2014-01-01から1年間の記事一覧

就業率とFRBの政策に関するデロングの疑問

28日エントリで紹介したウルファーズの6つの論点の1番目と2番目を掘り下げるようなEquitablogエントリをデロングが書き(自ブログへの転載)、FRBの金融引き締め志向に疑問を呈している(H/T Economist's View)。そこでデロングはまず、25-54歳人口の就業…

経済発展を成し遂げた独裁者が去ってから、民主化が始まる

という主旨の論文をUCLAの政治学者Daniel Treismanが書き、WaPoのMonkey Cageで内容を紹介している。 以下は論文の要旨。 While some believe that economic development prompts democratization, others contend that both result from distant historical…

コールズ以前とコールズ後の計量経済学

Œconomiaという学術誌が最新号で計量経済学史を特集し、その前文をオスロ大学のOlav Bjerkholtが書いている(H/T Dave Giles)。以下はそこからの引用。 Econometrics is a field with roots that go far back in time. In his monumental History of Econom…

2015年経済の不確定要因

ジャスティン・ウルファーズが12/28付けNYT論説記事で表題の要因を6つ挙げている。 労働市場に本当はどれだけのスラックが残っているのか? 失業率は5.8%になり、このまま行けば2015年半ばまでにはもう0.5%ポイント下がるだろう。それは事実上の完全雇用水準…

変数人間の経済学

「One Size does not Fit All: Multiple Dimensions of Ability, College Attendance and Wages」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はMaría F. Prada(米州開発銀行)、Sergio S. Urzúa(メリーランド大学)。 以下はその要旨。 We investiga…

ブランコ・ミラノヴィッチによるアセモグル=ロビンソンのピケティ批判への批判

前回エントリで触れたように、ブランコ・ミラノヴィッチがアセモグル=ロビンソンに批判的なエントリを書いていたので、そこで取り上げられていた3つのポイントを紹介してみる。 アセモグル=ロビンソンはピケティが制度を完全に無視したと言うが、米国やフ…

資本主義の一般法則の興亡

アセモグル=ロビンソンがピケティ本を批判した表題の論文(原題は「The Rise and Decline of General Laws of Capitalism」)がNBER論文として上がっており、既にokemosさんがブクマされている。この論文は8月に両人のブログで紹介されたもので、その時点で…

世界金融危機時のFRBの反応は前例の無いものだったのか?

ミシュキンらが「Unprecedented Actions: The Federal Reserve's Response to the Global Financial Crisis in Historical Perspective」というNBER論文を書いている。著者はFrederic S. Mishkin(コロンビア大)、Eugene N. White(ラトガース大)。 以下は…

史上最大の略奪:如何にしてナチスは欧州の金を盗んだか

「パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン」の著者 ジョージ・M・テイバーが以下の本を上梓し、その内容が表題のKnowledge@Wharton記事で紹介されている(原題は「History’s Biggest Robbery: How the Nazis Stole Europe’s Gold」;H/T Mos…

符号制約、構造VAR、および有用な事前情報

ジェームズ・ハミルトンらが表題のNBER論文を書いている(ungated版)。原題は「Sign Restrictions, Structural Vector Autoregressions, and Useful Prior Information」で、著者はChristiane Baumeister(カナダ銀行)、James D. Hamilton(UCサンディエゴ…

リアルビジネスサイクル理論と高校生五輪

ロジャー・ファーマーが、以前ここで紹介したようなエド・プレスコットの研究の進め方を、オリンピックレベルのゲームを高校生レベルに引き下げるようなもの、として表題のブログ記事で槍玉に挙げている(原題は「Real business cycle theory and the high s…

非科学的な思考様式と機能しない科学的な思考様式

アンドリュー・ゲルマンが、アラン・ソーカルのScientia Salon記事を引用している。 以下は記事の一節。 The bottom line is that science is not merely a bag of clever tricks that turn out to be useful in investigating some arcane questions about …

FRBが・棄てた・1923年の原則

ハーバードのJulio J. Rotembergが「The Federal Reserve's Abandonment of its 1923 Principles」というNBER論文を書いている。 以下はその要旨。 This paper studies the persistence and some of the consequences of the eventual abandonment by the FO…

開放経済における金融政策:実際的な中央銀行家のための役立つ概観

というNBER論文をRichard Claridaが書いている。原題は「Monetary Policy in Open Economies: Practical Perspectives for Pragmatic Central Bankers」。 以下はその要旨。 This paper reviews and interprets some of the key policy implications that fl…

最低賃金と大不況

について調べたNBER論文が上がっている(ungated版)。論文のタイトルは「The Minimum Wage and the Great Recession: Evidence of Effects on the Employment and Income Trajectories of Low-Skilled Workers」で、著者はJeffrey ClemensとMichael Wither…

時系列計量経済学史における誤差項

という2001年のEconometric Theory論文(WP)をDave Gilesが、これまで読んでいなかったのは損失であった、として自ブログで紹介している(ブログの読者に教えてもらったとの由)。原題は「The Error Term in the History of Time Series Econometrics」で、…

研究者とコード

スタンフォードの政治経済学のPhD CandidateであるNicholas EubankがThe Political Methodologistに寄せたブログ記事*1によると、2005年に創刊されたQuarterly Journal of Political Science (QJPS)では、投稿者に、論文の結果を出力するのに用いたデータと…

米国の債務上限問題と日本の消費増税の違い

クルーグマンが「ケインズは徐々に勝利を収めつつある(Keynes Is Slowly Winning)」(邦訳)というエントリを先月末に書いたのに対し、タイラー・コーエンが「ケインズは徐々に敗北しつつ(勝利を収めつつ?)ある(Keynes is slowly losing (winning?))…

資本と富の違いと21世紀の民主主義

ブランコ・ミラノヴィッチが、ピケティ理論の“パズル”に関するスティグリッツの論文についてコメントし、その概要をブログで報告している。 Stiglitz points out to several very important puzzles that cannot be easily accommodated in the current neoc…

女子同級生の存在は男子学生の成績を上げる

ということを示したNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「All or Nothing? The Impact of School and Classroom Gender Composition on Effort and Academic Achievement」で、著者はSoohyung Lee(メリーランド大)、Lesley J. Turner(同)、Seokjin…

危機後のインフレと雇用の説明:レトロ分析

昨日に続きHarald UhligのNBER論文をもう一つ紹介する。以下はChiara Fratto、Harald Uhlig(いずれもシカゴ大)の表題のNBER論文(原題は「Accounting for Post-Crisis Inflation and Employment: A Retro Analysis」)の要旨。 What accounts for inflatio…

企業の債務構造と金融危機

というNBER論文(ungated版)をFiorella De Fiore(ECB)とHarald Uhlig(シカゴ大)が書いている。原題は「Corporate Debt Structure and the Financial Crisis」。 以下はその要旨。 We present a DSGE model where firms optimally choose among alternat…

明治維新以降のモメンタム投資の成果や如何に?

ノースウェスタン大のRavi Jagannathanらが「Momentum Trading, Return Chasing, and Predictable Crashes」というNBER論文を書いている。著者はJagannathanのほか、Benjamin Chabot(シカゴ連銀)、Eric Ghysels(ノースカロライナ大学チャペルヒル校)。 …

ケインズがツイストオペを薦めた時

田中秀臣氏がケインズのルーズベルトへの手紙を紹介されているのを読んで、原文がネットに転がっていないかなと検索したところ、こちらやこちらにあった。また、3年前にマイク・コンツァルがケインズによるツイストオペの薦めとして紹介しているのも見つけた…

なぜ国家は企業のように考えられないのか?

先月半ば、リー・クアンユー行政大学院の学院長であるキショール・マブバニ(Kishore Mahbubani)がザ・タイムズ・オブ・インディア紙に寄稿し、表題の論説記事(原題は「Why can’t countries think like companies?」)で中印の連携を訴えている(H/T Mostl…

ジェフリー・サックスの計画経済のすゝめ

ジェフリー・サックスがProject Syndicate論説で、自由市場主義とケインズ主義の両経済学にダメ出ししている(H/T Mostly Economics)。 The problem with both free-market and Keynesian economics is that they misunderstand the nature of modern inves…

流動性の罠の下でも財政乗数が高くなるわけではない

という主旨のNBER論文が上がっている(ungated版、スライド)。論文のタイトルは「Government Spending Multipliers in Good Times and in Bad: Evidence from U.S. Historical Data」で、著者はValerie A. Ramey(カリフォルニア大学サンディエゴ校), Sara…

節電の呼び掛けの思わぬ帰結

というNBER論文が上がっている(ungated版)。論文の原題は「The Perverse Impact of Calling for Energy Conservation」で、著者はJ. Scott Holladay(テネシー大)、Michael K. Price(ジョージア州立大)、Marianne Wanamaker(テネシー大)。 以下はその…

予め分かっている時にジャンプする債券金利

というNBER論文が上がっている。原題は「Jumps in Bond Yields at Known Times」で、著者はDon H. Kim(FRB)、Jonathan H. Wright(ジョンズ・ホプキンス大)。 以下はその要旨。 We construct a no-arbitrage term structure model with jumps in the enti…

固定された予想と短期の失業率のフィリップス曲線

というNBER論文をローレンス・ボールらが書いている。原題は「A Phillips Curve with Anchored Expectations and Short-Term Unemployment」で、著者はLaurence Ball(ジョンズ・ホプキンス大)、Sandeep Mazumder(ウェイクフォレスト大)。 以下はその要旨…