昨日紹介したデロングのエッセイでは、政策金利がゼロ下限に達した後でも、以下の7つの政策ツールが残っていた、と書いている。
- 財政政策
- 量的緩和
- インフレ目標
- 銀行債務の政府保証
- 問題企業の国有化
- 民間リスクの引き受け
- モーゲージ債務再編策
しかし、これらは十分に活用されなかったために危機が深刻化した、というのがデロングの見立てである。というのは:
- 財政政策
- 確かに議会は8000億ドルの景気刺激策を通したが、その後は、上院で60票集めることの困難さ(共和党とブランシュ・リンカーン、ベン・ネルソン、ジョー・リーバーマン)が、さらなる追加策を阻んだ。オバマ政権は、例えばバイデン副大統領を共和党上院議員との膝詰め談判に送り込むといった努力をすべきだった。
- 量的緩和
- 確かに2008年末にFRBはバランスシートをリスク資産で膨らませた。しかし、危機が小康状態になると、止めてしまった。バーナンキは2年間、量的緩和のレバーを放置していたが、オバマはそのバーナンキをFRB議長に再任した。11月3日には量的緩和に再び乗り出すことを表明したが、市場は規模が不十分と見ている。量的緩和は通常時の公開市場操作に比べれば金融市場への効果は弱いが、まったく無効というわけではない。
- インフレ目標
- インフレ目標は公開市場操作(open-market operations)ならぬ「口を開く操作(open-mouth operations)」と言える。物価水準やインフレの目標を徐々に切り上げていくと宣言すれば、安全資産の保有者にインフレ税の予想が生まれる。確かにこれも通常時の公開市場操作に比べれば金融市場への効果は弱いが、まったく無効というわけではない。しかし、FRBがインフレ目標達成の宣言に向けて一歩踏み出すことはついぞ無かったし、ましてや切り上げることは無かった。
- 銀行債務の政府保証
- 財務省は確かに必要ならば銀行に資本注入を行うと宣言し、「ストレステスト」に合格したと宣言することによって銀行の債務の政府保証を行った。しかし、次項の問題企業の国有化と共に、マクロ経済に十分な影響を与えるだけの規模では実施されなかった。
- 問題企業の国有化
- 2009年に自動車産業をほぼ国有化したことは、目標を定めた国有化への一歩だった。しかし、やはり十分な規模では無かったし、国有化が支援を受ける側の得に終わる訳では無いことを示すためにも、もっと多くの企業について実施すべきだった。
- 民間リスクの引き受け
- PPIPによるリスク資産と安全資産の交換は、マクロ経済に十分な影響を与えるだけの規模では実施されなかった。
- モーゲージ債務再編策