QEは民間のリスクを増やすのか?

カンザス連銀総裁のエスター・ジョージの発言*1を巡るデロングとTim Duyのやり取り*2を、会話風にまとめてみる。

デロング
エスター・ジョージが、FRBQEを続けると民間のリスクが増えるのではないか、って言っている。何で? リスク資産の価格が上がってリターンが下がるから? でもQEって民間部門のリスクをFRBが引き受けることによって減らすはずじゃなかったの?
Tim Duy
FRBが民間から長期債を買って現金を渡すと、民間の現金需要は一定なので(預金が増加しているのを見ると本当にそうかは怪しいけど)、必要以上の現金でリスク資産を買ってしまうから、結局民間のポートフォリオのリスク資産が増える、という話みたい。
あと、別の見方としては、現金と違って長期債には利子が付くから、長期債は実は現金より安全な資産、という見方もできる(多分FRBはその見方を採っていないけど)。
ともあれ、もしジョージの言うように民間の安全資産が不足しているのだとしたら、それを供給するのは財政部門だわな。こうして、財政と金融の協調という方向に話が必然的に展開することになると僕は思うのだけど*3
デロング
いや、だから、FRBは長期債やMBSなんかよりももっとリスキーな資産を買って、素直に民間のポートフォリオのリスクを減らすべきなんだが…。それに売り戻しが難しい資産を買えば、低金利が長く続くという期待も醸成できるし。民間からリスクを取り除くこともせず、低金利が長く続くという時間軸効果も支援しないとなれば、QEの意味なんか無いでっしゃろ。
信頼のおける政府の拡張的な財政政策で安全資産の不足に対処する、という考え方には100%賛成。そこがガイトナーがしくったところなんだよな。

*1:デロングはその発言を取り上げたWSJブログ(要サブスクリプション)にリンクしている。

*2:本石町日記さんもツイートで触れている

*3:ここで紹介したエントリでも述べられているように、財政と金融の協調の必要性というのは最近のTim Duyが頻りに強調するところである。また、安全資産の不足というのは(本ブログでも度々紹介しているように)デロングの持説である。ちなみに、ベックワースは、安全資産の創出を政府に頼るのではなく、民間の資産を安全資産とする方策を考えるべき、と直近のエントリで主張している。