2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

構造計量経済モデルへの批判はフェアではなかった?

29、30日エントリでは、ロバート・ワルドマンのAngry Bearエントリ経由でマクロモデルに関するデロングとブランシャールの見解を紹介したが、同じエントリでワルドマンは、イェール大学のレイ・フェアの見解にもリンクしている(Economist's Viewもフェアの…

DSGEは完全に理解するには内容が濃すぎる

昨日紹介したデロングのモデル論は、一昨年の3/25のLSEのフォーラムの質疑応答における以下のブランシャールの発言を受けたものである*1。 Mervyn King: Olivier [Blanchard], is it just a question of getting the right details in the financial models,…

理解できないモデルを研究することの意味

についてデロングが問い掛けている(H/T ロバート・ワルドマン)。 There is a rationale for studying a model that we do not understand–if and only if it makes predictions that fit the world. If one has such a model that makes reliable predicti…

流動性を減らすと預金額が増える?

「Self Control and Commitment: Can Decreasing the Liquidity of a Savings Account Increase Deposits?」というNBER論文が上がっている。著者はJohn Beshears(ハーバード大)、James J. Choi(イェール大)、Christopher Harris(ケンブリッジ大)、Davi…

信念の相関がリターンの相関をもたらす

「Correlated Beliefs, Returns, and Stock Market Volatility」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はJoel M. David(USC)、Ina Simonovska(UCデービス)。 以下はその要旨。 Firm-level stock returns exhibit comovement above that in fu…

非対称的な通貨同盟における国境を越えた銀行業務と景気循環

という論文をハンブルク大学のLena DrägerとChristian R. Proañoが書いている。原題は「Cross-Border Banking and Business Cycles in Asymmetric Currency Unions」で、以下はその要旨。 Against the background of the recent housing boom and bust in c…

為替相場と資本ストックの関係

「Not so Disconnected: Exchange Rates and the Capital Stock」というNBER論文をTarek Alexander Hassan(シカゴ大)、Thomas Mertens(NYU)、Tony Zhang(シカゴ大)が書いている。 以下はその要旨。 We investigate the link between stochastic proper…

社会主義が資本主義を平等に保ったのか?

というブログエントリをブランコ・ミラノヴィッチが書いている(原題は「Did socialism keep capitalism equal?」;H/T Economist's View)。 以下はその一節。 The socialist story recently received a boost from two papers. Both argue that the demons…

社会主義者呼ばわりされたフリードマン

George Selginが、ケイトー研究所のブログで、オーストリア学派からの批判に対しフリードマンを擁護している(H/T Mostly Economics)。 Alas, far from being rare, harsh opinions about Friedman are easy to come by among the more uncompromising crit…

21世紀の自由からの逃走

ニキータ・フルシチョフの孫娘*1であるニーナ・フルシチョワ(Nina L. Khrushcheva)ニュースクール大学教授が、Project Syndicate論説で新たな全体主義の台頭に警鐘を鳴らしている(H/T Mostly Economics)*2。 Even though economic conditions were dire …

世界の政策金利を動かすもの

について調べた論文「What drives the global official/policy interest rate?」がオーストラリア国立大学(ANU)応用マクロ経済分析センター(Centre for Applied Macroeconomic Analysis[CAMA])から出ている。著者はRonald A. Rattia(西シドニー大学)…

経済学者と実社会

という小論がリッチモンド連銀のEcon Focusに掲載されている(H/T Mostly Economics)。著者はTim Sablik*1。 以下はその冒頭部。 How important is it for economists to gain real experience with the markets they study in theory? Many of the founder…

レーニンとマルクス:健全貨幣主義者?

という記事をミーゼス研究所のLouis Rouanetが同研究所のサイトに書いている(H/T Mostly Economics、原題は「Lenin and Marx: Sound Money Advocates?」)。 以下はその冒頭部。 Most modern socialists are in favor of inflation, because it is supposed…

修道士、紳士、および実業家:英国修道院の解散の長期的影響

というNBER論文が上がっている。原題は「Monks, Gents and Industrialists: The Long-Run Impact of the Dissolution of the English Monasteries」で、著者はLeander Heldring(オックスフォード大)、James A. Robinson(シカゴ大)、Sebastian Vollmer(…

対称性と歪度

Dave Gilesが、歪度がゼロであることは確率分布が対称的であることの必要条件であるが、十分条件ではない、として、以下の例を示している。これは、N(-2,1)とN(1,2)の2つの正規分布を1:2のウエイトで加重した混合分布である。この時、上図の通り分布は非対称…

FRB最悪の予測者

経済指標の結果の解説や将来予測の仕事に絡めた日本のエコノミストとIMFやFedの欧米エコノミストとの対比がこちらのツイートで取り上げられているのを読んで、FRB理事の予測者としての成績を取り上げたデロングのブログ記事を思い出した(H/T Economist's Vi…

フリードマンが受けた試験

ベルリン自由大学のIrving Collierが、Institute for New Economic Thinking(INET)の援助を受けて、1880年代から1950年代の米国の大学および大学院での経済学教育に関する資料を収集したブログ「Economics in the rear view mirror」を立ち上げた(H/T Mos…

日本の系列システムとシリコンバレーの共通点

Economist's ViewがサマーズのWaPo論説から以下の一節を引用している。 Matters are not as clear as is often suggested regarding short-term-driven “quarterly capitalism,” and I believe skepticism is appropriate toward arguments that horizons sh…

マクロプルーデンシャル政策の限界

についてポーランド国立銀行のMarcin Kolasaが書いている。論文の原題は「On the limits of macroprudential policy」。 以下はその要旨。 This paper considers a canonical New Keynesian macrofinancial model to analyze how macroprudential policy to…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第6弾)

第1弾や第4弾と同様、マンキューはクルーグマンを批判した論説をリンクしただけであり、しかもクルーグマンは反応していないが、一応拾っておきます。 グレッグ君 誰がギリシャにアドバイスしていたのかな? リンクされたヤニス・パレオロゴス(カティメリニ…

頻度主義の信頼区間が破綻する時

昨日のエントリで「これまで長年使われてきた検定がそれほど間違っているはずはない」というノアピニオン氏の意見を紹介したが、それに対してコメンターの一人が、以下のエピソードを紹介している。 I first presented this result to a recent convention o…

p値叩きの反動

についてノアピニオン氏が書いている。p値叩きは一部の心理学の学術誌が有意性検定を禁止するところまで行ったが、こうした動きは行き過ぎであり、これまで長年使われてきた検定がそれほど間違っているはずはない、とノアピニオン氏は言う。以下は氏がそう考…

HPフィルタと単位根

Dave Gilesが表題のエントリ(原題は「The H-P Filter and Unit Roots」)で、以下のように記している。 There's a widespread belief that application of the H-P filter will not only isolate the deterministic trend in a series, but it will also re…

皮肉と科学

前回エントリの末尾で、ポール・ローマーがルーカスの「変節」を指摘したと書いた。具体的には、ローマーは、ファインマン的誠実さとスティグラー的確信という考え方を用いて、クルーグマンのこのエントリの自分なりの解釈を試みている。 Here’s how I would…

スティグラー的確信とファインマン的誠実さ

をポール・ローマーが対比させている。 ファインマン的誠実さについて、彼は前回エントリで「カーゴ・カルト・サイエンス」(カリフォルニア工科大学1974年卒業式式辞)から引用している。 It’s a kind of scientific integrity, a principle of scientific …

マンキュー政治学

炭素税を支持するマンキューが、炭素税を他の税の減税に使わずに支出の増加に使おうとする左派の動きを批判した。それに対しEnvironmental Economicsブログのジョン・ホワイトヘッドが、左派から見た場合、炭素税が富裕層の減税のためのトロイの木馬になると…

フリードマン「然るべき人を選出しさえすれば良いわけではない」

Townhall.comのミルトン・フリードマン生誕103年を記念した20の箴言集記事から、マンキューが以下を引用している。 I do not believe that the solution to our problem is simply to elect the right people. The important thing is to establish a politi…

カーネマンが自分の知的遺産として記憶されたいこと

引き続きカーネマンのガーディアン紙インタビュー記事から。カーネマンの心理学で世界を変えることができないにしても、改善はできるかも、という話。 But there are more modest ways his insights can help us avoid making mistakes. He advises, for exa…

カーネマンが魔法の杖を持っていたとしたら…

昨日エントリで紹介したガーディアン記事は、「Daniel Kahneman: ‘What would I eliminate if I had a magic wand? Overconfidence’」と題されていた。以下は、そのタイトルの元となった箇所の引用(Mostly Economicsが引用した箇所でもある)。 What’s fasc…

カーネマンとパレスチナ問題

先月半ばのガーディアンにダニエル・カーネマンのインタビュー記事が掲載されている(H/T Mostly Economics)。そこではナチスの迫害から逃げ回った少年時代が語られた後に、イスラエルでのパレスチナ問題に関する彼の見方が示されている。 As an Israeli, t…