2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

オバマ政権が景気対策を重視しなくなった理由

デロングが、今回の大不況について考察したエッセイの中で、オバマ政権の政策の中で景気対策が優先順位を落としていった*1理由を推測し、以下の5つを挙げている。 労働組合の崩壊により、底辺の90%の労働者の実態がワシントンや知識人の目に入らなくなった。…

IMF改革の直近の成功例

としてセーシェルが報告されている(Mostly Economics経由)。以下はその報告記事のうち、Mostly Economicsで引用された部分。 Since independence in 1976, Seychelles—an archipelago of about 115 islands in the middle of the Indian Ocean—had built u…

1%の金利引き下げと同等の財政政策は…

1年後に消費税を恒久的に1%引き上げ 同じく1年後に労働所得税を恒久的に1%引き下げ 今後1年間に投資減税を実施 という財政政策の組み合わせが、1%の金利引き下げと同等の効果を持つという。ミネアポリス連銀総裁のコチャラコタが18日のスピーチで、そのこと…

ロドリック「質の高い経済成長のための制度:それはどのようなもので、いかにして獲得すべきか」

10/14エントリに対し、ダニ・ロドリック(Dani Rodrik)の「Institutions for High-Quality Growth: What They are and How to Acquire Them」という論文を紹介するコメントを頂いた。ぐぐってみると、ここでWPが読めるので、今日はその内容を簡単にまとめて…

歴史も大事、数学も大事

昨日紹介したロゴフの論考の最後では、経済学における数学について以下のように書いている。 My basic contention is that although macroeconomists should certainly give more attention to historical analysis and empirics, the profession still very…

マクロ経済学の3つの課題

についてロゴフが書いている(Mostly Economics経由)。その3つの課題とは 金融市場の摩擦を、より現実的かつ取り扱いやすい形で金融政策分析の標準モデルに取り込むこと。 反景気循環的な財政政策の役割、とりわけ金融危機で信用市場が凍りついた時に果たす…

Eggertsson=Krugman論文への反応・補足

一昨日にEggertsson=Krugman論文へのStephen WilliamsonとNick Roweの反応を紹介したが、そのうちのWilliamsonの指摘に「政府が優先的に債権を回収できない限り、リカードの中立性は成り立つ」というものがあった。そこで、「政府は納税を拒否した人を刑務所…

退屈な中銀のテーゼ

カナダ銀行が来年インフレ目標の枠組みを見直すのに伴い、ワークショップを開いたという。WCIブログのNick Roweがその報告を4つの質問という形で簡単にまとめている。 その4つの質問とは以下の通り。 金融政策は、たとえ一時的にインフレ目標から離れること…

Eggertsson=Krugman論文への反応

Gauti B. Eggertssonとクルーグマンが流動性の罠における債務問題を扱った共同論文を発表し、話題になっている。クルーグマンがブログ(邦訳)やvoxeu(邦訳)で内容を紹介しているが、ブロゴスフィアでは既にNew Monetarist EconomicsのStephen Williamson…

相続税は廃止すべきか?

行動経済学で有名なシカゴ大学のリチャード・セイラー(Richard H. Thaler)が今月6日にNYTに相続税擁護の論説を書いたのに対し、マンキューがブログで自分がCEA委員長時代に書いた小論にリンクして反対の意思を表明している。また、Economixでケイシー・マ…

マクロ経済学のミクロ経済的基礎付け:フォーリー=シドラウスキによる試み

今月の6日から9日に掛けて、ソロスの新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)の今年4月のカンファレンスにおけるダンカン・フォーリー(Duncan K. Foley)の発表論文を紹介したが、今度はRajiv Sethiがフォーリーの自伝的エッセイを紹介し…

経済学は戦術を提示するのであって戦略を提示するのではない

とEdward L. GlaeserがEconomixに書いている(原題は「Economics Offers Tactics, Not Strategy」)。 ここでGlaeserがテーマとして取り上げているのは財政問題だが、彼によると、財政には以下の2つの側面があるという。 広範な国家的優先順位 例: 軍事と医…

なぜ資本主義経済は需要制約型になるのか?・続き

13日のエントリで表題の件を巡るピーター・ドーマンとNick Roweの論争を紹介したが、その後、Roweが自らの昔の共著論文で示したモデルを持ち出し、独占的競争理論による供給超過の説明を図った。 小生が理解したところによると、そのモデルと通常の独占的競…

言っていることはハイエク、やっていることはケインズ

ドイツのアンゲラ・メルケル首相を、Mark Schieritzというツァイト紙の記者がそう評している(Mostly Economics経由)。 Schieritzが挙げるドイツのケインジアン的な財政拡大策とは以下の通り。 2008年と2009年に総計800億ユーロという先進国最大規模の2つの…

世界最強の経済学者

フォーブスが2010年度の世界影響力ランキングを発表し、その一位が胡錦涛になったことが最近話題になった。 実はフォーブスは同時に、ヌリエル・ルービニが選んだ世界最強の経済学者7人をHPにスライドショー形式で掲載している。その顔触れは、 ベン・バーナ…

人生の成功は幼稚園の成績で決まる?

イースタリーがAid Watchブログで以下の図を示している*1。ここで横軸は幼稚園の成績、縦軸は同一人物の25-27歳における収入である。出所は「How Does Your Kindergarten Classroom Affect Your Earnings? Evidence from Project Star」と題された論文。 イ…

結局、フラッシュ・クラッシュは何が原因だったのか?

先月6日、今年5/6に発生したフラッシュ・クラッシュに関するNanex社の分析を否定したSECとCFTCの合同調査報告書を紹介したが、今度はその報告書にNanex社が反論している(Econbrowser経由)。 先月6日のエントリでは、SEC=CFTC報告書の中のCTSやCQSの遅延は…

なぜ資本主義経済は需要制約型になるのか?

という点を巡ってEconospeakのピーター・ドーマンとWCIブログのNick Roweが軽い論争を繰り広げていた。 まず、ドーマンが、顧客ロックイン戦略*1に基づいてこの件のミクロ的基礎付けができるのではないか、という仮説を提示した。具体的には、消費者の行動に…

1920-21年の不況はレッセフェールの有効性を証明したのか?

というエントリをバークレー・ロッサーがEconospeakに書いている(原題は「Does The 1920-21 Recession Really Prove That Laissez Faire Saves Us From Recessions?」)。 ここで彼は、1920-21年の不況は、当時のハーディング大統領が何もしなかったために…

ハイエクvsケインズ:スキデルスキーのまとめ

今日は再びソロスの新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)の今年4月のカンファレンスに舞い戻り、その中のスキデルスキーの論文においてまとめられたハイエク対ケインズの主張の違いを紹介してみる(H/T VOX Watcherさん)。 ●大恐慌の前…

インフレ率=失業率版のIS曲線とフィリップス曲線

クルーグマンの11/2ブログポスト(邦訳)について、Nick Roweが解説を試みている。上図はクルーグマンがブログで示した2つの図を合成したものである*1。 赤線は、各インフレ率について対応する失業率を与える曲線である。クルーグマンはこれを天下り式に示し…

データ量も万能薬ならず

昨日のエントリに対し、マクロ経済学の観測の問題はデータ量を増やすことにより解決するのではないか、というコメントを頂いた。経済学においてデータ量の不足に悩まなくて済む分野としては、ファイナンスが挙げられる。実は、フォーリー論文では、昨日の引…

計量経済学は不幸な星の下に生まれた

引き続きフォーリー論文から、今日は計量経済学に関する記述を引用してみる。 The role of empirical verification in the mathematized economics of the Samuelson era was supposed to be played by econometrics, a field, curiously enough, in which S…

経済学におけるイデオロギー

昨日紹介したフォーリーの論文から、「イデオロギー」について論じた箇所を引用してみる。 In many ways, it seems to me that macroeconomics as an academic subfield knows less about the real dynamics of industrial capitalist economies today than …

サミュエルソンの奇妙な手落ち

今日もソロスの新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)の今年4月のカンファレンスの発表論文の紹介。New School for Social Research経済学部教授兼サンタフェ研究所外部教授のダンカン・フォーリー(Duncan K. Foley)による「数学的形式…

ジェレミー・シーゲル「EMHは悪くない」

昨日に続き、ソロスの新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)の今年4月のカンファレンスの発表論文を紹介する。今日は、ジェレミー・シーゲルの効率的市場仮説擁護論のサマリを引用してみる。 Our recent crisis wasn't due to the Effici…

ハイエク「経済学と他の科学の間には深くて暗い誰も渡れぬ川がある」

ジョージ・ソロスが昨年5000万ドルを投じて設立した新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)が、今年4月にカンファレンスを開催したという。そこでBruce Caldwellがハイエクとケインズについて講演しているが、その中のハイエクの1955年の…

経済学界本日モ反省ノ色ナシ

ダン池田風にネーミングすればそういうタイトルになるのだろうが、先月米国で公開された今回の金融危機に関するドキュメンタリー映画「Inside Job」の監督チャールズ・ファーガソン(Charles Ferguson)が、Chronicle of Higher Education紙のサイトで経済学…

Show me the money!

長期国債を購入する量的緩和政策について、単に国債の満期の長短の構成を変えることと等価である、という議論をこのところ良く目にする。たとえば、QE2に絡んでクルーグマン*1やジェームズ・ハミルトン*2がそう論じている。 その反面、実際に需要曲線と供給…

米国とその他大勢:学術研究の地理学

という論文が世界銀行から昨年12月に発表されていた(原題は「U.S. and Them: The Geography of Academic Research」;Marginal Revolution経由のChris Blattmanブログ経由のStefan Derconブログ経由)。 内容は、1985年から2004年に経済学の学術誌に掲載さ…