オバマ政権が景気対策を重視しなくなった理由

デロングが、今回の大不況について考察したエッセイの中で、オバマ政権の政策の中で景気対策が優先順位を落としていった*1理由を推測し、以下の5つを挙げている。

  1. 労働組合の崩壊により、底辺の90%の労働者の実態がワシントンや知識人の目に入らなくなった。
     
  2. ワシントンと金融業界では確かに今夏に景気回復が見られたので、他の地域の経済の実態が見えなくなった。
     
  3. 銀行救済のための税金投入に当たって然るべきペナルティ金利が課されなかったため、人々の政府への不信を招いた(ただし、これは、オバマ政権自体が景気回復の政策としての優先度を下げた理由にはならない)。
     
  4. 経済学界が景気回復政策に関して意見の分裂を見せたため*2、政権内の経済顧問が推奨するマクロ経済政策に対し、大統領自身や政治顧問がそれほど確信が持てなくなった。
     
  5. ニーチェの言う負け犬的な思考様式。即ち、一般に悪いこととされているものは、まさにそれ故に実は良いものなのだ、というような考え方。ここでデロングが茶会党員との会話を通じて得た実例として挙げているのは:
    • 民間で職が失われているのだから教師のような公務員も職を失うべし(=彼らの心の中で失業が悪いものから価値あるものに変わっている;デロングがケインジアン的な理屈を説明しても聞く耳持たず)
    • 持ち家の時価が債務を割り込んだ住宅保有者は住宅を失うべし(=自分たちが破産したのだから他人も破産すべし、という考え方;デロングが、住宅が質流れした後の管理者は元の保有者ほど住宅の手入れをしないという問題がある、それはまさに社会主義の問題点だった、と指摘しても聞く耳持たず)


これに対しクルーグマンが、デロングがニーチェを持ち出すなら自分は今度はヴィトゲンシュタインを持ち出すかな、と冗談を飛ばしている

*1:少なくともデロングはそう見ている。

*2:ここでデロングが例に挙げているのは、ルーカスやポズナーによるクリスティーナ・ローマーが示した財政政策の効果への(デロングに言わせれば根拠の乏しい)攻撃、マンキューの(デロングに言わせれば矛盾した)減税志向、ニーアル・ファーガソンによる建設労働者の転職の難しさの指摘(デロングに言わせれば実際には建設ブームがピークを打った後18ヶ月間も雇用には特に問題は無く、リーマンショック後に初めて雇用に問題が生じた)、の3つである。