2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

良い議論の原則

Econlogのブライアン・カプラン*1が表題のエントリを書いている(原題は「Principles of Good Debating」)。以下に抜粋で紹介してみる。 ...here are my candidate principles of good debating. They're not primarily about winning, but about deserving…

現金はすべての行為を権利行使対象とするリアル・リアルオプションだ

Nick Roweがそう書いている(原題は「Cash as the real real option -- to do anything」)。以下にかいつまんで紹介する。 Option theory was originally about financial assets called options. ・・・ Then people noticed that this could also be a us…

合理的期待と適応的期待

Nick Roweがこの2つの期待について論じている。以下はその概略*1。 適応的期待とは、ある変数Xに関して E[X(t)] - E[X(t-1)] = B{X(t-1) - E[X(t-1)]}, 0 という式が成り立つことである。しかし、ここで以下の2つの疑問が出てくる。 Bは何か? Xは何か? …

アフリカの貧困は紀元前1000年に決まっていた?

というブログ記事をイースタリーが書いていた(原題は「Was the poverty of Africa determined in 1000 BC?」)。内容はイースタリーが共著した論文の紹介。 論文では、紀元前1000年、紀元ゼロ年、紀元1500年、そして現代という4時点の各国の技術採用度を測…

ソロー「DSGEなんか嫌いだ」・続き

昨日はソロー議会証言から2箇所をピックアップして紹介したが、今日はその間の部分を紹介してみる。 This is hard to explain, but I will try. Most economists are willing to believe that most individual “agents” – consumers investors, borrowers, l…

ソロー「DSGEなんか嫌いだ」

Economist's View、The Baseline Scenario、Econlog、マンキューブログ*1で取り上げられて話題になっているが、ロバート・ソローが議会証言でDSGEをくさしたとのこと。 その議会証言のDSGE批判箇所から、最初と最後の部分をピックアップしてみる。 Economic …

生産性と自然利子率

バーナンキの議会証言を巡って、生産性とデフレの関係が日本のネット界隈で改めて論議の的になっている。 そのバーナンキの議会証言はC-SPANで視聴できる。問題の発言は02:25:00付近からであるが、wrong, rogue and logでテープ起こしがなされている。そこか…

ロバート・ホールのインタビュー〜株式市場の評価、知的所有権、経済学の現状

今週はロバート・ホールのミネアポリス連銀インタビューをテーマごとに順を追って紹介してきたが、今日は残りの3つのテーマをまとめて紹介する。 株式市場の評価 ホールは10年前に電子市場(e-Markets)、eCapital、株式市場の評価に関する研究を行い、無形…

ロバート・ホールのインタビュー〜景気後退日付の判定

引き続きロバート・ホールのインタビューから、景気後退日付の判定に関する話をまとめてみる*1。 現在のNBERのような判定方法ではなく、実質GDPが2期連続でマイナス成長になったら景気後退と見做す、とした場合、景気後退が始まったのは2008年第3四半期とな…

ロバート・ホールのインタビュー〜労働市場・補足

昨日のエントリで紹介したロバート・ホールの労働市場論であるが、良く考えると、素人目にも明らかな矛盾が含まれていることに気付いた。 ホールは雇用者側のインセンティブを高めよ、と主張しているが、一方で、実際の就職者は景気の良し悪しに関わらず毎月…

ロバート・ホールのインタビュー〜労働市場

引き続きミネアポリス連銀のロバート・ホールインタビューから、今日は労働市場に関する話を取り上げてみる。今回は引用ではなく、箇条書き式に内容をまとめてみる。 1982年に米国経済における長期雇用の重要性を実証した論文を書いたが、その内容は今も有効…

ロバート・ホールのインタビュー〜フラット・タックス

昨日紹介したミネアポリス連銀のロバート・ホールインタビューから、今度は税制に関する部分をピックアップしてみる。 その前に、前提知識として、まずWikipediaの以下の項目を紹介しておこう。 Hall-Rabushka flat tax The Hall-Rabushka flat tax is a ful…

ロバート・ホールのインタビュー〜金融・財政

ミネアポリス連銀がロバート・ホールにインタビューを行った。その前半部では、今回の危機に対する金融政策と財政政策について語られているので、そこから彼の言葉をいくつかピックアップして紹介してみる。 金融政策について First of all, I believe you s…

アンディ・グローブの産業政策論

元インテルCEOのアンドリュー・グローブが「手遅れになる前にいかに米国の雇用を創出するか(How to Make an American Job Before It's Too Late)」という論説をブルームバーグに書いている(ビジネスウィークでの掲載はこちら[こちらはグラフ付き]。日本…

ヘリコプター・マネーあれこれ

「Nobody Understands The Liquidity Trap (Wonkish)」と題されたクルーグマンの7/14ブログエントリをきっかけに、ヘリコプター・マネーを巡りブロゴスフィアで各人各様の考察が見られた。 まず、デロングがクルーグマンに以下のように異議を唱えた。 クルー…

クルーグマンの皮肉とDuyの反語・補足

昨日のエントリに盛り込もうと思ったが、長くなったので割愛したTim Duyの最近の論説を以下に補足しておく。 まず、(問題となった7/8エントリの次のエントリである)7/11エントリの冒頭。 (本石町日記さんのブログへのコメントでは、この最初の二段落にTim…

クルーグマンの皮肉とDuyの反語

“「Domo arigato, Bernanke-san」とクルーグマン教授が皮肉っている件=Tim Duyの指摘”と題された本石町日記さんの直近のエントリを読んで、意外に思われた方も多いのではないだろうか? 常日頃リフレ派的な言説を吐くTim Duyを取り上げて、「まあ、フェアな…

ブログとレフェリー

例のリッチモンド連銀騒動の際、多くのブロガーが、ブログと経済学の関係について様々な意見を述べた。そうした各人各様の豊穣な考察を文章の形で引き出したという意味では、Kartik Athreyaは、本来の意図に反してむしろ経済ブロゴスフィアに大いに貢献した…

ノアの洪水の最中に「火事だ!」と叫ぶことこそ最適戦略?

Nick Roweが面白いことを書いていたので、以下に拙訳で紹介する。 私が米国のブロガーだとしよう。私のブログは非常に人気があり、読者は私が言うことをすべて信じるものとしよう。一方で、実際に政策に影響を与えコントロールする人々は、私が完全にいかれ…

FRBは景気回復の減速に対応すべき次の手を熟考中

最近、クルーグマン(cf.night_in_tunisiaさんの邦訳)、サムナー、マシュー・イグレシアス、デビッド・ベックワース(cf.Hicksianさんの邦訳)、Tim Duy(cf.本石町日記さんの要約(ブクマ))が、相次いで表題の7/7ワシントンポスト記事を取り上げた(原題…

価格粘着性の経済学

Nick Roweが価格粘着性についてかなり長いブログエントリを書いている。以下では、小生なりの解釈を基にその概要を紹介する。 完全競争と労働賃金の粘着性 財市場における完全競争という条件下では、価格は企業にとって所与のものである。その際、企業は限界…

コント:ポール君とグレッグ君(2010年第6弾)・ブラッド君の反応

昨日紹介したマンキューのクルーグマン批判の前半部分に対し、当のクルーグマンではなくデロングから反論があった。そこでデロングは、将来の増税の悪影響が限られたものになることを簡単な数値計算で示し、マンキューがこの次に何か書く時には、まず封筒の…

コント:ポール君とグレッグ君(2010年第6弾)

今回はマンキューがクルーグマンのブログポスト2つに異議を申し立てた(ちなみに、1番目はともかく、2番目のポストについては小生も――このエントリを書いた直後だったこともあり――マンキューとまったく同じ違和感を抱いた)。 グレッグ君 ポール君が次のよう…

クルーグマンは隠れEMH信者?

スコット・サムナーが以下のように書いている。 Think about all his recent posts mocking the conservative fear that big deficits will lead to higher interest rates. What evidence does Krugman use? He cites the low and falling 10 year bond yie…

シカゴ学派の思想:昔と今・その2

ブキャナンのシカゴ学派の今昔に対する考察を紹介した7/4のエントリに対し、 ルーカス以前、あるいはフリードマン、スティグラー、ベッカー、コース以前のシカゴ学派の思想には、どんな制約やルールの下でも――ルールのまったく存在しないほぼ無政府状態を含…

消費税、法人税、所得税と設備投資

nyanko-wonderfulさんとBaatarismさんが相次いで消費税増税を取り上げ、消費税をはじめとする各種税金の推移グラフを示した。それらのグラフを見て小生の目を惹いたのが、話題の消費税や法人税の推移もさることながら、バブル崩壊以降の所得税の急低下ぶりで…

はだかの王様の経済学

といってもこちらの本の話ではなく、Macroeconomic Advisers, LLCのJames Morley*1が書いたエッセイ「The Emperor Has No Clothes(html)」の話。 このエッセイはデロングブログやEconomist's Viewで紹介され、それを受けてクルーグマンも関連エントリ(Hic…

シカゴ学派の思想:昔と今

というテーマでジェームズ・ブキャナンがリッチモンド大学のセミナーで講演したとのこと(原題は「Chicago School Thinking: Old and New」)。そのドラフトはこちらで読める(Hicksianさんのツイート経由)。 ドラフトの冒頭部は以下の通り。 “Is Chicago S…

30年固定金利住宅ローンは不要か?・その2

昨日のエントリでは、Nick Roweのオープン型長期固定金利ローンへの反対論を紹介したが、彼は改めて別のエントリを建てて、カナダの住宅ローン市場を基に考察を深めている。 彼によると、同市場では以下のような状況が観察されると言う。 期間1年以上のオー…

30年固定金利住宅ローンは不要か?

WSJブログによると、米連邦住宅金融局の主任エコノミストのパトリック・ローラー(Patrick Lawler)が、クリーブランド連銀主催の住宅政策に関するコンファレンスで、個人の意見と断りつつも、「爆弾発言」を行ったとのこと*1。 Mr. Lawler launched a front…