2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「合理的期待モデルは最尤法から離れては生きられないのよ」「カリブレーションは滅びぬ、何度でも蘇るさ」

サージェントインタビューの一昨日と昨日引用したカリブレーションに関する話の続き。 Evans and Honkapohja: Aren’t applications of likelihood based methods in macroeconomics now making something of a comeback? Sargent: Yes, because, of course, …

長征としてのカリブレーション

サージェントインタビューから昨日引用した部分の続き。 Evans and Honkapohja: Why do you say “various types of calibration”? Sargent: Different people mean and do different things by calibration. Some people mean “use an extraneous estimator.…

Dr.サージェント またはルーカスとプレスコットは如何にして尤度比検定に頼るのを止めてカリブレーションを愛するようになったか

こちらのEconlogエントリ経由でトーマス・サージェントのインタビューを読んで、これは1年前にカリブレーションを巡ってクルーグマンとStephen Williamsonが議論するきっかけとなったインタビュー*1であることに気付いた。インタビュアーは、適応的学習の研…

なぜ経済成長率の低下は急激かつ突然なのか?

と題したMRエントリで(原題は「Why are growth declines sharp and sudden?」)、タイラー・コーエンが「From Miracle to Maturity: The Growth of the Korean Economy (Harvard East Asian Monographs)」というアイケングリーンらの近刊本から以下の一節を…

SPVとしての中央銀行

このところエコノブロゴスフィアで貨幣はバブルか否かという論争が続いていたが、JP Koningというブロガーが、その議論のあらましをまとめると同時に、本ブログの10/20エントリで紹介した中央銀行の国債消却を巡るGavyn Daviesの議論とその話とを結び付けて…

同情はともかく金をやろう

以前、deserving poor(情状酌量に値する貧者)とundeserving poor(情状酌量に値しない貧者)に関する論争を紹介したことがあったが、Chris Dillowが、あるリバタリアンの https://twitter.com/LibertarianView/status/261211203425165312:twitter (拙訳)…

イングランド銀行が国債を償却する日・続き

ここで紹介した英国の国債償却を巡る論争に関し、FT Alphaville(Joseph Cotterill)が最も優れた論考として以下の文章を紹介している(H/T 本石町日記さんツイート)。書いたのはThredneedleなる投資ファンドのToby Nangleとのこと。 It may sound radical …

GDPとIQの因果関係

について調べたフィンランドの研究者Eka Roivainenの論文をUDADISIが紹介している。 以下はその要旨。 Lynn and Vanhanen (2012) have convincingly established that national IQs correlate positively with GDP, education, and many other social and ec…

ゼロ金利下限の分析における線形近似と複数均衡と学習可能性

10/14エントリで対数線形近似の問題点を指摘した論文を紹介したが、同論文(3月時点のバージョン)を紹介したEconomic Logicエントリのコメント欄で、既に反論の論文(3/12付け)が出ていることを知った。 以下はそのLawrence J. ChristianoとMartin Eichenb…

逆選択が複数均衡をもたらす簡単な例

がEconospeakのkevin quinnにより提示されている。 そのセッティングは以下の通り。 車の売り手が12人いる。車の品質は高、中、低の3種類存在し、それぞれの品質の売り手は4人ずつ。 買い手の留保価格は、高:15000ドル、中:10000ドル、低:5000ドル 売り手…

崩壊の政治的論理:ソ連崩壊からの7つの教訓

Centre for Liberal StrategiesのIvan Krastevが、ソ連の崩壊からEUの崩壊の可能性について7つの教訓を引き出している(Mostly Economics経由)。 連合が崩壊するわけがないという信念が、目先の利益のために反EU派に迎合的な政策を取ることや時間要因の軽視…

イングランド銀行が国債を償却する日

以前小生がここで論じたような中央銀行による国債の消却が、次期イングランド銀行総裁に擬せられるアデア・ターナーFSA長官の発言をきっかけに英国で論じられている(H/T Gavyn Davies)。 きっかけは、ターナーの11日の発言。これについてロバート・ペスト…

経済学における数学の使用、ならびにそれが経済学者のキャリアに与える影響

という論文を、Economic Logic、および、MR経由でMostly Economicsが紹介している(原題は「The use of mathematics in economics and its effect on a scholar's academic career」、著者はMiguel Espinosa、Carlos Rondon、Mauricio Romero)。 以下は同論…

なぜ右派はケインズ経済学を嫌うのか?

についてChris Dillowが考察している。 彼はまず、本来は政治的立場とケインズ経済学に対する好き嫌いには関連は無いはず、として、その理由を4つ挙げている: (測定が困難な)財政乗数の大きさという問題は技術的な話であり、政治的見解の話ではない。乗数…

政府債務は将来世代の負担になるか?

という議論が暫しブロゴスフィアを賑わせていたが、その議論の主役となったのはWCIブログのNick Roweである。といっても彼が何か目新しい主張を持ち出したわけではなく、ここで紹介したOLGモデルによる主張を繰り返しただけである。 このRoweのOLGモデルは、…

貨幣は苦痛を伴うべし

FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが、非伝統的金融政策をmumps(=most unusual monetary policies;mumpsにはおたふく風邪の意味もある)と呼んだUBSのGeorge Magnusの論説に事寄せて、ここで紹介した自説をさらに解説している。 In short, the problem…

マトリックス経済学

10/9付けFT Alphaville記事でイザベラ・カミンスカが、ボラティリティの専門家でArtemis Capital Managementなるファンドを率いるChristopher Coleの興味深い考察を引用している。 If financial markets are the mirror reflecting a vision of our economy …

対数線形近似の罠

流動性の罠においては財政乗数が大きくなる、というのはクルーグマンが日頃から強調している点だが、その特性は実はモデル計算の近似の問題に過ぎない、ということを示した論文がセントルイス連銀の年次総会で提示された、とEconomist's ViewのMark Thomaが…

フロギストン経済学を超えるある試み

ここで紹介した記事でマシュー・イグレシアスは「成長を説明する際に謎の残差に訴求する必要性を減じるような何らかの実証上の数量が存在することを示す研究」の必要性を訴えたが、まさにそうした方向性を追究した研究をEconomic Logicが紹介している。以下…

俺たちに明日はない

FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが、金融危機が実体経済の「大停滞」に起因する、という見方を10/3エントリで示している(本石町日記さんツイート経由の前日エントリ経由)。 You could say, the economic system in this way revolves around incentiv…

老人が我々の職を盗んでいる!

という穏やかならぬタイトルの記事で、FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが以下のグラフを紹介している。ソースはシティのSteven Englanderのレポートとの由。 この図を見ると、働き盛りの25-54歳の雇用人口比率は2007年以降に大きく下がったのに対し、55…

中央銀行の外債購入を巡る騒動

といっても、日銀のことではなく、スイス国立銀行の話。 本石町日記さんのツイート経由のFT Alphaville記事で知ったが、S&Pがスイス国立銀行がユーロ中核国の国債を800億ユーロ買い入れたというレポートを出し、同銀行がそれを否定する、という騒ぎがあった…

CRAはサブプライム貸し出しを促さなかった

地域再投資法(Community Reinvestment Act=CRA)も金融危機の一因であった、という点を巡ってしばしば米国で論争が交わされるが*1、リチャード・グリーンが、その点について分析した論文を紹介している(Economist's View経由)。 グリーンは論文から以下…

ラジャン、インドに還る

ラジャンが先月インド財務省のchief economic adviserの地位に就いたという。こちらのインド版NYTブログでは、彼へのインタビューが掲載されている(H/T タイラー・コーエン)。そこで彼は、インドの当面の課題を2つ挙げている。 ...I do want to participat…

ライズ・オブ・ザ・マシーン

いわゆるケインジアン経済学の問題をケインズ個人に帰すのは誤りである、という趣旨のデューク大学教授Kevin D. Hooverの論文をMostly Economicsが紹介している。以下はその要旨。 The potted histories of macroeconomics textbooks are typically Keynes-c…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第10弾)

3月の統計発表の時と同様、マンキューとクルーグマンが直近の雇用統計を受けて雇用人口比率を描画している。 グレッグ君 景気回復のモニタリング ポール君 今では失業率が問題のある指標だということを誰もが知っている。というのは、働いている人が増えたた…

フェア・ゲーム

9/30や昨日のエントリで紹介した共著論文への批判に対し、アセモグル=ロビンソンが自ブログで反論している。 以下はその簡単なまとめ。 論文はピーター・ホールとデヴィッド・ソスキスの著書に代表される資本主義の多様性に関する研究の文脈を受けている。…

特許はイノベーションの代理変数たりえない

9/30に取り上げたレイン・ケンウォーシーによるアセモグル=ロビンソンとThierry Verdierの論文批判について、マシュー・イグレシアスも反応していた。そこでイグレシアスは、同論文が特許件数をイノベーションの代理変数として用いていることを強く批判し、…

OMTはQEに非ず

昨日のエントリでは、クーレECB理事のパリ政治学院での講演を取り上げたが、そこで彼は、ECBの南欧国債購入計画(Outright Monetary Transactions=OMT)に関する3つの懸念を払拭することに努めていた。その第一は、昨日取り上げた財政ファイナンスの懸念だ…

クーレECB理事「国債購入計画の目的の一つは金融政策の主導権を取り戻すこと」

9/29エントリで紹介したロイターレポートに“端役”として出演していたベノワ・クーレECB理事が、そのレポートの主題である南欧の国債購入計画(OMT)に絡めて、昨日のエントリで取り上げた中央銀行から見た財政政策というテーマについて話している(Mainly Ma…