2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

レポ市場でのFRBの役割の拡大

という小論が9月にリッチモンド連銀のEconomic Briefに上がっている(H/T Mostly Economics)。原題は「The Fed’s Evolving Involvement in the Repo Markets」で、著者は同銀のHuberto M. EnnisとFRBのJeff Huther。その小論では、初期のFRBのレポ市場への…

如何にして第二次大戦後に経済学が間違った方向に転換したか、および、経済学の新たな理論的枠組み

と題したエントリ(原題は「How economics took a wrong turn post World War II and an alternative theoretical framework for economics」)でMostly Economicsが、Meir Kohnダートマス大教授がケイトー研究所のCato Journal秋号に掲載した論文「An Alter…

溶岩流の岸辺のアルバム

タイラー・コーエンが、エミ・ナカムラ、ジョン・スタインソンらの「The Gift of Moving: Intergenerational Consequences of a Mobility Shock」というThe Review of Economic Studies論文を紹介している。論文の著者はEmi Nakamura(UCバークレー)、Jósef…

下がる金利と上がるスーパースター

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Falling Rates and Rising Superstars」で、著者はThomas Kroen(プリンストン大)、Ernest Liu(同)、Atif R. Mian(同)、Amir Sufi(シカゴ大)。以下はその要旨。 Do low interest rates contribut…

次の中国ショックはどのようなものになるのか?

前回エントリで紹介したAutorらのブルッキングス研究所論文の結論部の後半では、過去の中国ショックがどのようなものだったか、および、来るべき将来の中国ショックがどのようなものになるかについて考察している。 It is now clear that the China trade sh…

中国ショックの持続性について

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「On the persistence of the China Shock」で、著者はDavid Autor(MIT)、David Dorn(チューリッヒ大)、Gordon H. Hanson(ハーバード大)。以下はブルッキングス研究所のサイトでの論文…

政府がCOBOLシステムを使い続けた代償

「The cost of running government bureaucracies on COBOL」というコメントを添えてタイラー・コーエンが、メリーランド大のMichael Navarreteが書いた「COBOLing Together UI Benefits: How Delays in Fiscal Stabilizers Impact Aggregate Consumption*1…

新たなマクロ経済学を構築する5つの方法

ニューヨーク市立大学の経済学助教授のJ.W. Masonが、7/2のこちらのパネル討論のために用意した表題の小論をEvonomicsに上げている(原題は「Five Ways to Build a New Macroeconomics」、H/T Mostly Economics)。 以下はその前半部。 Jón Steinsson wrote …

ハイパーインフレがナチスを台頭させたわけではない

以前こちらで紹介した緊縮財政策とナチスの関係に関する論文を共著したGregori Galofré-Vilà(ナバーラ州立大)が、表題の主旨の論文を書いている(Mostly Economics経由の本人のLSEブログポスト経由)。 以下はその要旨。 I study the link between monetar…

オプションのリターンのファクターモデル

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「A Factor Model For Option Returns」で、著者はMatthias Buechner(ケンブリッジ大)、Bryan T. Kelly(イェール大)。 以下はその要旨。 Due to their short lifespans and migrating moneyness, opti…

原油市場の予測

原油価格の高騰がニュースになる中、タイムリーな表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Predicting the Oil Market」で、著者はCharles W. Calomiris(コロンビア大)、Harry Mamaysky(同)、Nida Çakır Melek(カンザスシティ連銀)。 以下…

失業率の履歴効果

を調べたNBER論文をローレンス・ボールらが上げている(ungated版)。論文のタイトルは「Hysteresis in Unemployment: Evidence from OECD Estimates of the Natural Rate」で、著者はLaurence M. Ball(ジョンズ・ホプキンス大)、Joern Onken(ユニバーシ…

ビットコイン取引の7%以上は実際の資金取引に使われている

という主旨のNBER論文をラインハート=ロゴフらが上げている(ungated版)。論文のタイトルは「Decrypting New Age International Capital Flows」で、著者はClemens Graf von Luckner(世銀)、Carmen M. Reinhart(ハーバード大)、Kenneth Rogoff(同)。…

低金利における税政策の設計

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Tax Policy Design with Low Interest Rates」で、著者はAlan J. Auerbach(UCバークレー)、William Gale(ブルッキングス研究所)。 以下はその要旨。 Interest rates on government debt have fallen…

実効再生産数なんてもう要らない

「先進的な時系列モデルは疫学者の「R」を超えるのか?( Do advanced time series models outperform the epidemiologists “R”?)」というコメントを添えてタイラー・コーエンが「Rよさらば:疫病を追跡し予測する時系列モデル(A farewell to R: time-seri…

米国の債務GDP比率の変動要因は何か? 吠えなかった犬

というNBER論文が上がっている。原題は「What Drives Variation in the U.S. Debt/Output Ratio? The Dogs that Didn't Bark」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Hanno N. Lustig(スタンフォード大)、Stijn Van Nieuwerburgh(コロンビア…

ジャストインタイムからジャストインケースへ

「From Just in Time, to Just in Case, to Just in Worst-Case: Simple models of a Global Supply Chain under Uncertain Aggregate Shocks」というNBER論文が上がっている。著者はBomin Jiang(MIT)、Daniel E. Rigobon(プリンストン大)、Roberto Rigo…

株価指数への採用は売りに出されているのか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Is Stock Index Membership for Sale?」で、著者はKun Li(オーストラリア国立大)、Xin (Kelly) Liu(同)、Shang-Jin Wei(コロンビア大)。以下はその要旨。 While major stock market indices are followed by la…

コント:ポール君とグレッグ君(2021年第1弾)

久々にこのタイトルを使ったが、マンキューが「Two Ways to Tell the Story」と題したブログエントリでカード=クルーガーの最低賃金の研究に対する2つの見方を紹介している。 From Paul Krugman today: The most famous example is the research that Card …

デビッド・カードが見たハーバードのアファーマティブアクション

デビッド・カードのノーベル経済学賞受賞のニュースを聞いて、そういえば彼が専門家証人を務めたハーバードのアジア人に対する入学差別に関する訴訟の件(cf. ここ、ここ、ここ)はどうなったのかな、と調べてみたところ、(昨年4/30エントリの注記に書いた…

銀行危機への介入、1257-2019

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Banking-Crisis Interventions, 1257-2019」で、著者はAndrew Metrick、Paul Schmelzing(いずれもイェール大)。 以下はその要旨。 We present a new database of banking-crisis interventions since …

輸出主導型経済への転換が成功した時

引き続き開発政策ネタ。少し前にMostly Economicsが韓国の輸出主導政策に焦点を当てたPIIE論文を紹介している。論文のタイトルは「From hermit kingdom to miracle on the Han」で、著者はDouglas A. Irwin(ダートマス大)。以下はその要旨。 In 1960, Sout…

韓国の重化学工業化産業政策の効果

9月に韓国の産業政策に関するNBER論文が2本上がっていた(H/T Mostly Economics)。 一つはJaedo ChoiとAndrei A. Levchenko(いずれもミシガン大)による「The Long-Term Effects of Industrial Policy」(ungated版)。以下はその要旨。 This paper provid…

インフレ予想論争・その4

10/6エントリで触れた、ECB ForumでのCharles Goodhartの発言を要約した元IMFエコノミストのChris Marshのツイートを紹介しておく。 Then came Goodhart who we will now quote at length: “The world at the moment is in really a rather extraordinary st…

フィリップス曲線は今も曲線なのか? 地域での実証結果

前回エントリで紹介したギャニオンらによる“本当に曲がっているフィリップス曲線”を、別のやり方で示した豪州準備銀行の表題の論文を少し前にMostly Economicsが紹介していた。論文の原題は「Is the Phillips Curve Still a Curve? Evidence from the Region…

低インフレは世界のフィリップス曲線を撓める:拡張された結果

10/2エントリで紹介したツイートの補足のような形でジョセフ・ギャニオンが、9月にCEPRとPIIEに上げた表題の論文にリンクしている。論文の原題は「Low inflation bends the Phillips curve around the world: Extended results」で*1、共著者はMITのKristin …

インフレ予想論争・その3

前回エントリで紹介したリカルド・ライスのツイートで予告された続きのスレッドがつぶやかれていたので、以下に紹介してみる。 For most surveys of expected inflation, is the median a good statistical forecaster of future inflation? Usually not. Bu…

インフレ予想論争・続き

10/2エントリでタイラー・コーエン経由でリンクしたラッド論文への反応のうち、リカルド・ライス(Ricardo Reis)のツイッターでの反応を紹介してみる。 Start from the classical model in micro 101, the foundation of modern econ. A fundamental result…

SIRモデルでの実効再生産数の極限は?

以下のツイートを目にして、実際の測定値はともかく、感染モデル上は感染が収まった時に実効再生産数はどうなるのか、という疑問を抱いた。皆さん大事なことなので誤解の内容にお願いします。この数字は感染者数が下がりきると必ず1になります。 https://t.c…

インフレ予想論争

9/30エントリで紹介したFRBのJeremy B. Rudd論文が経済学界にそれなりの波乱を巻き起こしているようで、タイラー・コーエンが批判的に取り上げるとともに、同論文を紹介したNYT記事や、ジョセフ・ギャニオンやリカルド・ライスのツイッターでの反応にリンク…