Dave Gilesが、歪度がゼロであることは確率分布が対称的であることの必要条件であるが、十分条件ではない、として、以下の例を示している。
これは、N(-2,1)とN(1,2)の2つの正規分布を1:2のウエイトで加重した混合分布である。この時、上図の通り分布は非対称的だが、平均も歪度もゼロとなる。
この結果を示した元論文*1では、k個の正規分布N(μk,σk2)をウエイトπkで合成した分布の3次のモーメントは、μを1次のモーメント(=平均)として、
Σπk[3σk2(μk-μ)+(μk-μ)3]
になることが示されている。
これに上の数値を当てはめると、平均はゼロなので、
(1/3)×[3×1×(-2-0)+(-2-0)3] + (2/3)×[3×2×(1-0)+(1-0)3]
=(1/3)×(-14) + (2/3)×(7)
となり、確かにゼロとなる。
Gilesはその他、離散的なスチューデントのt分布でも、分布は非対称的だが歪度がゼロになることを示した論文*2にリンクしている。
なお、この場合の歪度はγ1 = E[(X - μ) / σ]3という通常定義されるものだが、歪度の定義はそれに限られないことをGilesは指摘している。例えば、 (平均−中位値)/標準偏差 という指標が使われることもあるという*3。Gilesは触れていないが、上図の例では中位値は0.0868になるので、その定義による歪度はマイナスになる。
*1:Meijer, E., 2000. An asymmetric distribution with zero skewness. Mimeo., University of Groningen.
*2:Ord, J. K., 1968. The discrete Student's t distribution. Annals of Mathematical Statistics, 39, 1513-1516.
*3:そうした指標のサーベイとしてvon Hippel, P., 2010. Skewness. In M. Lovric, ed., International Encyclopedia of Statistical Science. Springer, New York.にリンクしている。