2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ブレグジットがトランピットより高く付く理由

クルーグマンが22日エントリで、読者からの質問に応えて、ブレグジットの経済的損失が貿易戦争(ここで彼はそれをTrumpit=トランピットと名付けている)よりも大きくなる、という点を以下の図で説明している。これは、ここで紹介した17日エントリにおける政…

インドサッカーが凋落した理由

前回リンクしたMostly Economicsは、次のエントリで、インドにサッカーが根付かなかった理由をやはり経済に求めたlivemint記事を紹介している。同記事によると、独立前は英国の影響でインドでもサッカーが盛んで、インドのプレミアリーグであるIFAシールドの…

ドイツ代表に東独出身者がほとんどいない理由

ドイツW杯敗退の報を聞いて、少し前にMostly Economicsが取り上げていたこちらの記事を思い出した。著者はミドルベリー大学で言語学を教えるPer Urlaubで、今大会のドイツ代表に東独地域の出身者がトニ・クロース(Toni Kroos)しかいない背景を分析している…

国家主義者としてのトランプ

マンキューがブログで、トランプ政権の移民政策に対する憤りを露わにしている。 22日には、David BrooksのNYT記事から以下の箇所を引用したエントリを上げている。 For centuries, conservatives have repeated a specific critique against state power. St…

ミクロ経済の不均一性とマクロ経済のショック

20日や22日に続き、不均一主体関係のNBER論文をもう一丁(ungated版)。以下はここで以前の論文にリンクしたGreg Kaplan(シカゴ大)とGiovanni L. Violante(プリンストン大)のコンビによる表題の論文(原題は「Microeconomic Heterogeneity and Macroecon…

何が起きたのか:大不況における金融要因

バーナンキとのファイナンシャルアクセラレーターの研究で有名な*1Mark GertlerとSimon Gilchrist(いずれもNYU)のコンビが、表題のNBER論文(原題は「What Happened: Financial Factors in the Great Recession」)を上げている(ungated版)。 以下はその…

勃興しつつある中国を西側はどのように判断すべきか

2週間ほど前のエントリで、デロングが中国の直面する問題について以下のように書いている。 The big problem China will face in a decade is this: an aging near-absolute monarch who does not dare dismount is itself a huge source of instability. Th…

貿易戦争とネイピア数

6/17エントリでクルーグマンが、貿易戦争の帰結について考察し、以下の予測を行っている。 関税は30-60%の範囲となる 世界の貿易は7割減少する 世界のGDPは2-3%減少する 関税についてクルーグマンは、最適関税を理論的に導いたOssaやNicita et alの試算(Oss…

不均一主体と投入・生産ネットワークによるマクロ経済学の分解

ここやここでその研究を紹介したDavid Rezza Baqaee(LSE)とEmmanuel Farhi(ハーバード大)のコンビが、最近流行りの不均一主体と、生産関数の産業レベルの分解とを同時に取り入れたモデルに関する表題のNBER論文(原題は「Unbundling Macroeconomics via …

住宅資産効果:長期的視点

といNBER論文をエミ・ナカムラ、ジョン・スタインソンらが書いている(ungated版)。原題は「Housing Wealth Effects: The Long View」で、著者はAdam M. Guren(ボストン大)、Alisdair McKay(同)、Emi Nakamura(コロンビア大)、Jón Steinsson(同)。 …

格差、景気循環、および金融財政政策

一昨日エントリで金融政策と再分配に関する論文を紹介したが、意外にも(?)トーマス・サージェントらが似たような主旨の表題のNBER論文を書いている。論文の原題は「Inequality, Business Cycles, and Monetary-Fiscal Policy」で、著者はAnmol Bhandari(…

世界金融循環とリスクプレミアム

というNBER論文が上がっている(昨年のIMFのセミナーでのungated版)。原題は「Global Financial Cycles and Risk Premiums」で、著者はÒscar Jordà(SF連銀)、Moritz Schularick(ボン大)、Alan M. Taylor(UCデービス)、Felix Ward(ボン大)。 This pa…

金融政策と再分配経路

Equitable Growthのここやここの記事で、所得再分配を通じた金融政策の伝達経路に焦点を当てた表題の論文(NBER版、ungated版)を推している。論文の原題は「Monetary Policy and the Redistribution Channel」で、著者はスタンフォード大のAdrien Auclert。…

金融政策で潜在成長力は上げられる

「Rethinking the Fed’s 2 percent inflation target(FRBの2%インフレ目標再考)」と題されたブルッキングス研究所の小論*1の中の「The natural rate hypothesis straitjacket(自然失業率仮説という拘束衣)」という節で、サマーズが、自然失業率仮説の登…

大インフレ期の教訓は読み間違えられたのか?

デロングが、インフレと失業率に関する議論において、歴史の教訓が読み間違えられているのではないか、と論じている。 The public discussion about inflation and unemployment appears to me to be substantially awry. It appears to incorporate two, an…

ブレークスルー研究への資金提供:「APRA」モデルの展望と課題

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Funding Breakthrough Research: Promises and Challenges of the "ARPA Model"」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Erica Fuchs(カーネギーメロン大)、Anna Goldstein(カーネギー研究所)、Michael …

国境税のマクロ経済学

少し前に話題になった国境調整税に関して分析した表題のNBER論文が出ている(ungated版)。原題は「The Macroeconomics of Border Taxes」で、著者はOmar Barbiero(ハーバード大)、Emmanuel Farhi(同)、Gita Gopinath(同)、Oleg Itskhoki(プリンスト…

法の下の平等の理論

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「A Theory of Equality Before the Law」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Alexander Wolitzky(同)。 以下はその要旨。 We propose a model of the emergence of equality before the law…

AIと経済

先月末にオバマ政権でCEA委員長を務めたオースタン・グールズビーのAIに関するNBER論文を紹介したが、同じくオバマ政権でCEA委員長を務めたジェイソン・ファーマンもAIに関するNBER論文を上げている。以下はJason Furman(ハーバード大)、Robert Seamans(N…

計画期間が有限の場合の金融政策分析

というNBER論文をマイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)が上げている(ungated版)。原題は「Monetary Policy Analysis when Planning Horizons are Finite」で、今年初めにアメリカ経済学会でのプレゼンの模様についてunrepresentative agentさんが…

フリードマンの自然失業率仮説が「大コケした」理由

フリードマンのAEA会長講演が50周年を機に改めて話題になったが(cf. ここ、ここ、ここ)、Review of Keynesian Economicsがその特集号を出すという。ロジャー・ファーマーが同誌に寄稿した小論を自ブログで紹介している。エントリの中でファーマーは、金融…

経済学者と法律家と中央銀行と最高裁

NY連銀総裁を退任するウィリアム・ダドリーが、同連銀のブログで、経済学者と法律家の考え方の違いについて語っている(H/T Mostly Economics)。 Q: Lawyers sometimes refer to ‘thinking like a lawyer.’ How would you describe what it means to ‘think…

生産性と給料:リンクは壊れたのか?

サマーズとハーバードのPhD candidateのAnna Stansburyが、ここでリンクした表題の共著論文(原題は「Productivity and Pay: Is the Link Broken?」)を改訂している(H/T Economist's View)。 以下はその要旨。 Since 1973 median compensation in the Uni…

企業価値の選択効果とタレント効果

というNBER論文が上がっている。原題は「Selection versus Talent Effects on Firm Value」で、著者はBriana Chang(ウィスコンシン大)、Harrison Hong(コロンビア大)。 以下はその要旨。 Measuring the value of labor-market hires for stock prices, b…

誰が生産性成長の恩恵を受けるか? 局地的なTFP成長が賃金、賃貸料、および格差に与える直接的ならびに間接的な影響

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Who Benefits From Productivity Growth? Direct and Indirect Effects of Local TFP Growth on Wages, Rents, and Inequality」で、著者はRichard Hornbeck(シカゴ大)、Enrico Moretti(UCバークレー…

税と成長:戦間期の英国からの新たな記述的実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「Taxes and Growth: New Narrative Evidence from Interwar Britain」で、著者はJames Cloyne(UCデービス)、Nicholas Dimsdale(オックスフォード)、Natacha Postel-Vinay(LSE)。 以下はその要旨。 The impact of…

地球融氷? グリーンランド氷床融解の経済学

というNBER論文をノードハウスが書いている(ungated版、原題は「Global Melting? The Economics of Disintegration of the Greenland Ice Sheet」)。以下はその要旨。 Concerns about the impact on large-scale earth systems have taken center stage in…

金利が資本の生産性を決めるのであってその逆ではない

とミーゼス研究所のブログでヘスース・ウエルタ・デ・ソト(Jesús Huerta de Soto)*1が主張している*2(H/T Mostly Economics)。 Thus the origin and existence of interest must be independent of capital goods, and must rest, as we have already st…

景気拡大と経営学の伸長と経済学教育

オーストラリア準備銀行のJacqui Dwyer情報局長が、こちらの団体向けの講演で、同国の長期に亘る好景気がもたらした思わぬ副作用について話している(H/T Mostly Economics)。 Economics has become less prominent. In the 1980s and early 1990s, economi…

実務的な政策評価

というNBER論文をコチャラコタが上げている(ungated版、原題は「Practical Policy Evaluation」)。以下はその要旨。 In the wake of the Lucas Critique, the study of appropriate macroeconomic policy has largely focused on the comparison of differ…