トランプ減税は向こう2年の成長率を各年1.1%ポイント引き上げる

というかなり楽観的な試算結果をロバート・バロー示している(H/T マンキュー)。
計算の概要は以下の通り。

  • 個人の平均限界税率引き下げにより、2019年までの各年の成長率は0.8%ポイント上昇
    • 個人の平均限界税率を1%ポイント下げるとGDPはその後の2年間に0.5%押し上げられる*1
    • 今回の減税案では3.2ポイント下がるので、2019年までのGDPを1.6%押し上げる(各年の成長率は0.8%ポイント上昇)。
  • 法人税率引き下げにより2018年の成長率は0.29%ポイント上昇し、その後9年間の成長率は平均0.24%ポイント上昇
    • 資本のユーザーコストは実質ベースで年間8%程度だが、法人税率の低下(35%→21%)と企業投資の経費化の2つの経路により低下する。
      • 企業投資のうち設備については、現行の寛大な減価償却引当金により実効経費化率は既に80%程度と高めになっている。新法ではそれが100%になる。その変更は5年限りということになっているが、バローの試算では議会による延長を見込んで恒久的なものとした。これにより、設備の資本のユーザーコストは10%低下する。
      • 構造物については、現行の償却期間は長く、減価償却引当金はかなり割り引かれていて、実効経費化率は30%程度に過ぎない。新法では工場やオフィスビルといった大半の構造物については償却期間を変えないが、投資の結果生み出されるものが何であれ21%課税されるという法人税率の低下が効いてくる。結果、構造物の資本のユーザーコストは14%低下。設備よりも低下率が大きくなるのは、設備は既に高率で経費化されているため。
    • 資本のユーザーコストが低下すると、企業の長期的な資本労働比率(資本装備率)が上昇する。バローの推定では、20年以上後には設備の資本装備率は14%、構造物の資本装備率は20%上昇する。その結果、労働者一人当たりの企業の生産と、実質賃金は、ともに長期的に7%上昇する(=「トリクルダウン経済学」の最善の結果が実現)。
    • 企業は国民所得の半分程度を占めるに過ぎないため、労働者一人当たりのGDPも7%増える、というわけにはいかないが、全企業の設備の完全経費化やパススルー団体の税率の低下により、上昇率はさほど下がらない。バローのラフな推計では、長期的にGDPは6%増える。労働供給が変わらなければ、一人当たりGDPも同率増える、
    • 長期水準に年間5%の割合で収束するとすると、2018年の成長率は0.29%ポイント上昇し、その後9年間の成長率は平均0.24%ポイント上昇することになる。
  • 合わせて、2019年までの各年の成長率は1.1%ポイント上昇し、その後8年間の成長率は0.2〜0.3%ポイント上昇

*1:Barro=Redlick(2011)WP)。なお、バローはKarel MertensとJosé L. Montiel Oleaの研究(cf. ここ。)にも言及しているが、そちらの推計値は倍で、富裕層以外にも効果がみられるとのこと。