というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「The China Shock Revisited: Job Reallocation and Industry Switching in U.S. Labor Markets」で、著者はNicholas Bloom(スタンフォード大)、Kyle Handley(UCサンディエゴ)、André Kurmann(ドレクセル大)、Philip A. Luck(コロラド大デンバー校)。
以下はその要旨。
Using confidential administrative data from the U.S. Census Bureau we revisit how the rise in Chinese import penetration has reshaped U.S. local labor markets. Local labor markets more exposed to the China shock experienced larger reallocation from manufacturing to services jobs. Most of this reallocation occurred within firms that simultaneously contracted manufacturing operations while expanding employment in services. Notably, about 40% of the manufacturing job loss effect is due to continuing establishments switching their primary activity from manufacturing to trade-related services such as research, management, and wholesale. The effects of Chinese import penetration vary by local labor market characteristics. In areas with high human capital, including much of the West Coast and large cities, job reallocation from manufacturing to services has been substantial. In areas with low human capital and a high initial manufacturing share, including much of the Midwest and the South, we find limited job reallocation. We estimate this differential response to the China shock accounts for half of the 1997-2007 job growth gap between these regions.
(拙訳)
米センサス局の秘密の行政データを用いて我々は、中国の輸入浸透度の上昇がどのように米国の地域の労働市場の形を変えたかを再訪した。中国ショックの影響が大きかった地域の労働市場は、製造業からサービス業への再配分が大きかった。この再配分の大半は、製造事業を縮小しつつサービスの雇用を拡大した企業内で発生した。特に、製造業の職の喪失効果の約40%は、主要事業を製造業から研究、管理、卸売などの貿易関連のサービスに切り替えた継続企業に起因していた。中国の輸入浸透の影響は地域の労働市場の特性によって異なった。西海岸の多くの地域と大都市など人的資本が高い地域では、製造業からサービスへの職の再配分は顕著だった。中西部や南部の多くの地域など人的資本が低く、当初の製造業比率が高かった地域では、職の再配分は限定的だった。我々は、中国ショックへのこうした異なる反応が1997-2007年のこれらの地域における職の伸びの差の半分を説明すると推計した。
論文の本文では、中国ショックの持続性について - himaginary’s diaryで紹介したAutorの論文など、今回の分析と同様に製造業へのマイナスの影響を見い出したが、今回の分析と違ってサービス業へのプラスの影響を見い出さなかった研究に触れている。そうした結果の違いは以下の3点からもたらされたという。
- 業種別の輸入浸透率を地域の労働市場に割り振る際にSICコードではなくNAICSコードを使ったこと
- 1997年以降、米国や各国の経済活動の産業別指標はNAICS分類に基づいており、またNAICSは概念的にSICを改善したものとされている。
- 輸入浸透度を雇用ではなく国内アブソープションで計算したこと
- 当初の国内アブソープション(国内輸送+輸入-輸出)に対する比率で中国の輸入を加重するのは、国内市場の規模でショックを基準化するという点で一般的な手法。国内市場規模が部門ごとの労働者数に比例するとは限らない。
- 分析の始点を2000年より前に取ったこと