2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第1弾)

今年の第1弾は、昨年の第9弾の延長戦。その時にマンキューが紹介したDavid O. Cushman論文の続きが出たが、「歴史を書き換える(Revising History)」とクルーグマンを揶揄したタイトルのエントリでマンキューがその要旨を引用している。 グレッグ君 Econ Jo…

事前分布がベイズ推定を歪める時

昨日紹介したゲルマンのエントリでは、引用部の冒頭で事前分布への固執を戒めていたが、それは、ノアピニオン氏がベイジアンはデータが信用できないと自分の事前分布に固執する、と揶揄したことへの反論を意図していた。そこでノアピニオン氏は、事前分布を…

モデルとしての事前分布

ノアピニオン氏が統計におけるベイジアンと頻度主義の対立について論じたところ、ベイズ統計学の権威であるアンドリュー・ゲルマンが反応した。以下はそこからの抜粋。 First, a Bayesian doesn’t need to stick with his or her priors, any more than any …

蟹は甲羅に似せてインフレを予想する

Carola Binderブログ*1が、日本の状況に絡めつつ、Ulrike MalmendierとStefan Nagel*2の「Learning from Inflation Experiences」という論文を紹介している。以下はその要旨。 How do individuals form expectations about future inflation? We propose tha…

格差拡大は経済成長の減速要因か?

というスティグリッツとクルーグマン(追加エントリ)の間で軽く論争になったテーマについて、スティーブ・ワルドマンが考察している。 彼はまず、格差拡大が無条件に過少消費につながることは無い、として、その点ではクルーグマンを支持している。 と同時…

計量経済学者の手からマクロ経済学を取り戻すための革命

サイモン・レン−ルイスが、いわゆる反ケインズ革命をそう位置づけている。以下はそのブログエントリからの引用。 What the ‘macroeconomic ideas develop as a response to crises’ story leaves out is the rest of economics, and ideology. The Keynesian…

東日本大震災がクルーグマンの間違いを証明した?

1週間前に、ジョン・コクランがブログで、Johannes WielandというUCバークレーでPhDを取得予定の学生が就職活動用に書いた論文(=Job Market Paper)「Are negative supply shocks expansionary at the zero lower bound?」を紹介している。 以下はその要旨…

中央銀行の独立性が金融危機を招いた

フェリックス・サーモンが、ヴァイトマン独連銀総裁の通貨切り下げ競争と中央銀行の独立性喪失への懸念をたしなめた記事*1の最後で、以下のように書いている。 And as for central bank independence — well, that battle was lost during the financial cri…

日銀とオリバー・ツイスト

ソシエテジェネラルの通貨ストラテジストKit Juckesが、今回の日銀の政策に対する失望を以下のように説明しているのがビジネスインサイダー記事に引用されている(記事を書いたのはJoe Weisenthal;フェリックス・サーモン経由)。 Please Sir, I want more,…

共同声明の三重翻訳

Britmouseが、今回の政府・日銀の共同声明の英語版には日銀の翻訳部門のトラブルによる問題があったとして、グーグル翻訳の助けを借りて中央銀行語を改めて平易な英語に書き直したという。それをさらに拙訳で日本語に訳してみる。 日本銀行は、金融政策は「…

ソブリン危機を予測する指標?

財務省からIMFに出向されている津田尊弘氏が、IMFシニア・エコノミストのSerkan Arslanalpと共に、国債の安全性を投資家の属性から計測する指標を開発し、その内容をIMFブログ(iMF direct)で紹介している(ハッフィントンポストにも転載されている)。簡単…

財政保守と社会的リベラリズム

1/5エントリでクルーグマンが景気循環を扱うマクロ経済学者がイデオロギーに囚われている、と腐したのに対し、例によってStephen Williamsonが反論した。クルーグマンが槍玉に挙げた大物経済学者――サージェント、プレスコット、ルーカス――の発言を一通り弁護…

ブキャナンってどこが経済学者として凄かったの?

Hicksianさんもまとめエントリでリンクされているが、先日他界したジェームズ・ブキャナン*1の功績について、マシュー・イグレシアスの要望に応じる形で、ブキャナンが1983年以降に教授を務めたジョージ・メイソン大学の教授であるタイラー・コーエンが箇条…

人々はなぜ年金を買わないのか?

という論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 Why don’t people buy annuities? Several explanations have been provided by the previous literature: large fraction of preannuitized wealth in retirees’ portfolios; adverse selecti…

流動性の罠にはゼロ金利は関係無い・再訪・続き

昨日紹介したクルーグマンとワルドマンの議論はその後も続き、1/17付けでクルーグマンがワルドマンへの再々反論のエントリを立てた。そこでクルーグマンは、準備預金への付利は、FRBが非ゼロ金利時に総需要に大きな影響を及ぼす力を有しているという事実も、…

流動性の罠にはゼロ金利は関係無い・再訪

1年半ほど前に、流動性の罠にはゼロ金利は関係無い、というStephen Williamsonの主張を以下のように紹介したことがあった: 彼はまず、名目金利は交換媒体としての貨幣の稀少性を表わすもの、と定義している。そして、その名目金利がゼロに達すると、交換媒…

QEは民間のリスクを増やすのか?

カンザス連銀総裁のエスター・ジョージの発言*1を巡るデロングとTim Duyのやり取り*2を、会話風にまとめてみる。 デロング エスター・ジョージが、FRBがQEを続けると民間のリスクが増えるのではないか、って言っている。何で? リスク資産の価格が上がってリ…

インフレ目標は需要不足による不況を防げない?

という点についてNick Roweが考察している。従来、彼はインフレ目標で需要不足による不況が防げると考えていたという。しかし、カナダや英国の経験に照らして、その考えが間違いであったことを悟ったとのことである。 1/9エントリで彼は以下の3枚の図を示し…

何がベル研を特別たらしめたのか?

以前ここで紹介したベル研を題材にしたジョン・ガートナー(Jon Gertner)による以下の本を、同研究所に一時期在籍していたというアンドリュー・ゲルマンが書評している(ゲルマンブログ経由)。The Idea Factory: Bell Labs and the Great Age of American …

キャピタルゲイン課税が資本コストに与える影響

について調べた論文をEconomic Logicが紹介している(論文のタイトルは「Capital Gains Taxation and the Cost of Capital: Evidence from Unanticipated Cross-Border Transfers of Tax Bases」で、著者はティルバーグ大学などに所属するオランダの3人の経…

ランダム化対照試行がうまくいかない時

という事例を少し前にEconomic Logicが紹介していたことを、デュフロがオバマ政権のグローバル開発委員会入りするというニュースを目にして思い出した。 以下はEconomic Logicianによる前説。 Randomized experiments are all the rage in some circles, for…

スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」

昨日エントリの末尾で言及した、The Times of Indiaが伝えるスティグリッツのインド準備銀行主催会合での発言を紹介しておく*1。昨日のエントリのはてぶコメントでは10年前の日本での講演でも同様の趣旨の発言をしていたことをご教示いただいたが、その姿勢…

中央銀行の独立性は政府支出を増加させる

というvoxeu記事を5年前にアセモグル=ロビンソン&サイモン・ジョンソン&Pablo Querubínが書いていた(Quantitative Easeブログ経由)。 An empirical analysis on the effect of Central Bank independence reforms shows that they tend to reduce infla…

中所得国の罠は二段落ち

以前、中所得国の罠について調べたアイケングリーンらの論文をダラス連銀のレポート経由で間接的に紹介したことがあったが、その論文のアップデート版が出ている(Economist's View経由)。 以下はその要旨。 We analyze the incidence and correlates of gr…

DSGEによって推計される政府支出乗数の陥穽

という論文を少し前にEconomist's Viewが注目に値するとして紹介していた(原題は「A Pitfall with DSGE-Based, Estimated, Government Spending Multipliers」で、著者はトゥールーズ経済学院のPatrick Fèveaとフランス銀行のJulien Matheronb、Jean-Guilla…

Glaeserの経済学って適当すぎねえ?

経済学者のEdward Glaeserの論考については都市に関するものを中心として本ブログでも何回か取り上げてきたが(例:ここ、ここ、ここ)、その主張の妥当性を疑問視するブログエントリが昨年末のEconomist's Viewでリンクされていた。 該当ブログは「West Coa…

マクロ経済学は1958年に道を誤った

とジョン・クイギンが書いている。かつてロバート・ゴードンは1978年時点のニューケインジアン経済学は今日のDSGEの手法より優れていたと論じたが、クイギンは、そこから遡ること20年前に既にマクロ経済学は道を逸れていた、と言う。 1958年というのは、フィ…

日本の金融システムはクライアント=サーバ型?

Mostly Economicsが日米英独の金融システムをコンピュータネットワークに喩えた論文を紹介している(論文のタイトルは「Networks and History’s Generalizations: Comparing the Financial Systems of Germany, Japan, Great Britain, and the United States…

1999年のバーナンキvs2002年のバーナンキ

昨年末にTim Duyが、デフレ脱却は中銀のインフレ目標だけでは駄目で、財金一体とならなくては効果を発揮しない、と書いた。本石町日記さんがツイッターでその内容を簡潔に以下のように紹介している*1。https://twitter.com/hongokucho/status/28416344225074…

起きなかったハイパーインフレ

学習院大学の眞嶋史叙教授とオックスフォード大学のGregg Huff教授が、東南アジアを占領した日本軍の戦費調達についての論文を書いている(Economic Logic経由;論文のタイトルは「Financing Japan’s World War II Occupation of Southeast Asia」)。 以下…