崩壊の政治的論理:ソ連崩壊からの7つの教訓

Centre for Liberal StrategiesIvan Krastevが、ソ連の崩壊からEUの崩壊の可能性について7つの教訓を引き出しているMostly Economics経由)。

  1. 連合が崩壊するわけがないという信念が、目先の利益のために反EU派に迎合的な政策を取ることや時間要因の軽視を通じて、崩壊の主要なリスクになるというパラドックス
  2. EUの崩壊はEU反対派がEU推進派に勝利することによってもたらされるとは限らない。長期に亘る機能不全の思わぬ帰結として生じ得る。指導者層が各国の政治力学を読み誤れば、そうした崩壊は加速する。
  3. 改革の欠如ではなく、方向性を誤った改革が崩壊をもたらす可能性がある。危機において政治家たちは「銀の銃弾」を捜し求めるが、その銃弾が死の原因となることが良くある。
  4. 主要なリスクは、周縁の不安定化ではなく、中央における反乱である。ソ連の運命を決したのはバルチック諸国の離脱ではなく、ロシアが連邦はもういらないと決めたことだった。EUの運命を決するのはギリシャやスペインの経済の問題ではなく、ドイツの考え方である。
  5. 崩壊過程に入ったならば、人民革命というよりは、銀行の取り付け騒ぎのような形を取るだろう。従って、連合の存続の可能性を左右する最も重要な要因は、連合の問題対処能力に対するエリートの信頼である。Stephen Kotkinは、ソ連について、「連邦に終止符を打ったのは、周縁における独立運動ではなく、中央のエリートであった」と述べている。
  6. より小規模だがより機能的かつ最適な連合、および、ユーロ圏の秩序ある解体を希求することは、それ自体が崩壊の扉を開くことになりかねない。1991年のロシア、ベラルーシウクライナはそうした連合を追い求め、共通通貨圏を維持しようとしたが、崩壊過程を途中で食い止めることはできなかった。
  7. 崩壊の危機が迫っている時は、政治的指導者は柔軟性を旨とすべきであり、硬直性や永続性を求めるべきではない。それらを追求すると、失敗した際に崩壊過程を加速させかねない。これはソ連崩壊から得られる最も気がかりな教訓である。残念ながら現在の欧州の意思決定者は、各国政府および国民の選択を徹底的に制限する政治的解決策を通じて連合を救おうとしている。