引き続きロバート・ホールのインタビューから、景気後退日付の判定に関する話をまとめてみる*1。
- 現在のNBERのような判定方法ではなく、実質GDPが2期連続でマイナス成長になったら景気後退と見做す、とした場合、景気後退が始まったのは2008年第3四半期となる。しかし、その判定方法だと、実質GDPのピーク期が含まれないことになってしまう。実質GDPがピークを付けたのは2008年第2四半期である。NBERが景気後退開始と認定したのは、それよりさらに早い2007年12月である。
- (余談)ホールは景気循環日付判定委員会の委員長を創設以来32年間務めてきた。
- NBERの景気循環の判定方法はホームページに掲載されているが、そこには曖昧な部分も残されている。
- もう少しリアルタイムに判定することについては、NBER自身は実施するつもりは無い。それによって混乱を来たすのは避けたいので。ただし、他の機関が行う分には構わない。この件についてNBERが独占権を主張するつもりは無い。
- 実のところ、1980年代に、ジム・ストックとマーク・ワトソンが開発した景気後退確率指数を非公式な形で支援したことはある。しかし、その指数は1991年の景気後退時にうまく働かなかったので、彼らもそこでやめてしまった。
- それがうまく働かなかったのは、その景気後退が生産性低下を伴わない最初の景気後退だったことによる。時系列的な相関関係が彼らの期待したほど安定的ではなかったわけだ。自動判定がうまく行かない典型例と言える。ホール自身も大学院時代にコンピュータ科学の課程を履修して景気の自動判定プログラムを書こうとしたが、うまくいかなかった。
- 1980年の景気後退はマイナス成長が1四半期しか無かったので、2四半期連続のマイナス成長という判定では景気後退にならない。1980年は1981年の景気後退の前兆に過ぎなかった、という人もいたが、NBERはそうした見方を採らなかった。
- (判定は科学と言うよりはアートか、というインタビュアーの問い掛けに対し)判定は世界が回答を求めている判別問題だが、構造変化を伴っている。その構造変化の取り扱いが問題となる。時系列で見た場合の連続性を維持することには多大な努力を払っている。