2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

理念が権益に勝るとき:選好、世界観、および政治的イノベーション

引き続きロドリックねた。以下は、27日エントリで紹介したロドリックのブログ記事でリンクされていた表題の論文(原題は「When Ideas Trump Interests: Preferences, World Views, and Policy Innovations」)の要旨。 Ideas are strangely absent from mode…

ネオリベラリズムへの挑戦

昨年11月に、ダニ・ロドリックが表題のエントリ(原題は「Taking a Crack at Neoliberalism」)で「Rescuing Economics from Neoliberalism」というボストン・レビューに掲載した論説を紹介し、その中心的な文章として以下を引用している。 That neoliberali…

ムニューシンのドルに関する発言は正しい?

26日に紹介したサマーズのムニューシン発言に対する批判に対し、FT AlphavilleのMatthew C KleinとCEPRのディーン・ベーカーが異を唱えている(H/T 本石町日記さんツイート)。 Matthew C Kleinは以下のように書いている。 Larry Summers called it a “probl…

今日における最も重要な思想家としてのタレブ

についてブランコ・ミラノビッチが書いている。 Several weeks ago on Twitter I wrote (in an obviously very short form) why I thought that Taleb was one of the most important thinkers today. Let me explain in greater detail. Taleb went from (a…

利益を巡る闘争ではなく理念を巡る闘争

ダニ・ロドリックが理念と利益の区別に関するブログ記事を1/16と1/19に上げているが、一昨年の10月にもそのテーマでトランプ旋風を分析した表題のエントリを上げている(原題は「It’s a war of ideas, not of interests」、H/T レンールイス)。 そこでロド…

財務長官が強いドルという決まり文句に固執すべき理由

「Obviously a weaker dollar is good for us as it relates to trade and opportunities(弱いドルは貿易と機会につながるので明らかに我々にとって良いことだ)」というムニューシン財務長官の発言について、サマーズが表題の記事(原題は「Why Treasury S…

インフレ目標が信じられた国、信じられなかった国

少し前に紹介したブログ記事でジョン・テイラーは数値的なインフレ目標の弊害を指摘していたが、そうした数値目標によるインフレ予想のアンカリング効果に着目した「Does Communicating a Numerical Inflation Target Anchor Inflation Expectations? Eviden…

内生的生産網

アセモグルのNBER論文をもう一丁。以下はDaron Acemoglu(MIT)、Pablo D. Azar(同)の表題の共著論文(原題は「Endogenous Production Networks」、ungated版)の要旨。 We develop a tractable model of endogenous production networks. Each one of a n…

ゴッドファーザーの経済学

「Weak States: Causes and Consequences of the Sicilian Mafia」というNBER論文をアセモグルらが書いている(ungated版)。共著者はGiuseppe De Feo(ストラスクライド大)、Giacomo De Luca(ヨーク大)。 以下はその要旨。 We document that the spread …

トリフィン:ジレンマか、それとも神話か?

というNBER論文をマイケル・ボルドーらが書いている(ungated(BIS)版)。原題は「Triffin: dilemma or myth?」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)、Robert N. McCauley(BIS)。 以下はその要旨。 Triffin gained enormous influence by reviving…

世界金融は見掛けよりも自己改革したのか?

ダニ・ロドリックが以下の本の序文を書き、それを表題のブログエントリに再掲している(原題は「Has Global Finance Reformed Itself More Than It Appears?」)。[rakuten:rakutenkobo-ebooks:17009943:detail] 以下はその冒頭。 It happens only rarely an…

ハンクの世界

プリンストン大のBenjamin Mollが、経済モデルを以下の3つの世代に分類している(PPT、H/T Mostly Economics)。 第一世代:1930〜1990 旧ケインジアンIS-LM、RBCモデル、(ニューケインジアンモデル) (主体は均一であるという)仮定により、格差はモデル…

人工知能、自動化、および仕事

ここやここで紹介したNBER論文の共著者であるダロン・アセモグル(MIT)とPascual Restrepo(ボストン大)のコンビが、表題のNBER論文を上げている(原題は「Artificial Intelligence, Automation and Work」、ungated版)。 以下はその要旨。 We summarize …

低金利世界の金融政策

14日に紹介したテイラーのブログエントリ経由の論文をもう一丁。以下は、テイラーが「important recent work」としてリンクしたMichael KileyとJohn Roberts(いずれもFRBのエコノミスト)の表題の論文(原題は「Monetary policy in a low interest rate wor…

貨幣成長率ルールが政策金利の代わりになる時

14日に紹介したブログエントリでテイラーは、ゼロ金利下限の下でも貨幣成長率ルールを用いるという選択肢がある、と指摘していたが、その際に自分の1996年の論文にリンクしたほか、最近の研究としてPeter IrelandとMichael T. Belongiaの論文にリンクしてい…

自然利子率は低下していないかも?

14日に紹介したブログエントリでテイラーは、自然利子率の計測に付き纏う不確実性について指摘していたが、その際に自分とVolker Wielandの共著論文にリンクしている。 以下はその論文「Finding the Equilibrium Real Interest Rate in a Fog of Policy Devi…

トランプ減税は向こう2年の成長率を各年1.1%ポイント引き上げる

というかなり楽観的な試算結果をロバート・バローが示している(H/T マンキュー)。 計算の概要は以下の通り。 個人の平均限界税率引き下げにより、2019年までの各年の成長率は0.8%ポイント上昇 個人の平均限界税率を1%ポイント下げるとGDPはその後の2年間に…

FRBは2%のインフレ目標に固執すべきか、それとも再考すべきか?

というコンファレンスがブルッキングス研究所で8日に開かれ(原題は「Should the Fed stick with the 2 percent inflation target or rethink it?」)、ジョン・テイラーがブログで内容についてコメントしている。 コンファレンスでテイラーは、1992年に発表…

ドジットモデル

Marc BellemareがMetrics Mondayで、順序性の無い選択肢(通勤に自家用車、バス、バイク、徒歩のいずれを使うか、専攻を文科系、科学、ビジネス、工学のいずれにするか、等)を対象とした離散選択モデルについて論じている。 最も一般的なモデルは多項ロジッ…

経済ポピュリズムを擁護する

ダニ・ロドリックが「In Defense of Economic Populism」というProject Syndicate論説を書いている。 Populists’ aversion to institutional restraints extends to the economy, where exercising full control “in the people’s interest” implies that no…

ミクロ経済ショックのマクロ経済への影響:ハルテンの定理を超えて

デロングがEquitable Growthブログで表題の論文をShould-Readとして紹介している(H/T Economist's View)。原題は「Macroeconomic Impact of Microeconomic Shocks: Beyond Hulten’s Theorem」で、著者はDavid Rezza Baqaee(LSE)、Emmanuel Farhi(ハーバ…

政治と経済の政治力学

ヘンリー・ファレル(Henry Farrell)とジョン・クイギン(John Quiggin)が「Consensus, Dissensus, and Economic Ideas: Economic Crisis and the Rise and Fall of Keynesianism」という論文を書いている(Economist's View経由のCrooked Timber経由)。 …

経済学における大きな事実

少し前にクリス・ディローが以下のようなことを書いている。 Unlearning Economics has a nice piece on the limits of sophisticated empirical techniques and the virtues of eyeball econometrics, reminiscent of Dave Giles’ advice “Always, but alwa…

政府の仕事には十分? 危機以降のマクロ経済学

昨日サイモン・レンールイスの掲載論文を紹介したOxford Review of Economic Policyの最新号には、クルーグマンの表題の論文(原題は「Good enough for government work? Macroeconomics since the crisis」)も掲載されている。 タイトルの「政府の仕事には…

ミクロ的基礎付けの覇権を終わらせろ

サイモン・レンールイスが表題の論文(原題は「Ending the microfoundations hegemony」)をOxford Review of Economic Policyの最新号に寄稿している(H/T レンールイスのmainly macroブログ)。同号は「Rebuilding macroeconomic theory」と題されており、…

有効求人倍率の内訳

最近の人手不足は人口減少によるものであり、しかも人口の高齢化を反映して求人は介護関係に偏っている、という話を時々耳にする。 この話の前段に対しては、労働力人口は増加している、という反論がなされることが多い。それに対しては、いや、増えているの…

仮想通貨とマネタリズムの復権

印ミント紙のNiranjan Rajadhyakshaが、仮想通貨が人々の貨幣の保有形態ならびに金融政策に与える影響について考察している(H/T Mostly Economics)。 それによれば、貨幣のベースマネーとマネーストックの区別を考えた場合、今まで一般の人々はマネースト…

トランプ減税は超高額所得者の納税割合を高めるのか?

昨年末にマンキューがブログで以下のような質問を読者に投げ掛けた。 According to the staff of the Joint Committee on Taxation, before the recent change in the tax law, taxpayers earning more than $1 million a year were scheduled to pay 19.3 p…

歴史は確率的か?

というエントリ(原題は「Is history probabilistic?」)の冒頭でDaniel Littleが以下のように書いている。 Many of our intuitions about causality are driven by a background assumption of determinism: one cause, one effect, always. But it is evid…

経済学と人間のストーリーテリングの本能

昨年初めにロバート・シラーのナラティブ経済学に関するAEA会長講演を紹介したことがあったが、表題の昨年5月8日のChicago Booth Review記事(原題は「Economics and the human instinct for storytelling」)でシラーがその内容を平易な言葉で解説している…