC)。

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 (パネルA、BはFRBSF Economic Letter、パネルCは論文から)


Kudlyakらはさらに、定常状態の失業率をこれら6つの遷移率で表現し、失業率への各遷移率の寄与度を測る、という分析を行っている。具体的には、失業者数と就労者数の変化は遷移率λを使って以下のように表せる(Uが失業者数、Eが就労者数、Nが非労働力人口で、遷移率の上添字は、例えばEUは就労から失業への遷移を表す。式番号は論文の式番号)。
dUt = λEUt Et + λNUt Nt − (λUEt + λUNt)Ut      … (1)
dEt = λUEt Ut + λNEt Nt − (λEUt + λENt)Et       … (2)
定常状態では(1)と(2)はいずれもゼロになるので、両式からNtを消去して以下の式が導かれる*5
EUt λNEt + λEUt λNUt + λENt λNUt) Et = (λUEt λNEt+ λUNt λNEt + λUEtλNUt)Ut
よって定常状態の失業率は
ut = Ut / (Ut + Et)
  = (λEUt λNEt + λEUt λNUt + λENt λNUt) / (λEUt λNEt + λEUt λNUt + λENt λNUt + λUEt λNEt+ λUNt λNEt + λUEtλNUt)

この関係を基に寄与度分解を行ったのが以下の図である(図はFRBSF Economic Letterから)。
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これについてKudlyakは以下の2点を指摘している。

  • 図では失業率(金線)、就職率寄与度(緑線)、離職率寄与度(青線)のサンプル平均からの乖離を示しているが、最近は離職率寄与度が下振れている。
  • これは過去の景気回復期と異なる。過去の景気循環のピークでは、専ら就職率の上昇が失業率を押し下げていた。

Kudlyakはまた、失業率の長期的な変化に対する遷移率の変化の寄与度の分解も行っている(図は論文から)。
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Kudlyakによると、2019年末の失業率は低い水準にあるが、遷移率のトレンドから近似的に作成した定常状態の失業率も下がっているため、実際の失業率とトレンド失業率との差で見た労働市場の逼迫度は過去のピーク時(2000年、2007年)とそれほど変わっていない(2019年末の実際の失業率が2007年より0.9%ポイント下がったのに対し、トレンド失業率は1.2%ポイント低下して4.4%になっている)。
また、2007年から2019年のトレンド失業率の低下を寄与度分解すると、失業者への遷移の低下でほぼ説明できたとのことである。実際の寄与度の数字を論文の表2から引っ張ってくると以下のようになっているが、失業者への遷移の内訳では、就労者から失業者、非労働力人口から失業者の寄与度が概ね半々となっている。

遷移 寄与度(%)
EU 57
NU 51
UE 9
UN 15
NE -8
EN -23

*1:cf. 前回エントリ

*2:cf. 2010/12/16エントリで紹介したコンツァルの図では上がり始めたところまでしか描かれていない。

*3:cf. コンツァルの図では非労働力人口から失業者への遷移率がリーマンショックの景気後退期に上がったところまでしか描かれていない。

*4:cf. コンツァルの図では非労働力人口から就労者への遷移率がリーマンショックの景気後退期に下がったところまでしか描かれていない。

*5:論文では定常状態の記号はチルダを上に付与しているが、ここでは省略。

雇用の回復速度とZMP仮説

10年前にタイラー・コーエンのZMP労働者(Zero marginal product workers=限界生産力がゼロの労働者)仮説がクルーグマンらに叩かれている様を紹介したことがあったが、本ブログで先月末に紹介したHall=Kudlyakの研究*1などを基に、コーエンが、皆に叩かれたが自分の仮説は正しかった、と10年越しの反撃を繰り出している。曰く、それらの研究が示すところによれば、今回の不況による雇用の喪失は、名目需要が回復しても簡単には戻らない。何となれば、職を失った人の中には、とにかくもう働きたくない、職探しをするのも嫌だ、という人が多くいるからである。そのように面接にすら来ない人の限界生産力がどうしてゼロより大きいことがあろうか? このような労働者側の供給要因によって雇用の回復は遅くなっているのである。

コーエンは、これは前回の不況時も同様だったとして、前述のHall=Kudlyak論文の著者の一人であるMarianna Kudlyak(SF連銀)の2012年の共著論文*2と、セントルイス連銀の今年4月の論文*3も引いている。前者は、大不況より前の不況では被雇用者と失業者の間の流れを見れば失業率の推移が理解できたが、大不況では失業者と非労働力人口の間の流れも見る必要がある、と述べている。後者では、労働者を以下の3つに分類し、このうちのγ労働者が少数派ながら大不況時の労働市場のミクロ・マクロの不思議な現象をもたらした、としている。

  • α労働者:同じ職に2年以上留まり、失業すると通常1四半期以内に次の職を見つける。全労働者の半分以上を占める。大不況時にはα労働者の余剰失業は僅かしか上昇せず、それもすぐに吸収された。
  • γ労働者:2年以上同じ職に留まる確率は低く、失業すると1年以上無職に留まる可能性が高い。全労働者の1/5以下。大不況時にはγ労働者の失業は20%ポイント上昇し、ピークの4年後も吸収されなかった。
  • β労働者:αとγの中間。


後続エントリでコーエンは、クルーグマンのツイート*4にドヤ顔でリンクし*5、Kudlyakの優れた分析能力を改めて称賛している。

*1:コーエンの紹介エントリはこちら。そこでコーエンはKudlyakの研究に賛辞を送っている。

*2:この時の共著者はリッチモンド連銀のFelipe F. Schwartzmanで、論文のタイトルは「Accounting for Unemployment in the Great Recession: Nonparticipation Matters」。

*3:著者はVictoria Gregory(セントルイス連銀)、Guido Menzio(NYU)、David Wiczer(ストーニーブルック大)で、論文のタイトルは「The Alpha Beta Gamma of the Labor Market」。コーエンの紹介エントリはこちら

*4:そこでクルーグマンは、Hall=Kudlyak論文を取り上げ、雇用回復には速度制限が掛かっているようだと述べている。ちなみにクルーグマンはピーター・ダイアモンドに同論文を紹介されたとの由。

*5:「Paul Krugman cries “Uncle!”(ポール・クルーグマンは「参った!」と言っている)」というコメントを添えている。

技術革新が道を踏み外す時:技術退歩とオピオイド禍

エドワード・グレイザーの5月のNBER論文をもう一丁。以下はDavid M. Cutler、Edward L. Glaeser(いずれもハーバード大)による表題の論文(原題は「When Innovation Goes Wrong: Technological Regress and the Opioid Epidemic」)の要旨。

The fivefold increase in opioid deaths between 2000 and 2017 rivals even the COVID-19 pandemic as a health crisis for America. Why did it happen? Measures of demand for pain relief – physical pain and despair – are high but largely unchanging. The primary shift is in supply, primarily of new forms of allegedly safer narcotics. These new pain relievers flowed mostly to areas with more pain, but since their apparent safety was an illusion, opioid deaths followed. By the end of the 2000s, restrictions on legal opioids led to further supply-side innovations which created the burgeoning illegal market that accounts for the bulk of opioid deaths today. Because opioid use is easier to start than end, America’s opioid epidemic is likely to persist for some time.
(拙訳)
2000年から2017年に掛けてオピオイドによる死が5倍に増えたことは、米国の医療危機としてはコロナ禍にさえ匹敵する。それはどのように起きたのだろうか? 肉体的苦痛および絶望に対する鎮痛剤への需要を示す指標は、高水準で推移したが、概ね一定であった。最大の変化は、供給面で生じた。安全性が高まったとされる新たな形の麻薬がその中心である。そうした新規の鎮痛剤の大半が、患者の苦痛がより大きい現場に流れたが、その見せかけの安全性が幻想だったことにより、オピオイドによる死が結果として生じた。2000年代終わり頃には、合法的なオピオイドへの規制が供給面でのさらなる技術革新をもたらし、それによって今日のオピオイドによる死のかなりの割合を占めている拡大著しい非合法市場がもたらされた。オピオイドの使用は終わらせるよりも始めることが容易であるため、米国のオピオイド禍は当面続く可能性が高い。

今日の発展途上国の都市は、都市の歴史から何を学べるか?

エドワード・グレイザー(Edward L. Glaeser)の今度は5月の単著NBER論文を紹介してみる。以下は表題の論文(原題は「What Can Developing Cities Today Learn From the Urban Past?」)の要旨。

The downsides of density, including traffic congestion, contagious disease and crime, were common in Victorian London and classical Rome, just as they are today in Sao Paulo and Lagos. Our urban past provides lessons for developing world cities today. The first lesson, that I highlight, is that political power, not commerce, has long driven the growth of the world’s largest cities, and that fact remains true for many developing world mega-cities today. The second lesson is that while market access fundamentally shaped the cities of the past, the power of transport to determine urban fortunes has declined. Transportation infrastructure no longer transforms cities unless it is accompanied by complementary investments, such as education. The third lesson is that infrastructure, such as sewers and roads, functions best when combined with incentives, which can ensure the adoption of sewers and discourage the abuse of highways. The fourth lesson is that the development of many western cities relied on a nexus of property rights for landowners, including the right to build, buy, alienate, mortgage and rent, that are far more limited in many developing world cities. The fifth lesson is that there is a menu of institutions for managing infrastructure, including direct public control, independent public authorities and public private partnerships. Local conditions, especially the level of public capacity, will determine the best choice among those institutions.
(拙訳)
交通渋滞や伝染病や犯罪といった人口密度の高さの負の側面は、今日のサンパウロラゴスと同様に、ビクトリア時代のロンドンや古代ローマでもありふれたものだった。我々の都市の過去の歴史は、今日の発展途上国の都市に教訓を与える。私が焦点を当てる第一の教訓は、商業ではなく政治の力が世界の大都市の成長を長期に亘って牽引してきており、それは今日の多くの発展途上国のメガシティについても依然として同様である、というものである。第二の教訓は、市場へのアクセスが過去の都市の基礎を形成したが、輸送が都市の富を決定する力は低下した、というものである。教育などの補完的な投資を伴わない限り、輸送インフラはもはや都市を変化させることはない*1。第三の教訓は、下水や道路のようなインフラは、下水の導入を確実にし、高速道路の誤用を封じるインセンティブと結び付いた時に最も機能する、というものである。第四の教訓は、多くの西洋の都市の発展は、建築、購入、譲渡、抵当、賃貸の権利などの地主の一連の所有権に依存していた、というものである。そうした権利は多くの発展途上国では大きく制限されている*2。第五の教訓は、インフラを管理する制度には、直接的な公的管理、独立した公的機関、官民のパートナーシップといったメニューが存在する、というものである。地域の条件、とりわけ公的部門の能力水準が、それらの制度から最善の選択を決定することになる。

*1:ここで紹介したWPからするとこの話はやや意外に映る。

*2:cf. ここで紹介したNBER 論文(最新版)。

経済分析とインフラ投資

エドワード・グレイザーの昨年末のNBER論文をまたもう一丁。以下はEdward L. Glaeser(ハーバード大)、James M. Poterba(MIT)による表題の論文(原題は「Economic Analysis and Infrastructure Investment」)の要旨。

This paper summarizes economic research on investment in public infrastructure and introduces the findings of several new studies on this topic. It begins with a review of several potential justifications for the public sector’s involvement in building, financing, and operating infrastructure, including limitations of private capital markets, externalities, and the control of natural monopolies. It then describes the conditions that characterize an optimal infrastructure investment program, emphasizing the need to extend project-based microeconomic cost-benefit analysis to incorporate the value of economy-wide macroeconomic and other externalities. It notes the importance of efficient use of infrastructure capital, and discusses three areas -- procurement, project management, and expenditure on externality mitigation – where further research could identify paths to efficiency improvement. It concludes by identifying several trends that have emerged since outbreak of the COVID-19 pandemic that may have long-term effects on the role of both physical and digital infrastructure in the U.S. economy.
(拙訳)
本稿は公的インフラ投資についての経済研究を要約し、このテーマの幾つかの新たな研究の発見を紹介する。まず公的部門がインフラの構築、ファイナンス、運営に係わることについて、考えられる幾つかの正当化を概観する。その中には、民間資本市場の限界、外部性、ならびに自然独占のコントロールが含まれる。それから、最適なインフラ投資計画を特徴付ける条件を説明し、ミクロ経済的な費用便益分析を拡張して経済全体のマクロ経済的な外部性やその他の外部性の価値を取り込む必要性を強調する。さらに、インフラ資本の効率的な使用の重要性を指摘し、さらなる研究が効率性を改善する道を明らかにできる3つの領域――調達、プロジェクトマネージメント、外部性の緩和への支出――について論じる。最後に、COVID-19パンデミックの発生以降に出現した、米国の物理的およびデジタルのインフラ双方に長期的な影響を与えるであろう幾つかのトレンドを明らかにする。

これは、両者が主催して2019年11月15-16日に開いたコンファレンスを基にした論文集の序章で、同書は今年11月に出版予定のようである。

ジェントリフィケーションと近隣の変貌:Yelpによる実証結果

エドワード・グレイザーの昨年末のNBER論文をもう一丁。以下はEdward L. Glaeser、Michael Luca、Erica Moszkowski(いずれもハーバード大)による表題の論文ungated版、原題は「Gentrification and Neighborhood Change: Evidence from Yelp」)の要旨。

How does gentrification transform neighborhoods? Gentrification can harm current residents by increasing rental costs and by eliminating old amenities, including distinctive local stores. Rising rents represent redistribution from tenants to landlords and can therefore be offset with targeted transfers, but the destruction of neighborhood character can – in principle – reduce overall social surplus. Using Census and Yelp data from five cities, we document that while gentrification is associated with an increase in the number of retail establishments overall, it is also associated with higher rates of business closure and higher rates of transition to higher price points. In Chicago and Los Angeles especially, non-gentrifying poorer communities have dramatically lower turnover than richer or gentrifying communities. However, the primary transitions appear to the replacement of stores that sell tradable goods with stores that sell non-tradable services. That transition just seems to be slower in poor communities that do not gentrify. Consequently, the business closures that come with gentrification seem to reflect the global impact of electronic commerce more than the replacement of idiosyncratic neighborhood services with generic luxury goods.
(拙訳)
ジェントリフィケーション*1はどのように近隣を変貌させるだろうか? ジェントリフィケーションは、賃料を上げ、地域独自の商店などの古いアメニティを無くすことにより、現在の住人の損害を与え得る。賃料の上昇は借地人から地主への再分配となるため、対象を定めた所得移転によって相殺できるが、近隣の特徴の破壊は、原理的には社会的余剰全体の減少となる。5つの都市のセンサスとYelpデータを用いて我々は、ジェントリフィケーションは小売り施設の総数の増加と結び付いているものの、閉店と価格の高い店への転換の割合の上昇とも結び付いていることを示す。特にシカゴとロサンゼルスでは、ジェントリフィケーションされない貧しい地区は、富裕な地区やジェントリフィケーションされる地区よりも劇的に回転率が低い。しかしながら、店の主な入れ替わりは、貿易財を商う店が非貿易財であるサービスを商う店で置き換わることのようである。そうした入れ替わりは、ジェントリフィケーションされない貧しい地区ではペースがとにかく遅いように思われる。従って、ジェントリフィケーションに伴う閉店は、地域独自の近隣向けサービスが一般的な高級品に置き換わったことよりも、電子商取引の世界的な影響を反映しているように思われる。